
十勝神社|北海道十勝地方最古の由緒ある神社の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド
北海道広尾郡広尾町に鎮座する十勝神社は、十勝地方で最も古い歴史を持つ神社として知られています。十勝国一宮を称し、300年以上の歴史を誇る由緒ある神社で、海に漂着した流木を御神体とする龍神伝説や、江戸時代の探検家による貴重な文化財など、北海道開拓の歴史を物語る数々の見どころがあります。
十勝神社の概要・基本情報
十勝神社は北海道広尾郡広尾町茂寄に鎮座し、十勝地方最古の神社として十勝国一宮の地位を保持している神社です。広尾町の市街地中央部、丸山の東麓という立地にあり、地域の信仰の中心として長きにわたって親しまれてきました。
歴史と由来
十勝神社の創建は寛文6年(1666年)6月、松前藩家老の蠣崎蔵人広林が十勝国警衛の祈願社として創祀したのが始まりとされています。当初は刀勝大明神と称えられていました。
神社創建にまつわる興味深い伝承があります。当地のシマウス海岸に漂着した流木が龍神のような姿をしていたため、一社を設けてお祀りしたところ、以来毎年豊漁が続いたので人々の篤い信仰を集めるようになったというものです。この流木は後に彫刻を加えて木像となり、丈4寸余りの小像で、聖徳太子に似ていたと伝えられています。
江戸時代から明治にかけて、神社は様々な変遷を経ました。寛政10年(1799年)11月には、近藤重蔵がエトロフからの帰路に広尾・様似間の新道開発の記録である「東蝦新道記」を献額しており、これは現在も貴重な文化財として保存されています。
明治時代に入ると神仏分離により大きな変化を迎えます。明治7年(1874年)の開拓使による調査を経て、明治8年(1875年)に仏像や仏具が退けられ、御祭神を大綿津見神とし、明治9年(1876年)3月に郷社に列せられました。その後、明治21年(1888年)5月には稲荷神社と鹽竈神社が合祀され、大正7年(1918年)12月に現在地に改築竣工し、昭和20年(1945年)に県社に列せられました。
祭神とご利益
十勝神社の主祭神は大綿津見神(おおわたつみのかみ)です。この神様は海の神として知られ、海上安全や大漁満足の御神徳があるとされています。
また、保食神(うけもちのかみ)と塩土老翁神(しおつちのおじのかみ)も合わせて祀られています。保食神は明治22年(1889年)に合祀された稲荷神社の御祭神で、塩土老翁神は同年合祀された鹽竈神社の御祭神です。
ご利益としては、大漁満足、海上・交通安全、五穀豊穣・商売繁盛などが挙げられます。特に海に関連した信仰が厚く、漁業関係者をはじめ多くの参拝者が訪れています。
十勝神社の見どころ・特徴
十勝神社には歴史的価値の高い建造物や文化財、そして自然の美しさが調和した魅力的な境内が広がっています。
建造物・社殿の魅力
現在の社殿は昭和17年(1942年)に完成したもので、社殿様式は流造、社殿面積は45.5坪となっています。流造は日本古来の神社建築様式の一つで、屋根の前面が長く伸びた美しい形状が特徴です。
境内は10,000坪という広大な面積を誇り、336号ナウマン国道から大きな鳥居をくぐり燈篭の並ぶ参道を進む構成となっています。参道周辺は芝広場に樹木が点在する明るい雰囲気で、幼児用遊具も備えた「本通公園」として整備されており、二の鳥居からは参道も石畳に変わり、周囲もぐっと厳かに変化します。
貴重な文化財・社宝
十勝神社には北海道の歴史を物語る貴重な文化財が保存されています。最も有名なのは近藤重蔵の「東蝦新道記彫字板」で、北海道の有形文化財に指定されています。現在のものは、旧板が傷んだため万延元年(1860年)に再刻されたものです。
その他にも、天保7年(1836年)トカチ会所の支配人・喜右衛門以下、トカチ場所で働く番人一同が平安無事を祈って奉納したものや、慶応2年(1866年)越後国糸魚川の北前船船頭・喜次郎が奉納したものなど、広尾町の有形文化財に指定された貴重な奉納品が数多く残されています。
桜の名所としての美しさ
十勝神社は歴史だけでなく、桜の名所としても知られており、春には記念として境内に植えられたエゾヤマザクラが見事に咲き誇ります。エゾヤマザクラが見頃を迎える4月下旬から5月上旬になると、お花見をする町民たちや観光客で賑わいを見せます。
北海道特有の桜としては「エゾヤマザクラ」「チシマザクラ」という品種が存在し、北海道でしか見ることのできない貴重な桜を楽しむことができます。さらに十勝神社前の公園にて毎年夜桜のライトアップを実施しており、幻想的な夜桜も楽しめます。
参拝案内
