播州そろばんの約400年歴史と特徴をわかりやすく解説!

播州そろばんの約400年の歴史と特徴をわかりやすく解説!

そろばんは古くからある計算道具です。小学校でそろばんを使ったことがある人は多いと思います。

電卓が発展したことにより衰退したそろばんですが、近年では人気の習い事として注目度が高いです。

そこで本記事では、全国シェアNo.1の「播州そろばん」の歴史や特徴について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

播州そろばんとは

播州そろばんとは

そもそも播州そろばんとはどのようなものか見ていきましょう。

伝統工芸品 播州そろばんとは

播州そろばんは兵庫県小野市(旧播磨国・播州)を中心に作られている伝統工芸品です。

1976年6月2日に伝統工芸品として通商産業省(現在:経済産業省)から認定されました。

計算道具として使いやすいだけでなく、珠のはじきやすさ、均一な珠の大きさなどから「木の美術品」としての価値も持ち合わせています。

参考元:伝統的工芸品 (METI/経済産業省)

播州そろばんの種類

播州そろばんにもいくつかの種類があります。3つの種類を簡単に紹介しますので、見ていきましょう。

【伝統的工芸品】播州そろばん

 

高度な伝統技術を受け継いだ職人が手作業で1つ1つ丁寧に作り上げる「伝統的工芸品の播州そろばん」です。

スタンダードな形ですが、重厚感や使いやすさは本格的となっています。

【ワンタッチ】播州そろばん

 

上部左ボタンを押すと、簡単に破算できるワンタッチ式のそろばんです。

速算力が上がるので検定試験に必須でしょう。

【カラフル】播州そろばん

【カラフル】播州そろばん

出典:株式会社DAIICHI(ダイイチ)

 

カラフルでシンプルなカラーそろばんです。見た目の可愛さからプレゼントにも向いています。

シンプルながら使い勝手も良いので、お子さんのそろばんデビューにも最適なアイテムです。

播州そろばんの歴史

播州そろばんの歴史を大きく3つにわけて紹介します。

播州そろばんの起源

そろばんは、室町時代末期に中国から長崎県へ伝来したといわれています。中国のそろばんは、上に2珠、下に5珠の形でしたがそれが改良されて現在の形になっています。

日本でそろばんが使われるようになったのは文禄時代(1592~95年)です。数学者である毛利勘兵衛重能が京都の二条京極で「天下一割算指南」という道場を開き、そろばんの使い方を伝授したことが全国に広がったきっかけです。

播州そろばんは、長崎県から広まった「大津そろばん」が起源だといわれています。天正時代(1573~91年)に豊臣秀吉が三木城を攻めた際に、三木の住民が大津へ逃れました。

大津へ逃れた住民が、大津そろばんの製造技術を習得し、帰郷して三木や小野周辺でそろばんの製造を始めたことが播州そろばんの起源です。

播州そろばんの全盛期

江戸時代になるとそろばん書籍が刊行され始めます。現存する日本で一番古い書籍は、毛利重能が刊行した「割算書」です。

割算書を皮切りに多くの書籍が出版され庶民に広がっていきます。刊行された書籍は以下の通りです。

西暦 書籍名 著者
1627年 塵劫記 吉田光由
1655年 新編諸算記 百川忠兵衛
1659年 改算記 山田正重
1711年 大成算経 関孝和・建部賢弘・建部賢明
1781年 初学算法 乳井貢
1879年 亀井算法 高橋栄蔵

参考元:そろばんの歴史 | 公益社団法人全国珠算教育連盟

日常生活で必要な計算がそろばんを用いることで簡単にできることが認知され、庶民だけでなく武士や商人など階級を問わず普及しました。

1804年頃から寺子屋の数が増え始め「読み・書き・そろばん」の習得が広がり、そろばんの人気が高まりました。

年間360万丁の播州そろばんが製造されていた1960年頃が、そろばんの全盛期です。しかし、その後は電卓の普及や学校におけるそろばん授業の減少、コンピューターの導入などが原因でそろばんは衰退しました。

