和紙の歴史、約1400年分をわかりやすく解説!発展と多様な活用

和紙の歴史、約1400年分をわかりやすく解説!発展と多様な活用

和紙は日本に古くから伝わる伝統工芸品であり、その歴史は約1400年と言われています。中国から日本に広まり、現在では壁紙やインテリア、畳にまで活用されています。

和紙について基礎知識を深めればより魅力的に感じるでしょう。そこで本記事では和紙の歴史・現在・これからの活用方法についてわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。

和紙の歴史を年表で見てみよう

和紙の歴史を年表で見てみよう

和紙が歩んだ約1400年の歴史を年表でまとめました。

年代 出来事
105年ごろ

【紙の発明】

和紙の元となる紙は紀元前2世紀頃、中国で発明されたといわれています。

中国の役人である蔡倫(さいりん)が、麻のボロきれや、樹皮などを活用して実用的な紙を作りました。

610年(飛鳥時代)

【日本へ伝播】

【和紙への発展】

日本に紙が伝わったのが610年です。

高句麗の僧である曇徴(どんちょう)が製紙法と墨を伝えたと言われています。

もともとは麻が原料でしたが、日本独自の改良が加えられ植物(コウゾやガンピ)を使った「和紙」が発展していきました。

702年(奈良時代)

【日本最古の紙】

現存する日本最古の紙は奈良県の正倉院に保管されている「美濃和紙」です。
794年~1185年(平安時代)

【貴族社会による和紙の普及】

平安時代になると貴族の間で和紙が多く使用されました。

用途としては主に、書物、手紙、懐紙、巻物などです。

みなさんがよく知っている「枕草子」「源氏物語」なども和紙が使用されています。

当時の紙は貴重な存在だったため、「古紙の抄き返し」といって、使用済みの紙をリサイクルしていたそうです。

1185年~1333年(鎌倉時代)

【武家社会による和紙の多様化】

文字の記録として使用されていた平安時代から大きく発展し、町人文化のなかでさまざまな用途で和紙が使用されるようになりました。

たとえば、障子・屏風・襖・表具・扇子・紙衣(かみこ)・傘・紙布(しふ)などです。

1868年~1912年(明治時代)

【和紙の生産低下】

明治時代に入ると日本はヨーロッパ文化を急速に取り入れていきます。

高度経済成長期とともに和紙の需要が低くなり、洋紙へと置き換わっていきます。

1989年~現在 2009年に「石州半紙」がユネスコ無形文化遺産に登録したことを機に、2014年には石州半紙を拡張し、本美濃紙や細川紙、「和紙:日本の手漉(てすき)和紙技術」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。

この3紙の特徴は、どれも原料を「楮(こうぞ)」のみ使用していることです。

参考元:日本製紙連合会 | 紙のあれこれ | 紙の歴史 | 紙の発明

参考元:美濃和紙について|外務省

参考元:和紙の変遷と未来像

参考元:「和紙:日本の手漉和紙技術」のユネスコ無形文化遺産代表一覧表への記載決定(外務大臣談話)|外務省

和紙の現在とこれからについて

和紙の現在とこれからについて

和紙の歴史を学んできましたが、現在の状況やこれからの可能性についてみていきましょう。

和紙の現在の状況

公益財団法人日本特産農産物協会の「地域特産作物(工芸作物、薬用作物及び和紙原料等)に関する資料」によると、和紙の原料となる「こうぞ」「みつまた」「とろろあおい」の生産量が減っていることがわかります。

それぞれの生産量は以下の通りです。

年代 生産量(t)
こうぞ みつまた とろろあおい
2001年 111 563 61
2006年 102 314 20
2011年 103 34 29
2016年 30 29 19
2021年 39 12 14

※こうぞとみつまたは黒皮換算計の値です。

参考元:公益財団法人日本特産農産物協会「地域特産作物(工芸作物、薬用作物及び和紙原料等)に関する資料」

 

2001年と比較すると3種類とも激減していることがわかります。主な原因としては需要の減少や担い手不足です。

伝統工芸品である和紙を守るために、文化省は「和紙を未来へ繋ぐ事業実行委員会」を設立しています。

主な活動としては和紙の原料(みつまたなど)の栽培や調査、紙すき体験、障子張り体験などです。

和紙に関連することについて知ってもらい、和紙の魅力を伝えたり、激減している担い手を見つけたりする活動しています。

和紙の新たな可能性

和紙といえば障子や襖に使用されているイメージがありますが、近年ではさまざまな場所で使用されています。

たとえば、マスキングテープ、ホテルやレストランの内装材、シューズ、宇宙服などです。また芸術分野でも国内外から注目されており、書道、浮世絵、現代美術などさまざまな分野のアーティストも和紙を利用しています。

利用用途の多い和紙は環境にも優しいことが特徴です。和紙の原料である「こうぞ」や「みつまた」は、刈り取った後もすぐに芽を出します。また一般的な紙と比べ、製造時に必要な水や化学薬品の量も非常に少なく済みます。

このように和紙は環境に優しく、長持ちする特徴があるので、より多くの場面で活用し、普及させれば持続可能な開発目標(SDGs)に貢献できるでしょう。

まとめ

まとめ

和紙は約1400年の長い歴史があります。ピーク時に比べ需要は減りましたが、近年ではマスキングテープや宇宙服などさまざまな場所で活用されています。

日本の大切な伝統工芸品であるため、約1400年という長い歴史を途絶えさせてはいけません。

本記事では和紙の歴史を簡単に紹介しましたが、和紙の魅力に少しでも気づいてもらえれば幸いです。

関連記事一覧