4代受け継がれる江戸切子小林の魅力|最新作はネコ型グラス
今回は、江戸切子の新たな可能性を次々に切り開く「江戸切子小林」を紹介します。4代に受け継がれた歴史や新たな挑戦、作品の魅力も紹介しています。ぜひ、最後までお読みください。
江戸切子小林
1908年(明治41年)、まだ12歳だった初代・小林菊一郎がある職人へ弟子入りしたのが、江戸切子小林が誕生するきっかけです。
小林菊一郎の師匠は、大橋徳松(タレント大橋巨泉の祖父)で、イギリスより招聘したエマニュエル・ホープトマンからカット技術を指導された、数少ない日本人の一人でした。
その後、英夫、淑郎、昂平が技を受け継ぎ、115年以上も江戸切子の第一線を走り続けています。
家業を継がないと思っていた4代目の転機
「この仕事で生活していくのは難しいから他の仕事に就きなさい」
4代目である小林昂平さんは、両親からそう言われて育ちました。自分も別の世界で働きたいと思っていたそうです。しかし、アメリカで2週間ホームステイした大学2年生の春休みに大きな転機が。
「ビューティフル!アメージング」
父が作ったぐい呑みをホストマザーにプレゼントすると、予想以上に心から喜んでくれたのです。そして、さんさんと降り注ぐ日光を浴びた切子のまばゆい光に衝撃を受けました。ガラスの美しさをたくさんの人と共有したい。この経験が、切子の職人への道を歩むことのきっかけになりました。
家業を継ぐことを決意した昂平さんは、父の後ろからそっと手元を覗き込み、一つ一つの削り方をマスターしていきました。
「何も教えてないのに、彼はたった1年ぐらいで、難しい文様が出来るようになってしまった。やっぱりカエルの子はカエルだと思いましたね」
3代目・淑郎さんはそう話します。
現在は、代々受け継がれてきた細かなカット技術を生かしながら、大胆な曲線やデザイン、色合いを取り入れ、ガラスの美しさが際立つ作品を探求しています。
オリジナル技法から生まれた「Uno glass」
「Uno」は、 4代目・小林昂平によるオリジナル技法「サギング切子」から生まれたシリーズです。
本来、江戸切子は、透明なガラスの表面にさまざまな模様のカットを施し、手摺りと磨きで仕上げていくガラス工芸。基本的にガラス生地を作る人と削る人が分かれています。
しかし、本シリーズでは、ガラス生地から1人で制作。この点が一般的な作品と大きく異なります。数日から1週間かけて自らガラス生地から制作するため、どの作品も世界に一つしかありません。
「サギング」は電気炉を使用したガラス工芸技法のひとつ。丸い穴の開いた板状の型の上に板ガラスを置いて熱し、穴からガラスを落として器をつくる技法です。そのサギングと切子を組み合わせたオリジナル技法「サギング切子」から生まれたのが「uno glass」です。
猫の愛らしさを体現した「Uno neco」
最新作は「Uno neco」。グラスに化けた猫をコンセプトにしています。
日本には昔から猫にまつわる逸話が多く存在しているのをご存知でしょうか。古くは平安時代まで遡るものもあるそう。ときに妖怪、ときに縁起ものとなり、人間と深い関わり合った歴史のなかで姿かたちを変えてきた猫。
「グラスに姿を変えた猫をコンセプトにしよう」
数々の猫の逸話から着想を得て「Uno neco(うのねこ)」が誕生しました。見た目だけではなく、手に取った感触からも猫のかわいさや愛おしさを感じられます。使うほど、きっと心が安らぐことでしょう。
気分を上げてくれる「tokoba jewelry」
江戸切子小林は、ネックレス、ピアスやイヤリングなどのジュエリーも展開しています。
「江戸切子なのに、ジュエリー?」と驚く方もいるかもしれません。
「ガラスの輝きをたくさんの人と共有したい」
ジュエリーブランド「tokoba jewelry」は、4代目・昂平さんの夢を形にしたものなのです。ひとつひとつ手作業で輪郭を削り出すことから始まり、カット、磨きを経て制作しています。ガラスの美しい質感、軽やかな使い心地。宝石とは異なる魅力が人気を集めています。
カジュアルにふだん使いできるのはもちろん、大切な日に華やかさを添えるアイテムとしても大活躍するでしょう。
「日々の暮らしにガラスの放つ魅力が加わることで、毎日に彩りを添えたい」
そう願いながら作られたジュエリーは、カラーバリエーションも豊かで、思わず手に取ってみたくなるものばかりです。
代々受け継がれてきたカット技術と豊かな発想力が融合した「Uno glass」「tokoba jewelry」は、きっと疲れた日も良いことがあった日も心に彩りを添えてくれるのではないでしょうか。ぜひ、気になる作品をチェックしてみてください。