博多人形は、福岡県博多地区を中心に生産されている伝統工芸品です。能・歌舞伎・美人といった伝統的な題材から現代風のデザインまで、さまざまな作品が作られています。
かわいい見た目や素焼き人形とは思えないほどの美しさに、見惚れてしまう人も少なくありません。本記事では、そんな博多人形の歴史・特徴・魅力について紹介します。
博多人形とは
博多人形は、福岡県博多地区を中心に生産されている伝統工芸品です。
福岡県を代表する民謡の一つである正調博多節で「博多へ来る時ゃ一人で来たが、帰りゃ人形と二人づれ」と歌われるほど、福岡を代表するお土産として有名です。
手ごろに買えるかわいい小物もあれば、数十万円するほどの立派な人形までさまざまな作品があります。
博多人形の歴史は約400年
博多人情の歴史は大きく分けると3つに分かれます。
博多人形の始まり
博多人形の歴史は古く、1600年に黒田長政が筑前（現在の福岡県筑紫野市・春日市など周辺地域）に入国した頃に広まったと言われています。
黒田長政が筑前を治めるにあたり、多くの職人が各地から集められました。その職人の中の一人である正木宗七が粘土で作ったものが博多人形の始まりです。
また正木宗七以外にも中ノ子吉兵衛や白水武平といった職人たちの活躍によって、博多人形が全国に流通するようになりました。
参考元：400年余の伝統 | 博多人形商工業協同組合
参考元：企画展示 | 幻のやきもの「宗七焼」 | 福岡市博物館
日本から海外へ
明治時代に入ると博多人形は日本だけでなく、海外からも注目を浴びるようになります。そのきっかけとなったのが1890年に開催されて「第三回内国勧業博覧会」です。
第三回内国勧業博覧会では、博多人形や博多織など、福岡県の特産品が出品され、当時の広告に掲載されるほど注目されました。
またパリ万博などの国際的な博覧会で高い評価を得て「博多人形」の名前が世に広がり、海外にも輸出されるようになりました。
参考元：明治時代の博覧会－その効用と影響－ | アーカイブズ | 福岡市博物館
現在の博多人形
博多人形は1976年に、経済産業大臣から「伝統的工芸品」として指定されました。400年余りの時を経て、現在も博多のあらゆる場所で博多人形と出逢えます。
日本国内だけでなく海外でも人気があり、縁起物や土産品、贈呈品として今もなお愛され続けている人形です。
博多人形の特徴
博多人形の特徴は、博多人形師によって異なるさまざまな表情を見せる顔です。写実性に富んだ表情は、思わず見惚れてしまうほど美しく惹きつけられます。
また素焼き人形とは思えないほど躍動感があり、今にも動き出してしまいそうです。素焼き人形に彩られた色彩は繊細かつ多彩で色合いが美しいことも特徴の一つです。
陶磁器人形のような冷たさはなく、粘土で作られた土のぬくもりが感じられ、素朴な温かみと優しい雰囲気が見る人の心をなごませてくれます。
多彩な表情を見せる博多人形の魅力
博多人形の魅力は3つあります。それぞれの魅力について見ていきましょう。
見る人をなごます温かみ
博多人形の魅力は上記でも述べましたが、見る人の心をなごます温かみがあることです。博多人形といえば、床の間や飾り棚など格式のあるイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、現在の博多人形は種類もさまざまで置物や飾り物としてリビングや玄関、寝室など、どこにでも活用できます。従来のような概念にとらわれず、和と洋どちらに置いても違和感がなく、住まう人を優しく癒してくれます。
現代に文化にも合った多様なジャンル
博多人形といえば、能・美人・歌舞伎といった伝統的なジャンルを思い浮かぶ人が多いでしょう。たとえば以下のような博多人形を想像すると思います。
しかし、現在ではユニークな博多人形も多くあります。たとえば、現代風の博多人形を制作している博多人形師の中村弘峰さんの作品を見てみましょう。
中村弘峰さんの作品は「もしも江戸時代の人形師が現在にタイムスリップしたら」というコンセプトで作られています。
伝統的な博多人形とは違った魅力を感じ取れるでしょう。また現代風になっていることから、若者が博多人形に興味を持つきっかけにもなります。
伝統工芸品がお手頃価格
伝統工芸品といえばお高いイメージを持つ人が多いでしょう。しかし博多人形は伝統工芸品でありながら数百円で購入できます。
もちろん、数十万円もする高価な作品も多いです。しかし、お土産や贈呈、縁起物として気軽に買えることも魅力の一つといえるでしょう。
まとめ
博多人形は約400年近い歴史のある伝統工芸品です。今にも動き出しそうな躍動感や多彩な表情、土の温かみを感じられることが魅力です。
能や美人、歌舞伎といった伝統的なデザイン以外にも動物、野球選手といった現代風の作品もあります。
今もなお愛され続けている博多人形をぜひ一度手に取ってみてください。