十勝神社への参拝は、北海道の歴史と自然を感じながら心静かに行うことができます。由緒ある神社での参拝を通じて、十勝地方の守り神への敬意を表しましょう。
参拝作法とマナー
十勝神社での参拝は、一般的な神社の作法に従って行います。まず鳥居をくぐる際は一礼し、参道の中央を避けて歩きます。手水舎で手と口を清めた後、拝殿前で二拝二拍手一拝の作法で参拝します。
海の神である大綿津見神を主祭神とする十勝神社では、特に海上安全や大漁祈願、交通安全の祈願が多く寄せられています。また、保食神による五穀豊穣や商売繁盛、塩土老翁神による諸願成就への祈りも込めて参拝する方が多くいらっしゃいます。
境内は広大で自然豊かな環境にあるため、静寂を保ち、他の参拝者への配慮を心がけることが大切です。写真撮影を行う際は、拝殿内部や御神体に向けた撮影は控え、境内の美しい景観を楽しむ程度に留めましょう。
年中行事・季節のイベント
十勝神社の例祭日は9月21日で、この日には地域の人々が集まり盛大に祭典が執り行われます。例祭は神社にとって最も重要な祭典で、一年間の感謝と今後の安全・繁栄を祈願します。
春の桜の季節には、境内のエゾヤマザクラの開花に合わせて多くの参拝者や観光客が訪れます。4月下旬から5月上旬にかけてが見頃で、この時期には花見を兼ねた参拝が人気となっています。夜桜のライトアップも実施されるため、昼夜を問わず桜の美しさを堪能できます。
また、お正月の初詣では、新年の安全と繁栄を祈願する多くの参拝者で賑わいます。北海道の厳しい冬の中での参拝となりますが、雪景色の中の神社は格別の美しさがあります。
御朱印情報
十勝神社の御朱印は「十勝国一ノ宮十勝神社」として授与されています。十勝国一宮としての格式を示す貴重な御朱印で、神社参拝の記念として多くの方に親しまれています。
御朱印をいただく際は、事前に連絡を入れることをお勧めします。参拝予定の時間帯に不在の場合は、書き置きの御朱印を準備していただける場合もありますので、確実に御朱印をいただきたい方は事前に神社にお問い合わせください。
御朱印帳をお持ちでない方は、神社で購入することも可能な場合がありますが、事前に準備しておくとスムーズです。御朱印をいただく際は、参拝を済ませてから社務所にお声かけください。
アクセス・利用情報
十勝神社への参拝には、公共交通機関と自家用車の両方でアクセスが可能です。北海道の広大な土地に位置するため、事前にルートを確認してお出かけください。
交通アクセス
公共交通機関でのアクセス
JR根室本線「帯広駅」より十勝バス広尾営業所前行きに乗車し、約2時間30分で「十勝神社前」バス停下車、すぐの立地にあります。帯広駅からの所要時間は約2時間半と長めですが、十勝の雄大な自然を眺めながらの移動は十分に価値があります。
バスの便数は限られているため、事前に十勝バスの時刻表を確認し、帰りの便の時間も含めて計画を立てることが重要です。特に冬季は天候による運行状況の変更もあるため、当日の運行情報も確認しておきましょう。
自家用車でのアクセス
自家用車の場合は、国道336号(ナウマン国道)を利用してアクセスできます。札幌からは約4時間、帯広からは約2時間の行程となります。十勝港や襟裳岬方面への観光と合わせて訪問される方も多くいらっしゃいます。
冬季は路面の凍結や降雪に注意が必要で、冬用タイヤの装着やチェーンの携行は必須です。また、燃料は余裕を持って補給しておくことをお勧めします。
参拝時間・駐車場情報
十勝神社の参拝は通年可能で、特に参拝時間の制限はありませんが、社務所での御朱印授与や祈祷については事前にお問い合わせください。連絡先は01558-2-2063となっています。
駐車場は絶妙な位置に設置されており、整備も行き届いているとの評価があります。境内が広大なため、駐車場から社殿までは少し歩くことになりますが、参道の散策も含めて参拝の楽しみの一つとお考えください。
春の桜の季節や例祭の時期には参拝者が多くなるため、早めの時間帯での参拝がお勧めです。また、北海道の気候に合わせて、防寒具や雨具の準備も忘れずにお持ちください。
参拝料は特に設定されていませんが、賽銭や御朱印代などは適宜お納めください。神社の維持管理や地域の信仰活動の支援にもつながります。
<住所> 〒089-2637 北海道広尾郡広尾町茂寄1-13
参照サイト
・北海道神社庁 十勝神社:https://hokkaidojinjacho.jp/十勝神社/
・広尾町観光協会 十勝神社:https://hiroo-kanko.jp/spot/十勝神社/
・古今御朱印研究所 十勝神社:https://goshuin.net/tokachi-hiroo/