
水天宮|小樽市の由緒ある神社の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド
小樽市の高台に静かに佇む水天宮は、安政6年(1859年)創建の歴史ある神社です。標高55メートルの境内からは小樽港を一望でき、桜の名所としても多くの人々に愛され続けています。小樽三大祭りの一つである例大祭や、境内に設置された文学碑など、歴史と文化が息づく特別な場所として親しまれています。
水天宮の概要・基本情報
水天宮は小樽市相生町に鎮座する神社で、旧社格は郷社にあたります。安政6年(1859)の創祀と伝えられている歴史ある神社として、地域の信仰を集めてきました。現在の社殿は大正8年(1919年)に建立されたもので、小樽市指定歴史的建造物第50号に指定されています。
境内は標高約55メートルの高台に位置し、小樽港や日本海を一望できる絶好のロケーションにあります。春には桜が美しく咲き誇り、小樽市内でも有数の桜の名所として知られています。また、境内からは花園公園通りまで一直線に延びる道路を見下ろすことができ、小樽の街並みの美しい景観を楽しむことができます。
歴史と由来
安政6年(1859)の創祀と伝えられている水天宮は、当初から飲料水と食料生産の神を祀る神社として創建されました。創建当時の小樽は、北海道開拓の拠点として発展していく時期であり、水と食料の安定確保は住民にとって切実な願いでした。
神社の歴史には幾度かの変遷があります。明治27年4月大風により社殿が破壊され同33年4月社殿を再建しているという記録が残っており、自然災害を乗り越えながら現在まで続いています。また、明治33年当社に合祀した稲荷神社や、大正8年社殿の改築を期して官幣大社多賀神社の御祭神である諾冉二尊を勧請増祀したという歴史もあり、複数の神社が統合されて現在の形となりました。
祭神とご利益
水天宮には四柱の神々が祀られており、それぞれ異なるご利益があります。主祭神は弥津波能売神(みづはのめのかみ)で、水を司る神として海上安全や大漁祈願のご利益があるとされています。これは小樽が港町として発展してきた歴史と深く関わっています。
保食神(うけもちのかみ)は五穀豊穣と商売繁盛を司る神で、農業や商業に従事する人々の信仰を集めています。また、伊邪那岐神(いざなぎのかみ)と伊邪那美神(いざなみのかみ)は日本神話の創造神として知られ、夫婦円満、恋愛成就、子孫繁栄、子宝祈願などのご利益があると信じられています。
これらの神々への信仰は、水産業や商業で栄えた小樽の歴史と密接に結びついており、現在でも多くの参拝者が様々な願いを込めて訪れています。
水天宮の見どころ・特徴
水天宮の魅力は、歴史ある建造物と美しい自然景観、そして文化的価値の高い所蔵品にあります。特に境内からの眺望は「小樽市重要眺望地点」に指定されており、小樽観光の隠れた名所として多くの人々に愛されています。
建造物・構造の魅力
現在の社殿は、大正8年に市内の多くの社寺を手がけた伊久治三郎によって建てられています。社殿は本殿、中殿、拝殿が連結する権現造りの様式で設計されており、屋根は銅板葺きという特徴的な構造を持っています。
本殿は流造りで、置千木とかつお木が上げられた伝統的な神社建築の美しさを見せています。拝殿は入母屋造りで、正面屋根に大きい千鳥破風、向拝屋根上に小さい千鳥破風2個を飾っています。これらの装飾は、大正時代の優れた神社建築技術を現代に伝える貴重な遺産となっています。
境内入り口には特に印象的な狛犬が配置されており、他の神社と比べて非常に大きく、台座の高さも含めて全国的にも珍しいとされています。この狛犬は参拝者を迎える象徴的な存在として親しまれています。
自然・景観の美しさ
水天宮の最大の魅力の一つは、境内から望む絶景です。標高約55メートルの高台に位置する境内からは、小樽港や日本海、小樽の街並みを一望することができます。この景観は小樽市重要眺望地点に指定されており、訪れる人々に深い感動を与えています。
春には境内を囲むように植えられた八重桜、ソメイヨシノ、エゾヤマザクラが美しく咲き誇り、優美な桜吹雪を楽しむことができます。桜の季節には多くの花見客が訪れ、小樽市内でも有数の桜の名所として親しまれています。
また、海側の堺町へ下る急な階段と坂道は「外人坂」と呼ばれ、歴史的な趣を感じさせる散策路として人気があります。山側の小樽公園まで一直線に延びる道路との景観の統合も図られており、小樽の美しい都市景観の一部を成しています。
文化財・重要な所蔵品
境内には文学や歴史に関わる貴重な文化財が設置されています。石川啄木歌碑は小樽市内に3つある啄木の歌碑の一つで、小樽での生活を歌った作品が刻まれています。啄木は明治時代に小樽で暮らした経験があり、この歌碑は文学史的にも価値の高いものです。
三ツ谷謡村句碑には、北海道勇払郡出身の俳人による句が刻まれており、北海道の文学史を物語る貴重な資料となっています。河邨文一郎詩碑は小樽出身の医師であり詩人でもあった人物の作品を後世に伝えるものです。
さらに、境内には1893年(明治26年)10月に海軍水路部が実施した天文測量の際に設置された緯度天測標があり、近代日本の測量史を示す貴重な史跡として保存されています。これらの文化財は、水天宮が単なる宗教施設を超えて、小樽の文化と歴史を伝える重要な場所であることを物語っています。
