
山上大神宮|由緒ある神社の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド
函館山麓の幸坂を上り詰めた頂上に静かに佇む山上大神宮は、600年という長い歴史を持つ由緒ある神社です。坂本龍馬の親戚にあたる澤辺琢磨が宮司を務めた歴史や、箱館戦争の舞台となった興味深いエピソードに満ちています。函館市唯一の景観形成指定建築物である本殿からは、函館港を一望できる絶景が楽しめます。
山上大神宮の概要・基本情報
山上大神宮は北海道函館市船見町に鎮座する神社で、旧社格は郷社に列されています。函館山の北麓、幸坂の急勾配を登り切った頂上部に位置し、函館の街並みと津軽海峡を見下ろす絶好のロケーションにあります。
現在の社殿は昭和7年(1932年)に竣工したもので、銅版葺きの美しい神社建築として知られています。神社建築としては函館市で唯一、景観形成指定建築物に指定されており、その歴史的価値と建築美が高く評価されています。
歴史と由来
山上大神宮の創建は、社伝によると今から約600年前の応安年間(1368~1375年)にさかのぼります。藤坊という修験者がこの地に渡来し、亀田赤川村神明山に草庵を結び、伊勢神宮の御霊を勧請したことが始まりとされています。
その後、明暦元年(1655年)5月に尻澤辺村(現在の住吉町)に遷座し、「箱館神明宮」と称しました。天和2年(1682年)には現在の西消防署弥生出張所付近に移転し、明治7年(1874年)に当時の地名である山ノ上町にちなんで「山上大神宮」と改称しました。明治9年(1876年)には郷社に列格されています。
神社は度重なる移転を経験しており、明治11年(1878年)と翌12年の函館大火により類焼したため、一時的に住吉町の住吉神社に仮遷座しました。明治15年(1882年)9月に船見町に新築遷座し、明治35年(1902年)11月に現在地に移転改築されました。
祭神とご利益
山上大神宮の主祭神は、天照皇大神(あまてらすおおみかみ)と豊受大神(とようけのおおかみ)です。これらは伊勢神宮の内宮と外宮の御祭神でもあり、日本神話における最高神と食物・穀物の神として崇敬されています。
また、過去に行われた神社の合併により、10柱以上もの神々が合祀されているのも特徴の一つです。学業成就の神様として知られる菅原道真公や、安産祈願の神様である木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)なども祀られており、多様なご利益を求める参拝者が訪れます。
これらの神々により、学業成就、安産祈願、商売繁盛、厄除開運など幅広いご利益があるとされ、地域の人々に親しまれています。
山上大神宮の見どころ・特徴
山上大神宮は、その歴史的背景と美しい建築、そして函館の街を見下ろす絶景で多くの参拝者を魅了しています。神社建築の美しさと歴史的価値、自然に囲まれた立地が織りなす独特の魅力があります。
建造物・構造の魅力
現在の社殿は昭和5年(1930年)6月に改築が始まり、昭和7年(1932年)3月に竣工した銅版葺きの美しい建築です。神社建築としては函館市で唯一、景観形成指定建築物に指定されており、その歴史的価値と建築美が公的に認められています。
本殿の建築様式は伝統的な神社建築の特徴を備えており、細部にわたって丁寧な装飾が施されています。銅版葺きの屋根は経年により美しい緑青色に変化し、函館山の緑と調和した趣深い外観を呈しています。
社務所も歴史を感じさせる木造建築で、レトロな雰囲気が参拝者に親しまれています。境内全体が山の木々に囲まれており、都市部にありながら静寂で神聖な空間を保っています。
自然・景観の美しさ
山上大神宮の最大の魅力の一つは、函館山の麓という立地から望める絶景です。境内から振り返ると、鳥居の向こうに幸坂の直線的な坂道が続き、その先に函館港と津軽海峡の美しい景色が広がります。
特に夕方の時間帯には、夕日に照らされた函館の街並みと海が黄金色に輝き、息をのむような美しさを見せてくれます。この景観は函館の隠れた絶景スポットとして知られており、写真愛好家や観光客にも人気があります。
境内は山の自然に囲まれており、四季折々の変化を楽しむことができます。春には新緑、秋には紅葉が境内を彩り、函館山の豊かな自然を身近に感じることができる貴重な場所となっています。
歴史的エピソードと人物
山上大神宮には、幕末から明治にかけての興味深い歴史的エピソードが数多く残されています。最も有名なのは、8代神職であった澤辺琢磨(旧名山本琢磨)にまつわる話です。
