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金剛輪寺庭園|湖東三山の名刹が誇る美しい日本庭園の魅力と見どころ、拝観案内を徹底紹介

滋賀県愛荘町にある金剛輪寺庭園は、湖東三山の一つとして知られる古刹の境内に広がる美しい日本庭園です。本坊明壽院を中心とした国指定名勝の庭園は、桃山時代から江戸時代にかけて作庭された三つの異なる時代の庭が見事に調和しています。特に秋の紅葉は「血染めのもみじ」として名高く、近江路随一の美しさを誇ります。

金剛輪寺庭園の概要・基本情報

金剛輪寺庭園|湖東三山の名刹が誇る美しい日本庭園の魅力と見どころ、拝観案内を徹底紹介

金剛輪寺は滋賀県愛知郡愛荘町松尾寺にある天台宗の寺院で、山号を松峯山と称し、聖観音菩薩を本尊とする古刹です。寺伝によれば聖武天皇の勅願により奈良時代の天平13年(741年)に行基菩薩が開山したとされ、西明寺、百済寺とともに湖東三山の一つに数えられています。

琵琶湖の東、鈴鹿山脈の西山腹に位置する金剛輪寺は、長い歴史の中で何度かの危機を乗り越えてきました。天正元年(1573年)に織田信長の兵火により被害を受けましたが、現存の本堂と三重塔は寺僧の尽力で焼失を免れました。これは総門から本堂まで数百メートルの石段を上った奥にあるため、見落とされたのではないかという説もあります。

歴史と由来

金剛輪寺は聖武天皇の勅願により僧行基が開創したとされ、平安時代の初期には第三世天台座主の慈覚大師円仁により再興されたため、同師を中興の祖と仰いでいます。寺院の所在地は昭和の市町村合併以前は秦川村といったことから、渡来系氏族の秦氏との関係もあったとする見方もあります。

江戸時代に入ってからは彦根藩および天海僧正を始めとする天台宗一門の庇護を受け、寛永期から諸堂宇の修理・復興が続けられました。寛文四年(1664年)の山内絵図面によると、堂宇は本堂を含めて七宇、坊は24を数えており、盛時の寺容をうかがわせます。

湖東三山としての位置づけ

湖東三山とは、琵琶湖の東側に位置する三つの天台宗寺院の総称で、金剛輪寺のほか西明寺と百済寺が含まれます。いずれも奈良時代から平安時代にかけて開創された古刹で、鈴鹿山脈の西麓という共通した立地条件を持ちます。

これら三山は紅葉の名所としても名高く、特に金剛輪寺の「血染めのもみじ」は湖東三山の中でも特に有名です。山岳信仰の拠点として、また近江の文化的中心地として重要な役割を担ってきました。

庭園の特徴と作庭様式

金剛輪寺庭園は本坊明壽院の南・東・北の三方を囲むように配置された庭園で、心の字池が3つの庭を結んでいます。これらの庭園は作庭された年代がそれぞれ異なる池泉回遊・鑑賞式の庭園で、桃山時代から江戸時代中期にかけて造られました。

明壽院は金剛輪寺の本坊で、明壽院の名称の初見は寛文十三年(1673年)であり、この頃正泉坊を継いで本坊になったと考えられます。庫裡・書院は明和三年(1766年)から安永五年(1776年)にかけて再建され、護摩堂(正徳元年・1711年)、茶室・水雲閣(天保十一年・1840年)が配されています。

金剛輪寺庭園の見どころ・特徴

金剛輪寺庭園|湖東三山の名刹が誇る美しい日本庭園の魅力と見どころ、拝観案内を徹底紹介

金剛輪寺庭園の最大の魅力は、異なる三つの時代に作庭された庭園が一つの空間で調和していることです。それぞれの庭園は独自の個性を持ちながら、全体として統一感のある美しい景観を形成しています。

血染めの紅葉で知られる境内の美しさ

金剛輪寺は「血染めのもみじ」として知られる秋の紅葉で特に有名で、11月中旬から下旬にかけて境内一円が鮮やかな紅葉に彩られます。特に本堂周囲と庭園内の紅葉の美しさは格別で、深紅に染まる様子から「血染め」の名がつけられています。

