越後三条打刃物の魅力とは?特徴や歴史を踏まえて解説!
日本の刃物は、切れ味や耐久性、使い勝手のよさなどが評価され、海外からも注目を集めています。
その中でも、日本三大刃物産地として知られるのが、大阪府堺市・岐阜県関市・新潟県三条市です。
このうち、新潟県三条市の刃物は「越後三条打刃物」といわれ、広く流通しています。
今回は、越後三条打刃物の魅力について、特徴や歴史を踏まえて解説します。
越後三条打刃物とは
越後三条打刃物は、新潟県三条市で造られる工芸品です。
「打刃物」とは、炉で熱した軟鉄とハガネなどをハンマーで打って作る刃物で、日本刀や農具の製造にルーツを持っています。
金型を使って作る「抜刃物」とは異なり、基本的に形見本を用いて一つひとつ打ち鍛えながら成形していくため、高度な技術を要する製法です。
戦後の日本では、大量生産された刃物が広く普及しましたが、越後三条刃物はこれらとは一線を画しており、貴重な技術は現在でも熟練の職人たちによって大切に受け継がれています。
越後三条打刃物の特徴
越後三条打刃物の主な特徴は以下の2点です。
それぞれの特徴について解説します。
高度な鍛造技術
越後三条打刃物を語る上で欠かせないポイントが、高度な鍛造技術を用いて作られる点です。
鍛造技術とは、高温に熱した金属をハンマーで叩いて成形し、冷やし固める作業を繰り返す技をさします。
この作業により、金属内の隙間がなくなるためより強度が高く、摩耗に強い刃物に仕上げることが可能です。
鍛造技術を習得するには長い年月が必要であり、質の良い刃物を作るには熟練の技が求められます。
豊富なバリエーション
越前三条打刃物のルーツは、農具を作る技術にあります。
農業に不可欠な鎌や鍬(すき)」が発展した刃物であり、使用分野に合わせた形状や材質を用いる点も大きな特徴です。
こうした工夫がなされることにより、使い勝手が良く耐久性の高い刃物製造を実現しています。
職員による手作業
越後三条打刃物を造る上で重要な工程は、熟練した職人の手によって丁寧に行われます。
これは、ミクロ単位ともいえる繊細な調整をするためであり、機械にはできない仕上がりにつながる重要なポイントです。
また、職人によって仕上がりが異なり、一つひとつ個性が感じられる点も越後三条打刃物の特徴といえるでしょう。
越後三条打刃物の歴史
越後三条打刃物は、長い歴史を持つ伝統的な工芸品です。
続いては、越後三条打刃物の歴史について紐解いていきます。
越後三条打刃物の始まり
江戸時代の初め、越後地方は度重なる河川の氾濫に見舞われ、農民たちは貧しい生活を強いられていました。
当時、三条城の代官を務めていた大山清兵衛は、こうした農民たちの状況を立て直すために、副業として和釘づくりをすすめます。
江戸から招かれた職人から釘の製法を学んだ農民たちの中には、釘作りに専念する人もいました。
そして、釘作りの技術は、農作業に欠かせない鎌や鍬にも生かされます。
折しも、越後地方では石高向上を目指した新田開発が行われており、農具の需要も増えていきました。
こうして、越後三条打刃物は、農具を作るための技術として確立していきます。
鍛冶町の形成による発展
農具の需要が高まったことを受け、越後地方で生計を立てていた鍛治職人たちが現在の三条市エリアに集まり「鍛冶町」を形成しました。
寛文年間(1661〜1673年)には、鍛治を専業にしている集団が20戸ほどあったといわれており、三条市エリアにおいて刃物産業が根付いていたことがわかります。
以降、三条の鍛冶職人が作った農具は、信濃川の水運を活用して各地へ流通するようになりました。
それに伴い、商業も徐々に発展し、農具以外の生産もスタートし、「越後三条打刃物」は広く認知されることになります。
現代の越後三条打刃物
2009年4月、越後三条打刃物は、経済産業大臣から日本の伝統工芸品に指定されました。
この時指定されたアイテムは、包丁や切出小刀、鉈(なた)、鎌、ノミなど10品目に及び、越後三条打刃物が生まれるきっかけとなった和釘も含まれています。
生産が始まってから400年以上経過する現在も、越後三条打刃物は日本のみならず世界からも注目される刃物です。
また、美しい工芸としてだけでなく、現場で働く職人からも、その品質や切れ味を高く評価されています。
越後三条打刃物のお手入れ方法
越後三条打刃物は、一般家庭でも重宝される工芸品です。
高い技術で鍛錬された刃物を長く使うには、お手入れ方法にも留意する必要があります。
例えば、切れ味が悪くなったと感じた場合は、砥石を使って丁寧に研ぎましょう。
完全に切れなくなってからメンテナンスをするのではなく、定期的に整えることで長持ちさせられます。
まとめ
新潟県三条市が誇る越後三条打刃物は、和釘作りをきっかけに生まれた工芸品です。
その高い製造技術は現在にも受け継がれ、今でも品質の高い製品が生まれ続けています。
包丁はもちろん、農作業に役立つ鎌や鍬なども越後三条打刃物の人気アイテムです。
近年は、大量生産が主流となっていますが、熟練した匠たちによる技とこだわりを堪能してみてはいかがでしょうか。