東京銀器の歴史や特徴を解説!伝統工芸品の魅力を知ろう
「東京銀器」は、東京の台東区や荒川区を中心に製作されている伝統工芸品です。名前の通り、主な原材料は銀が使われており、日用品のほか贈答品や記念品などさまざまなものに用いられています。
本記事では、東京銀器の歴史や特徴について解説しています。東京銀器の魅力を知るとともに、伝統工芸品について興味を持っていただければ幸いです。
東京銀器とは
東京銀器は、主に東京都で作られている金属工芸品です。原料は銀が使われており、地金の銀の純度92.5%以上の銀が用いられています。1979年(昭和54年)に経済産業大臣より伝統的工芸品として指定され、現在では日用品だけでなく、アクセサリーや耳かきなど幅広い製品が作られています。
東京銀器の技術は、鍛金師、彫金師、仕上師といった職人たちが受け継ぎ、ほとんどの製作工程が手作業です。
東京銀器の歴史
東京銀器の歴史をひも解くと、江戸時代までさかのぼります。どのような歴史があるのか見ていきましょう。
東京銀器の起源
東京銀器の起源は、江戸時代中期(1650年頃から1750年頃)といわれています。銀師(しろがねし)と呼ばれる銀器職人や金工師などさまざまな職人が現れ、多種多様な作品が生み出されたことが東京銀器のはじまりです。
ただし、銀器の名前はさらに昔にまでさかのぼり、平安時代中期(901年~1068年)に律令の施行細則をまとめた延喜式の中に銀製の食器や酒器の名前が見られました。
東京銀器の発展
東京銀器の名前が世界に広まったきっかけは、1867年にパリで開催された万国博覧会です。パリ万国博覧会では、日本の銀製品の技術や芸術性が世界に認められ、多くの人を魅了しました。
その後、ヨーロッパの技術を導入することで、銀製品はさらなる進化を遂げ、これまでにないさまざまな表情を持つ銀製品が生まれたのです。
また戦後は東京に訪れる外国人の数も増え、とくにアメリカ人がお土産として銀製品を好んで購入していました。
現在でも愛されている銀製品
東京銀器は、1979年に経済産業大臣より伝統的工芸品に指定されました。製品としては、日用品が多いですが、その他にも置物・アクセサリー・耳かき・器物・装身具などさまざまです。また銀は無害でアレルギーも引き起こしにくいことから、ベビースプーンや菓子切などカトラリー類も作られているのが特徴です。
贈答品や記念品にも用いられることが多く、現在もなおその魅力に惹かれる人々は多くいます。
東京銀器の特徴
東京銀器の特徴は、銀特有の輝きと優美な表情です。東京銀器は、地金の銀の純度92.5%以上の銀を使用し、「鍛金」、「彫金」、「切り嵌め(きりばめ)」、「鑞付け(ろうづけ)」といった技法を用いて作られます。
その工程のほとんどは手作業であり、職人一人ひとりが生み出す独自の味が特徴のひとつです。また、銀は空気中にある硫化ガスと化学反応し、硫化現象を起こします。光沢が失われますが、硫化現象を逆に利用し、アンティーク風に仕上げ、多彩な質感を楽しめることも銀製品ならではの魅力です。
東京銀器ができるまでの工程
東京銀器の製作工程は、主に「鍛金(たんきん)」、「彫金」、「切り嵌め(きりばめ)」、「鑞付け(ろうづけ)」の4つです。東京銀器ができるまでの工程を見ていきましょう。
鍛金
鍛金は加工しやすくするために、使用する地金を加熱します。次に作品に必要な面積を測り、ハサミで円状に切ります。最後は、一枚の金属板を金づちで叩いて加工する鍛金です。
金づちで叩くと徐々に固くなるので、ガスバーナーを使って生して、また叩く作業の繰り返しです。
彫金と切り嵌め
彫金は、鏨(たがね)を使って模様を彫っていく技法です。彫りやすいように目印をつけながら、さまざまな鏨(たがね)を使って彫り進めていきます。切嵌は、地金の模様部分だけを切り抜き、他の金属にはめ込む技法です。
鑞付け(仕上げ)
仕上げる方法はいくつかあり、以下のような方法があります。
- 磨き仕上げ
- 煮込み仕上げ
- 金古美(きんふるび)仕上げ
磨き仕上げは、研磨し光沢を出す方法です。煮込み仕上げは、重曹や梅酢、大根おろしの汁などを使って、色付け・水洗いする方法です。金古美は、金古美液を地金に塗り、天日干しします。重曹などを用いて手入れしながら作り上げる方法です。
まとめ
東京銀器は、江戸時代中期に作られた金属工芸品であり、現在は東京を中心に作られています。名前の通り原料は銀を使用し、日用品から贈答品や記念品まで用いられ、製品の幅も広いです。
銀は無害で長持ちしやすいため、使い勝手も良く、優美な輝きが特徴です。現在でも多くの人が東京銀器を使用しています。ぜひ本記事を参考に、東京銀器の魅力を味わってください。