主庭から江戸中期の庭にかけては、噂に違わず”血染めもみじ”と称される紅葉が見事で、それ以外の季節にも花々が楽しめる庭園となっています。桃山時代の庭園は春にはシャクナゲやカキツバタが咲き、主庭は初夏にサツキの刈込が花を咲かせ、季節ごとに異なる表情を見せます。

紅葉以外の季節にも魅力があり、春の山桜やシャクナゲ、新緑と青モミジの季節から夏にかけては紫陽花や睡蓮が咲き誇ります。四季を通じて訪れる人々を楽しませる美しい庭園として親しまれています。

本堂と三重塔の歴史的建造物

金剛輪寺の本堂大悲閣は鎌倉時代の代表的な和様建築として国宝に指定されており、近江守護職の佐々木頼綱が蒙古襲来(元寇の役)の際、戦勝記念として建立したとされます。本堂は七間四方(約22メートル四方)のほぼ正方形で、屋根は入母屋造り檜皮葺きという美しい姿を見せています。

内部は外陣、内陣、後陣に分かれ、外陣と内陣の間には天台宗独特の吹寄せ菱格子欄間による結界を設けており、中世密教本堂の代表的な建築として評価されています。

三重塔は鎌倉時代の建立で国の重要文化財に指定されており、二天門とともに織田信長の焼き討ちから逃れた貴重な建造物です。これらの歴史的建造物は庭園と調和して、金剛輪寺の荘厳な雰囲気を演出しています。

国指定重要文化財と寺宝

金剛輪寺の堂内には平安時代の十一面観音像をはじめ、重要文化財の仏像が数多く安置されています。内陣には平安時代に創られた慈覚大師の像が祀られており、これは非常に貴重で見る機会が少ない仏像です。

ご本尊は行基菩薩の作と伝わる秘仏・聖観音菩薩で、住職一代一会の御開帳とされる特別な存在です。伝承によれば、行基が拝みながら彫刻を進められるとやがて一筋の血が流れ落ちたことから、この時点で観音さまに魂が宿ったとして、あら彫りのまま安置されています。これが金剛輪寺の紅葉が「血染めの紅葉」といわれる由縁ともなっています。

その他にも日本最古の古式の大黒天である大黒天半跏像など、貴重な仏像が多数保存されており、金剛輪寺の長い歴史と信仰の深さを物語っています。

拝観案内

金剛輪寺庭園|湖東三山の名刹が誇る美しい日本庭園の魅力と見どころ、拝観案内を徹底紹介

金剛輪寺庭園は年間を通じて拝観可能で、季節ごとに異なる表情を楽しむことができます。特に秋の紅葉期は多くの参拝者で賑わいますが、春のシャクナゲや夏の睡蓮も美しく、四季を通じて訪れる価値があります。

庭園拝観のポイントと楽しみ方

金剛輪寺庭園の拝観は、本坊明壽院を中心とした三つの時代の異なる庭園を順次巡る形になります。黒門(惣門)をぬけ、白門をくぐった参道の途中に明壽院があり、この本坊の南・東・北の三方を囲むように庭園が配置されています。

桃山時代に造られた庭は「石楠花の庭」と呼ばれ、庭の中央に架けられた優雅な石橋のそばに、鎌倉時代に作られた苔むした多くの石が配され、品格のある雰囲気を醸し出しています。春になると、庭のそばにある護摩堂のカキツバタやシャクナゲが鮮やかに咲き、華やかな表情を見せます。

江戸初期の庭は金剛輪寺の主庭で、他の庭と趣が異なり、どっしりと落ち着いた雰囲気です。枯れ滝が配され、夏には池一面に睡蓮が清楚な花を咲かせます。江戸中期の庭は、滝から池に水が流れ、池の中に七福神の宝船を表わす岩でできた舟が配されています。

茶室・水雲閣は湖東随一の茶室で、天井に桜、なでしこ、菊など四季おりおりの花が描かれています。この茶室からの庭の眺めは美しく、一見の価値があります。通常は入ることができませんが、特別公開の機会があれば貴重な体験となるでしょう。