現在の播州そろばん

一度は衰退したそろばんですが、近年では人気の習い事として脚光を浴びています。その主な理由としては以下の2つです。

  1. そろばんの教育的効果が認められたこともあり、小学校の授業(算数)でそろばんが取り入れられた
  2. そろばんは脳を活性化させて集中力・創造力といった力を養うため、子どもの教育や高齢者の認知症を対策する器具として用いられている

現在では、二大産地でもある小野市(小野市珠算振興会・小野商工会議所)が中心となって振興事業に取り組んでいます。

播州そろばんの特徴

播州そろばんの最大の特徴は、製造方法です。播州そろばんは100を超える製造工程がありますが、そのほとんどが手作業です。

高度な伝統技術を受け継いだ職人が作業工程を分業化しています。そのため、多くの職人の手によって一丁のそろばんが出来上がります。

制作工程は大きく分けると、珠作り・珠仕上げ・ひご竹作り・組み立ての4つです。それぞれの工程において伝統と歴史を誇る匠の技がなされており、まさに「美の結晶」といえるでしょう。

また使いやすさ、玉の感触など、美術品のように磨き上げられた美しさも特徴の1つです。

播州そろばんの作り方(製作工程)

先ほども述べましたが、播州そろばんの製作工程は珠作り・珠仕上げ・ひご竹作り・組み立ての4つです。

珠作り(珠削り)

珠作りは珠の材料となる原木を機械で丸い形に打ち抜き、削りながら珠の形に整えていきます。

機械だけに頼らず、すべての珠が均一になるように熟練職人の目でもチェックをします。

珠仕上げ

上記で作った珠に色を塗りつやを出し、珠を仕上げる工程です。

ひご竹作り

竹をサイズに合わせて切っていきます。その後、それを丸く加工して染色し、磨き上げていきます。

組み立て

組み立ては、全部のパーツを組み立てる工程です。珠を入れた後は、ただ組み立てるのではなく木を削ったり、磨いたり、枠に穴を開けたりなど、細かな微調整が多くあります。

伝統的な技法を用いるなど、職人の技が光る作業です。最後は紙やすりなどで磨いてつやを出せば完成です。

播州そろばんに関するよくある質問

播州そろばんに関するよくある質問を紹介します。

播州そろばんと雲州そろばんの違いは?

伝統工芸品の雲州そろばんと播州そろばんの違いは、簡単にいうと用途が異なります。

播州そろばんは一般家庭向けのそろばんです。一方の雲州そろばんは銀行向けのそろばんとなっています。

播州そろばんに後継者はいるの?

400以上の歴史を持つ播州そろばんですが、深刻な後継者不足に直面しています。播州そろばんは分業作業であるため、各々の工程で職人が必要です。

現在、各工程には1~2程度しか職人がおらず、1人でも欠けてしまうと播州そろばんは作れなくなってしまいます。

弟子の育成などもしていますが、すぐに伝統的な技術が身につくわけでもないため危機的状況です。

播州そろばんについて詳しく知るには?

播州そろばんについて詳しく知りたい人は、小野市にある「そろばん博物館(小野市伝統産業会館内)」がおすすめです。

資料や製造道具、原料などが見られます。条件によっては実演も見られるので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

播州そろばんは400年以上の歴史がある「伝統工芸品」です。電卓やパソコンなどの導入で、ピーク時に比べると衰退しました。

しかし、脳の活性化や教育的効果が認められるなど、注目されています。また商品も工夫されており、ワンタッチそろばんやカラフルそろばんなど、現代の形に合わせた商品が作られているのも特徴です。

深刻な後継者不足に直面していますが、伝統を守りつつ進化を遂げている播州そろばんをぜひ一度体験してください。

参照元:播州算盤工芸品協同組合 | 小野市 観光ナビ

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