伊勢崎絣とは?特徴や歴史を解説!
群馬県伊勢崎市エリアで古くから伝わる伝統産業の一つとして、伊勢崎絣が挙げられます。
近年は、着物の生地だけでなくネクタイや暖簾などさまざまなアイテムに活用されているので、耳にしたことがある人も多いでしょう。
今回は、伊勢崎絣にスポットを当てて、特徴や歴史を詳しく解説します。
伊勢崎絣とは
伊勢崎絣とは、群馬県伊勢崎市エリアで生産される平織物です。
もともと、伊勢崎市周辺は養蚕業が盛んに行われている地域であり、伊勢崎絣の歴史も1200年以上前に遡るといわれています。
伊勢崎絣の正式名称は「伊勢崎銘仙」といい、明治〜昭和の女性が着る普段着として人気がありました。
現在も、レトロでポップなデザインに惹かれる若者が多く、「アンティーク銘仙」といわれ注目されています。
伊勢崎絣の特徴
伊勢崎絣には、他の絣にはみられない特徴がいくつかあります。
その中から、3つの特徴を解説します。
伊勢崎絣の定義である三つの技法
伊勢崎絣と定義される上で欠かせないポイントが、「括り」「板締め」「型紙捺染加工」の3つです。
括りとは、染色をする段階で原材料の糸をビニール紐などで括り、染料の浸透具合を調節する技法を指します。
括り加減がデザインに大きく影響するため、高度な技術が求められる技法です。
板締めは、模様が彫られた厚板に糸を挟んでから染色する技法を表します。
板の凸部は染まらないため、白い模様が現れるのが特徴です。
特に、細かい柄を表現する際に用いられます。
そして、伊勢崎絣の独特な表現である曲線を表すのに用いられる技法が、型紙捺染加工です。
伊勢崎絣はシンプルな絣柄から細かい柄模様まで多岐にわたり、これらの技法を駆使して手作業で仕上げられています。
細かく決められている工程
伊勢崎絣では、染め方だけでなく織り方や糸の材質なども含めて10以上の工程が細かく決められています。
例えば、織る前に染める「先染め」であることや、平織りで仕上げる点も伊勢崎絣を定義するポイントの一つです。
また、製造される地域も、群馬県伊勢崎市や佐波郡境町など、一部のエリアに限られています。
伊勢崎絣の歴史
続いては、伊勢崎絣の歴史について解説します。
1200年以上前に遡る起源
伊勢崎絣の起源は、1200年以上前に遡るといわれています。
元来、伊勢崎市エリアは養蚕業が盛んな地域であり、古くから織物を生業とする人が多くいました。
日本書紀において、粗雑な絹織物を朝廷に献上した記述があり、実際、6世紀に作られた古墳からは、麻を原料とする織物が発掘されています。
その他、伊勢崎市には、織物の神を祀ったと伝えられる倭文神社もあり、古来より織物の文化が根付いていることがわかるでしょう。
商品化が進んだ江戸時代
伊勢崎絣が商品として世に出回るようになったのは江戸時代のことです。
この頃になると、伊勢崎絣のルーツともいえる伊勢崎縞や伊勢崎太織といった群馬県を代表する織物が盛んに作られるようになりました。
素朴な雰囲気でありながら、粋な印象のある絣模様や縞模様は瞬く間に注目を集めます。
そして、需要の高まりに伴い、農民の中にも機織りをする人が増えた他、仕上げを担当する本機屋が登場したのを機に、伊勢崎絣はますます浸透していくこととなりました。
伊勢崎絣の黄金時代
明治時代の後半には、動力式の機織が登場します。
これにより、従来すべて手作業で行っていた機織りの一部が工場化され、一気に生産量が伸びました。
明治から昭和にかけて、女性たちは普段着に着物を着る習慣があり、多くの人が伊勢崎絣を選んでいたといわれています。
まさしく、伊勢崎絣の黄金時代といえるでしょう。
現代の伊勢崎絣
戦後になると、日本人女性の服装が洋風化します。
これにより、伊勢崎絣を含む和服産業が衰退し始め、黄金時代の勢いは下火になりました。
また、生産者の高齢化が進み、深刻な高齢化問題により伊勢崎絣も危機的な状況を迎えます。
こうした難題を解決し、古くから続く大切な伝統を後世に伝えるべく、新しい技術の開発や後継者の育成などの活動が積極的に行われるようになりました。
例えば、現存する伊勢崎絣を使ったファッションショーが開催される他、古くなった生地をリメイクしてバッグや名刺入れなどに仕立てるといった工夫がなされています。
まとめ
伊勢崎絣は、群馬県伊勢崎市に古くから伝わる伝統工芸品です。
1200年以上前にルーツを持ち、江戸時代には現在伝わっている形が定着しました。
伊勢崎絣の黄金時代と呼ばれる明治から昭和初期にかけては、和装が日常だったことから日本中の女性たちが着用していたほど人気の着物でした。
戦後になり洋装が普通となりましたが、現在でも当時の技術を継承して高く評価されています。
また、近年はアンティークなデザインも若者の間で流行しており、伊勢崎絣の模様も斬新なデザインとして注目されているようです。
着物だけでなく、テーブルクロスや暖簾、ネクタイなど日用品に活用するケースも増えており、現代にマッチする加工品はお土産にも適しています。