わざ もの ひとをcasanetsugumu-秋田の大きな屋根を目指して

合同会社casane tsugumu(かさねつぐむ)の会社ロゴは、三本の線が左右から組み合わさって、屋根のような形になっており、その屋根の下に社名が明記されています。丁寧に紡いだ糸を重ね、屋根を重ねたイエ(家)、地域の作り手や生産者の皆さん、商品に触れる使い手の方々、すべての人が大きな屋根の下に集う、「わざ もの ひと」を「かさねてつむぐ」と言うコンセプトを現しています。地元に根付く地産レーベル・デザインカンパニーはどんな新しい世界を紡いでいるのでしょうか。

 

わざ-伝わる手のぬくもり

「北東北の見世」と謳っているように、伝統工芸や地場産業など、その地域に既にあるモノ・ヒト・コトを発掘し、丁寧に関わりながら、地域の作り手とともに、新しい商品を作り出すのが、casane tsugumuのこだわりです。

そのこだわりのもと、作り出された一品をご紹介しましょう。

国指定伝統的工芸品大館曲げわっぱ「Wa MIRROR」

「わっぱ」と言うのは、スギやヒノキなどの薄板を曲げて作られる箱のことです。お弁当箱や小物入れなど、お土産としても有名ですが、casanetsumuguは、この技術を駆使して、世界に一つだけの鏡を作り出しました。それが「Wa MIRROR」です。

国指定伝統的工芸品「大館曲げわっぱ」の原材料は、もともとは天然秋田杉と呼ばれる樹齢200年を超えるものでした。

しかし、平成25年に天然秋田杉の国有林からの供給が保全のためなくなります。しばらくは各社がストックしている天然秋田杉で製造されていましたが、昨今は高樹齢材と呼ばれる樹齢100年以上、120年以上の秋田杉を材料として製造されています。

大館曲げわっぱに使われる柾目(まさめ)材は木材の中でも、マグロに例えるなら大トロのような部材でその中でも、木目が均一に真っ直ぐ通った、非常に貴重な材料を使用しています。「Wa MIRROR]は、その柾目の美しさを感じていただきたい商品です。

鏡面の静謐さを包み込むように、柾目が美しい曲線を描いており、鏡に映る姿ごと暖かく包み込んでくれるようです。もちろん、釘などは使用せずに組み上げられているのも、持つ手に優しさを感じます。

仕上げは蜜蝋と植物性油で、杉の香りもそのままに、木の経年変化や艶も楽しめ、年を重ねるごとに愛おしさの増す大切な「モノ」になる様も楽しめる一品です。

国指定伝統的工芸品 樺(かば)細工「YATSU」CANISTER

明治9年創業の樺細工製造元「八柳(やつやなぎ)」と2020年に立ち上げた共同ブランドです。

樺細工(かばざいく)は秋田県仙北市角館町に伝えられ、武士の手内職として広まった、山桜の樹皮で作られる世界でも類を見ない樹皮工芸、国指定伝統的工芸品です。

代々受け継がれてきたその技術は、材料となる山桜の樹木を採取する際も枯らすことなく採取し、木々の生命を繋ぎます。

樺細工は湿気を避け、乾燥を防ぐ特性があり、古くは薬入れなどに用いられてきました。昭和期以降の主力製品となった茶筒などは、日々手に触れることで山桜は光沢を増し、独特の艶を保ちます。愛でる心も大切に受け継いでいくのが伝統的工芸品の最大の魅力です。

「YATSU」の製品は、伝統的な技法や作り方を継承しながら、現代のライフスタイルを意識した商品づくりを行っており、このCANISTERはコーヒー豆用にサイズやプロポーションをリデザインし、桜皮の中でも素朴で荒々しい美しさを持つ希少材「霜降皮」を用いてつくられた一品。

もの、ひと-秋田への扉を開く

casanetsumuguのこだわりは商品プロデュースにとどまらず、県外から、或いは海外から秋田への道を拓くことにもあります。

響屋大曲煙火株式会社海外向け企業案内制作

1894年(明治27年)創業の響屋大曲煙火株式会社は、全国花火競技大会「大曲の花火」で有名な“花火の街 大曲(おおまがり)”において、打ち上げ花火等の製造・販売、打ち上げを担う会社です。casane tsumuguでは、こちらの会社の海外向け英語版企業案内の制作なども手がけています。

世界の打ち上げ花火生産量のシェアは中国が8.9割と言われている中で、伝統と高い技術を誇る大曲の花火を「世界へ繋ぎたい。」そんな響屋大曲煙火の想いを受けて、海外のバイヤーが手に取るこの冊子には、日本の花火の魅力と品質、更に最高のビジュアルを求めて行われる製造工程や原材料、製法や製造設備など、花火製造の一連を取材し、一冊に納められています。白い、シンプルな装丁の中に、技術を磨き、継承していく職人さんたちの熱い魂が込められています。

casane tsumuguが繋ぐ未来

2011年3月11日。東北を激震が襲いました。

秋田が育んできた「わざ、ひと、もの」を繋いで行く道は、再建への道ともなりました。その時、繋いだものは、「TOUHOKU Sake Forum」と言うイベントとして形になりました。

これは、秋⽥の蔵元集団「NEXT FIVE」が主催し、東北6県の“地酒”にこだわり酒造りを⾏う、全32の酒蔵および蔵元に対して協⼒を呼びかけ、東京都内で開催された東⽇本⼤震災被災地⽀援イベントです。

casane tsumuguは、企画・PR・コーディネート・運営・デザインディレクションまでをトータルで担当しました。

このイベントでは、東北6県全32蔵の日本酒のテイスティングと並⾏しながら、東北6県の蔵元自身が、メディアではなかなか報道されない現状と今後の構想を自身の⾔葉で伝えました。主催の「NEXT FIVE」も裏方に回り、1⽇で合計7本のトークイベントを実施。メディアにも数多く取り上げられるなど、意義深いイベントとなりました。

北東北の見世として

casane tsumuguの想い。それは、秋田県に限らず、北東北地域が持つ持続可能な地域資産と言う宝物を発掘し、その宝物の価値を最適化していくこと。そして、一番大切なことは、その発掘した宝物に人々の想いを重ね、未来へと繋げていくことです。

「モノ・ヒト・コトを丁寧に見つめ

地域固有の普遍的な魅力を拾い上げ

ときに文脈の読み替えやカタチを変えながら

モノゴトの根底にある仕組ごとデザインする」

彼らの想いが北東北の未来を紡いでいき、いつの間にかその「見世」の棚一杯に商品が並んでいくのです。それがcasanetsumuguの担う、「北東北の見世」と言う役割なのです。

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