参拝・拝観案内
水天宮への参拝は24時間可能ですが、社務所の受付時間は概ね9時から17時となっています。参拝の際は神社のマナーを守り、静かで落ち着いた雰囲気の中で心を込めてお参りすることが大切です。
参拝作法とマナー
水天宮での参拝は一般的な神社と同様の作法で行います。鳥居をくぐる際は一礼し、参道は中央を避けて歩くのが基本です。手水舎で手と口を清めてから拝殿に向かい、賽銭を納めて二拝二拍手一拝の作法でお参りします。
境内は静かで落ち着いた空間となっており、観光客も少なく穏やかな時間を過ごすことができます。宮司さんからは境内での飲食も許可されていますが、ごみは必ず持ち帰るよう配慮が求められています。特に境内のベンチから小樽港を眺めながら休憩することもでき、心身ともにリフレッシュできる場所として親しまれています。
高台にある神社のため、階段や坂道を登る必要がありますが、その分境内からの眺望は格別です。参拝の際は歩きやすい靴での訪問をお勧めします。
年中行事・季節のイベント
例祭日は6月15日で、毎年6月14日から3日間の日程で水天宮例大祭が開催されます。この例大祭は小樽三大祭りの一つに数えられ、龍宮神社、住吉神社とともに地元市民に深く親しまれています。
2007年(平成19年)からは神輿渡御も行われるようになり、祭りの華やかさが一層増しています。例大祭期間中は花園銀座商店街でも花銀水天宮市が同時開催され、花銀ビアガーデンや路上パフォーマンス、お神輿パレード、銭函創作太鼓「童夢」の演奏など多彩な催し物が楽しめます。
春の桜の時期は特に美しく、境内を囲む八重桜、ソメイヨシノ、エゾヤマザクラが咲き誇る様子は圧巻です。桜の見頃は例年4月下旬から5月上旬で、この時期には多くの花見客が訪れます。季節ごとに異なる表情を見せる境内は、一年を通じて参拝者に癒しを提供しています。
御朱印・お守り情報
水天宮では御朱印をいただくことができます。社務所の受付時間内に申し出れば、丁寧に書いていただけます。御朱印は参拝の記念として多くの人に親しまれており、神社の印章と墨書きによる美しい仕上がりが特徴です。
お守りについても各種取り扱いがあり、海上安全、商売繁盛、夫婦円満、子宝祈願など、祭神のご利益に応じた様々な種類が用意されています。特に小樽が港町であることから、海上安全のお守りは漁業関係者や船舶関係者に人気があります。
詳細な御朱印の受付時間やお守りの種類については、事前に神社に問い合わせることをお勧めします。社務所では丁寧に対応していただけるので、参拝と合わせてぜひお立ち寄りください。
アクセス・利用情報
水天宮へのアクセスは複数のルートがありますが、どのルートも坂道や階段があるため、歩きやすい服装での訪問をお勧めします。公共交通機関を利用する場合と徒歩でのアクセス方法をご紹介します。
交通アクセス
JR小樽駅からは北海道中央バス「3 小樽市内本線」「16 奥沢線」「1/38/42 ぱるて築港線」に乗車し、「花園公園通り」バス停で下車後、徒歩約10分(約600メートル)で到着します。このルートは比較的なだらかな坂道を登るコースとなります。
また、JR小樽駅から「おたる散策バス」に乗車し、「メルヘン交差点」バス停で下車する方法もあります。メルヘン交差点からは徒歩約10分(約350メートル)ですが、こちらのルートは急勾配の坂道「外人坂」を上ることになるため、体力に自信のある方におすすめです。
徒歩の場合、JR小樽駅または南小樽駅から約10分程度の距離にあります。おすすめのルートは花園銀座商店街を通り、老舗の菓匠「小樽新倉屋・花園本店」や「かま栄花園本店」に立ち寄りながら、花園橋を渡って鳥居をくぐって石段で境内に入るコースです。このルートでは小樽の下町情緒を楽しみながら参拝することができます。
<住所> 〒047-0028 北海道小樽市相生町3番1号
拝観時間・料金・駐車場情報
水天宮の参拝時間は24時間となっており、いつでも境内に入ることができます。ただし、夜間は安全面での配慮が必要で、特に階段や坂道での注意が必要です。社務所の受付時間は概ね9時から17時で、御朱印やお守りの授与はこの時間内に行われます。
参拝料は無料で、どなたでも自由に境内を散策し、参拝することができます。境内での写真撮影も可能ですが、他の参拝者への配慮を忘れずに行うことが大切です。
駐車場は境内に設けられており、自家用車での参拝も可能です。ただし、台数に限りがあるため、特に桜の時期や例大祭の期間中は混雑が予想されます。公共交通機関の利用も検討されることをお勧めします。
問い合わせは電話0134-22-3495で受け付けており、参拝に関する詳細な情報や最新の状況については事前に確認することができます。また、小樽市指定歴史的建造物に関する問い合わせは小樽市建設部新幹線・まちづくり推進室(0134-32-4111)でも対応しています。
参照サイト
・北海道神社庁 水天宮:https://hokkaidojinjacho.jp/水天宮-2/
・小樽市公式サイト 水天宮本殿、拝殿:https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020101500757/
・小樽観光協会公式サイト:https://otaru.gr.jp/tourist/r5suitengusai6-14-15-16