季節ごとの見どころとベストシーズン

金剛輪寺庭園は四季を通じて美しい景観を楽しめますが、それぞれの季節に特色があります。春は山桜やシャクナゲが美しく、桃山時代の庭園では特にシャクナゲが見事に咲き誇ります。新緑の季節から夏にかけては青もみじが美しく、紫陽花や睡蓮が池を彩ります。

秋の紅葉は金剛輪寺の最大の見どころで、11月中旬から下旬にかけて境内一円が鮮やかに色づきます。特に本堂周囲と庭園内の紅葉は「血染めのモミジ」と称されるほど深紅に染まり、その美しさは近江路随一とも言われています。ヤマモミジやイロハカエデを中心とした全山の紅葉は、日本の紅葉名所百選にも選ばれています。

冬は雪化粧した庭園が静寂な美しさを見せ、普段とは異なる趣を楽しむことができます。参道の両脇に鎮座する千躰地蔵尊も、雪に覆われると一層神秘的な雰囲気を醸し出します。

年中行事・特別拝観

金剛輪寺では年間を通じて様々な行事が行われており、特別拝観の機会も設けられています。秋の紅葉期には「日本最古の大黒天特別公開」が11月1日から12月8日まで行われ、金運の神として親しまれている貴重な仏像を拝観することができます。

この特別公開期間中には約5万人の参拝者が訪れ、境内は特に賑やかになります。また、茶室「水雲閣」の特別公開や、名勝庭園を眺めながら近江のモノづくり文化を体感できるお抹茶体験なども不定期で開催されており、より深く金剛輪寺の文化に触れることができます。

紅葉シーズンには JR彦根駅から湖東三山シャトルバスが運行され、アクセスが便利になります。運行期間や時刻表については事前に公式ホームページで確認することをおすすめします。

アクセス・利用情報

金剛輪寺庭園|湖東三山の名刹が誇る美しい日本庭園の魅力と見どころ、拝観案内を徹底紹介

金剛輪寺は滋賀県愛荘町にあり、名神高速道路の湖東三山スマートインターチェンジから車で1〜2分という非常に便利な立地にあります。公共交通機関でもアクセス可能ですが、自家用車での来訪が最も便利です。

交通アクセス

自動車でお越しの場合は、名神高速道路・湖東三山スマートインターチェンジをご利用ください。インターチェンジより1〜2分で到着する好立地で、約400台収容の無料駐車場が完備されています。

公共交通機関をご利用の場合は、JR琵琶湖線「稲枝(いなえ)」駅よりタクシーで15分です。予約型乗合タクシー「愛のりタクシーあいしょう」も利用可能で、「金剛輪寺停留所」で下車できます。詳細は事前にお問い合わせください。

紅葉の最盛期には JR彦根駅から湖東三山シャトルバスが運行され、金剛輪寺へのアクセスが便利になります。運行期間や時刻表については金剛輪寺または観光協会にお問い合わせいただくか、公式ホームページでご確認ください。

参道を歩くのが困難な場合は、本堂駐車場まで乗用車や大型バスの乗り入れが可能です。拝観受付にてお申し出いただければ対応いたします。このサービスにより、足の不自由な方でも安心して参拝できます。

拝観時間・料金・駐車場情報

拝観時間は8時30分から16時30分まで(17時閉山)となっており、年中無休で開門しています。拝観料(入山料)は大人800円(20名以上の団体の場合は700円)で、国宝本堂と名勝庭園の共通拝観料となっています。中学生300円、小学生200円です。

駐車場は約400台収容の無料駐車場が完備されており、大型バスでの来訪も可能です。特に紅葉期には多くの参拝者が訪れるため、早めの時間帯での来訪をおすすめします。

境内には食事処「華楽坊」もあり、参拝の合間に休憩することができます。また、御朱印や御祈禱も受け付けており、詳細は寺務所までお問い合わせください。

<住所> 〒529-1202 滋賀県愛知郡愛荘町松尾寺874

参照サイト

・天台宗 金剛輪寺 公式ホームページ:https://kongourinji.jp/
・近江湖東の古刹「湖東三山」公式サイト:https://www.kotousanzan.jp/

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