澤辺琢磨は土佐藩士で、坂本龍馬、武市半平太とは親戚関係にありました。江戸で起こした時計拾得事件により流浪の身となり、箱館にたどり着いた後、神明宮(現山上大神宮)の宮司となりました。彼は新島襄(新島七五三太)の海外渡航を手助けしたことでも知られています。
また、箱館戦争の際には、榎本武揚率いる旧幕府軍に加わった桑名藩主松平定敬の御座所として使用されました。このように、山上大神宮は幕末維新期の動乱の舞台としても重要な役割を果たしており、日本の歴史の一端を物語る貴重な場所となっています。
澤辺琢磨は後にハリストス正教会に帰依し、日本ハリストス正教会最初の日本人司祭となったという、宗教史上でも興味深い人物でした。
参拝・拝観案内
山上大神宮への参拝は年中可能で、函館の隠れた名所として地元の人々や歴史愛好家に親しまれています。急勾配の幸坂を上った先にある神聖な空間で、心静かに参拝することができます。
参拝作法とマナー
山上大神宮での参拝は、一般的な神社の作法に従って行います。鳥居をくぐる際は一礼し、参道の中央を避けて歩きます。手水舎で手と口を清めてから拝殿に向かいましょう。
参拝は「二拝二拍手一拝」の作法で行います。賽銭を納めた後、深く二回お辞儀をし、胸の前で二回拍手を打ち、最後に深く一礼します。境内では静かに過ごし、他の参拝者への配慮を忘れずに。
幸坂は函館でも特に急勾配の坂として知られているため、参拝の際は歩きやすい靴を着用することをお勧めします。また、境内からの眺望を楽しむ際も、落下防止のため安全に注意してください。
年中行事・季節のイベント
山上大神宮の例大祭は毎年7月16日に執り行われます。この日には松前神楽が奉納され、真剣を構えて天井の注連縄を切り落としながら舞う勇壮な神楽を見ることができます。地域の重要な祭礼として、多くの参拝者が訪れます。
また、新年には初詣の参拝者で賑わい、合格祈願や安産祈願などの祈祷も行われています。四季を通じて各種祈祷を受け付けており、人生の節目や願い事がある際には事前に連絡して相談することができます。
季節ごとの自然の変化も楽しみの一つで、春の新緑、夏の青々とした緑、秋の紅葉、冬の雪景色など、函館山の豊かな自然を背景とした美しい境内の風景を楽しむことができます。
御朱印・お守り情報
山上大神宮では御朱印の授与を行っており、受付時間は午前9時から午後5時までとなっています。御朱印は常時受け付けており、丁寧に書いていただけることで参拝者に好評です。
また、兼務社である住三吉神社の御朱印もこちらで受け付けています。両社の御朱印を一度に受けることができるため、効率よく参拝したい方にとって便利です。
お守りや縁起物についても各種取り揃えており、学業成就、安産祈願、交通安全などの願いに応じたお守りを授与しています。詳細な情報については、参拝時に社務所でお尋ねください。
アクセス・利用情報
山上大神宮は函館山の麓、幸坂の頂上に位置しており、函館市街地からアクセス可能です。ただし、幸坂は函館でも特に急勾配の坂として知られているため、参拝には体力を要することを念頭に置いてください。
交通アクセス
最寄りの電停は函館市電「函館どっく前」駅で、下車後徒歩約15分です。駅から幸坂に向かい、急勾配の坂道を上り詰めた先に神社があります。坂道は特に旧ロシア領事館付近から急勾配となり、最後の区間はかなりの急坂となります。
バスでのアクセスも可能ですが、最寄りのバス停からも徒歩での上り坂が必要となります。タクシーを利用する場合、神社の手前まで上がることができますが、道幅が狭いため注意が必要です。
函館駅からは車で約15分程度の距離にあります。ただし、幸坂は一方通行の区間があり、道幅も狭いため、運転には十分な注意が必要です。体力に不安がある方は、タクシーの利用をお勧めします。
拝観時間・料金・駐車場情報
山上大神宮の境内は基本的に終日開放されており、参拝に特別な料金は必要ありません。御朱印の受付時間は午前9時から午後5時までとなっています。
駐車場については、神社専用の駐車場は設けられていないため、参拝の際は公共交通機関の利用をお勧めします。周辺にも駐車スペースは限られており、幸坂の勾配を考慮すると、車でのアクセスには注意が必要です。
問い合わせは電話0138-22-1819で受け付けています。参拝や祈祷に関する詳細な情報については、事前に連絡して確認することをお勧めします。
<住所> 〒040-0055 北海道函館市船見町15番1号
参照サイト
・はこぶら(函館市公式観光情報):https://www.hakobura.jp/spots/644
・函館・みなみ北海道観光ガイド:https://hakodate-kankou.com/spot/10687/
・北海道神社庁:https://hokkaidojinjacho.jp/山上大神宮