栃木県の伝統工芸品に現代の感性を取り入れた日光下駄みやび

栃木県の伝統工芸品である日光下駄は、夏は涼しく冬は暖かい実用性に富んだ下駄です。

日光下駄をより現代風にアレンジした日光下駄みやびの魅力を紹介します。

日光下駄とは?

日光下駄は江戸時代の日光参詣を起源とする下駄に草履表を縫いつけた履物です。長年にわたり栃木県内で愛用され、現在では栃木県の伝統工芸品に指定されています。

日光下駄のルーツ

日光下駄の起源は江戸時代です。日光の東照宮には江戸幕府の初代将軍・徳川家康がまつられています。東照宮のような格式の高い場所に足を踏み入れる際は、草履に履き替えるのが当時の正式な作法でした。しかし、境内は砂利道や坂道が多く、また冬には雪も降り積もるので草履で歩くのは不便なことから、草履の下に下駄をつけた御免下駄が考案されたのです。

明治時代になり、御免下駄を実用的に改良したものが日光下駄といわれています。

日光下駄は栃木県伝統工芸品

日光下駄は栃木県の伝統工芸品に指定されています。「栃木県伝統工芸品」は、日常生活で使用される製品で、伝統的な技法・原材料を利用し栃木県で長年受け継がれてきていることが指定要件です。

現代に受け継がれる日光下駄の文化

現代では着物を着る習慣がなくなり、日光下駄を履く機会も減っています。しかしさまざまな形で日光下駄の文化は市民に根づいています。長年市民に愛されてきた「日光けっこうフェスティバル」では、日光下駄を飛ばして距離を競う「日光下駄飛ばし選手権」がイベントの目玉のひとつでした(日光けっこうフェスティバルは現在は廃止)。

また、星野リゾートが運営するリゾート施設「界 日光」では日光下駄を履いたスタッフがタップダンスのように激しく踊る「日光下駄談義」が人気の催し物になっています(界 日光は現在改装のため休業中)。

伝統工芸品に若き職人が現代の感性を取り入れた日光下駄みやび

日光下駄は歩けば歩くほど足になじみ、一年を通して利用できる優れた履物です。しかし、着物を着る習慣がなくなった現代では、それだけでは多くの人に受け入れられません。江戸時代から受けつがれる伝統工芸品に新たな息吹を与えて現代の生活にもフィットするように改良を加えたのが「日光下駄みやび」です。

日光下駄みやびには以下のような特徴があります。

歩きやすさを追求した下駄底

一般的な下駄には本来コの字型の2枚歯がついています。それに対して御免下駄は前の歯が最先端に、後ろの歯が最後部についている右近下駄の形状をしているのが特徴です。

日光下駄みやびの下駄底は、下駄に慣れていない人でも歩きやすいように御免下駄をさらに現代の靴のソールに近い形状に改良しています。

また一部の製品では、地面と接する下駄底(靴ではアウトソールにあたる部分)に、後述するように世界的に定評のあるビブラムソールを採用しています。

豊富なカラーバリエーション

昔ながらの下駄のデザインではなく、現代のファッションにマッチした鼻緒や草履表を用意しているのも当工房の日光下駄の特徴です。

さまざまな種類の鼻緒と、赤や青など色鮮やかに染めた草履表を組み合わせることによって和服だけでなく洋服にも合うおしゃれなデザインに仕上げています。

日光下駄みやびは素材にとことんこだわる

当工房では下駄を構成するパーツの素材にも、とことんこだわっています。

下駄台

下駄台は靴のソールにあたる部分です。日光下駄みやびでは台木に軽くて丈夫な桐を使用。桐は割れにくく削りやすいので加工がしやすい木材です。

仕入れ先もこだわりを持って厳選しています。

例えば仕入れ先のひとつは桐原木の伐採から手がける茨城県筑西市の桐之華工房です。同工房は桐材の販売だけでなく、自社でも桐下駄を製造し、茨城県伝統工芸品に指定されています。

草履表

下駄台の上に草履表を縫いつけてあるのが日光下駄の大きな特徴です。素材には竹の皮を使っているので、夏は涼しく冬は保温効果があります。

竹皮は九州のごく一部でしか採れない「幻の竹皮」と呼ばれるものを使用。真竹の変種で黒い斑点が少ないのが特徴です。素材の色をそのまま生かす場合もあれば、赤や青、紫などさまざまな色に染めることによって若者にも人気のオシャレなファッションアイテムに仕上げます。

天然の竹皮を細かく裂き一本一本ていねいに編み上げているので、草履の編目や形が不自然になったり、竹皮が痛んだりすることはありません。手作り感のある自然な風合いに仕上がっています。

下駄底

下駄底には、歩きやすいようにゴムソールを貼っています。さらに一部の製品にはビブラムソールを採用。

ビブラムソールは、イタリアのソールメーカーであるビブラム社が開発・製造しているソールで、世界中の靴メーカーで採用されています。もともとは登山靴のために開発され、現在ではタウンユースのスニーカーやファッション性の高いシューズにも取り入れられています。

軽量で耐久性があるので、長時間歩いいても疲れにくいのが特徴です。ビブラムソールを採用しているのは、日光下駄では当工房だけです。

鼻緒

鼻緒は下駄の顔、履物の印象を決める大事なパーツです。日光下駄みやびでは、大島紬や博多織などの伝統的な素材からデニムや花柄プリントなどのカジュアルなものまでさまざまな鼻緒を取り揃えています。

まとめ

当店の制作する日光下駄は着物や浴衣だけでなく洋服にもマッチするおしゃれな履物です。それぞれの工程は手作業で仕上げられているので、すべてが一点モノで丈夫で長持ち。壊れても修理できる特徴は、SDGsの実現を目指すこれからの社会にもフィットしているといえるでしょう。長く履くほどますます愛着のわいてくる日光下駄の魅力をぜひ多くの方に知っていただきたいと考えています。

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