駿河漆器に感じる歴史とモダン。多彩な魅力と特徴を紹介!

駿河漆器に感じる歴史とモダン。多彩な魅力と特徴を紹介!

駿河漆器をご存じでしょうか?

駿河漆器の駿河は、安倍川から東側の伊豆を除いた地域で、現在の静岡県静岡市あたりになり、この地域で作られている漆器のことをいいます。

駿河漆器の特徴と魅力は、何といっても「変わり塗り」です。

変わり塗りは多様なニーズに応えるため生み出された技法で、現代の使い方に適したよりモダンなデザインになっています。

この記事では、駿河漆器の歴史や特徴・魅力を解説しています。

また、漆生産の現状と、漆の地産地消について紹介していますので参考にして頂ければ幸いです。

駿河漆器とは

駿河漆器とは

駿河漆器は、「駿河」の名の通り静岡県中部で作られている伝統的な漆器です。

戦国武将の今川氏の時代から作られており、江戸時代に発展しました。

駿河漆器の特徴は「変わり塗り」で、常に新しい塗りを創造し続け、独特なデザインが生み出されてきました。

静岡県郷土工芸品に指定されています。

駿河漆器の歴史を探る

駿河漆器の歴史を探る

駿河漆器が定着したのは江戸時代ですが、それ以前の歴史も含めご紹介します。

歴史は弥生時代に遡る

駿河漆器の生産されている静岡市には、弥生時代の遺跡「登呂遺跡」があり、漆が塗られた琴が出土しています。

この琴は杉で作られ全面に黒漆と朱漆が二重に塗られており、祭祀に使用されていたようです。

駿河で漆器が作られていた歴史は古く、今川氏が活躍した室町・戦国時代の文献に「御器屋町(現在の葵区西草深町辺り)に中川大工が中川椀というものを作っていた」と記されています。

駿河漆器の発展は静岡浅間神社から

駿河漆器が発展したのは、静岡浅間神社の造営のために全国から腕利きの漆職人を集め、総漆塗りの拝殿を作ったことからです。

駿河の気候が漆塗りに適したことから浅間神社の拝殿を完成させた後も漆職人たちは定住し、土地の人達にも漆工技術を教えました。

その当時は竹籠に漆を施した日用品を作っていましたが、江戸幕府の商業政策のもとで技術も向上し、大名の参勤交代の土産として全国に広がっていきました。

駿河漆器の移り変わり

開国後は、慶応3年(1867年)に開催された第2回パリ万博、明治6年(1873年)のウィーン万博に出品し、日本ブームの波に乗り駿河漆器はヨーロッパ各国に広がります。

明治後期には輸出漆器の大半を駿河漆器が占めていましたが、質の良くないものを大量生産したため評判を落としたことや、戦争などの要因も加わり一時衰退しました。

しかし、一部の職人さんたちが結束奮闘し、変わり塗りという技法を開発。品質の高い駿河漆器を作りつづけ伝統を支えました。

現代は「不易流行」をコンセプトに、はっと驚くような漆器へと進化を続けています。

駿河漆器の特徴・変わり塗り

駿河漆器の特徴・変わり塗り

駿河漆器の特徴は、なんといっても「変わり塗り」です。

高い技術を持った職人が多かったからか、一般的な漆塗りから様々な技術を取り入れ

変わり塗り」を開発しました。

明治から大正にかけて、錫梨子地塗(すずなしじぬり)金剛石目塗(こんごういしめぬり)が開発され、その後、染箔塗(せんぱくぬり)、羽衣塗(はごろもぬり)、硬化彩漆法(こうかさいしつほう)、浮島塗(うきしまぬり)、蜻蛉塗(せいれいぬり)、紅輝塗(こうきぬり)など魅力的な変わり塗が開発されました。

漆器だけでなく、家具や仏具、塗下駄などにも使われています。

駿河漆器の多彩な魅力

変わり塗の手法が、駿河漆器の特徴であると共に、その魅力でもあります。

伝統的な手法と現代的にアレンジした作品をご紹介します。

漆塗り粉貝箸

漆を塗った木地に細かく砕いたアワビの貝殻をちりばめ、その上に漆を重ねて塗った後、乾かしてから砥石で研ぎだします。

研いでいくとアワビのキラキラした貝が出てきて、大変美しい模様です。

ガラスに漆を塗る

静岡県の無形文化財に指定されている金剛石目塗の技法を使って、漆が定着しないはずのガラスに漆を塗りました。

素地に安倍川で採れる良質の砂と漆を使って、とても硬く丈夫な下地層を作り、その上に漆を塗り重ねることでガラスと漆の融合した美しい器が完成しました。

駿河漆器の文具

蒔絵を施した駿河漆器の卓上名刺入れなどは外国人に人気があります。

東京五輪・パラリンピックで、記念品の一つとして駿河漆器のボールペンが国家元首ら約1200人に贈られました。

駿河漆器の購入方法

駿河漆器の購入方法

駿河漆器は、静岡市の工芸品が揃うネットショップ「駿河トラッド直売店」をはじめ、各種ネットショップや、JR静岡駅ASTY西館内「駿府楽市」で購入できます。

駿河漆器の扱い方

漆というと、扱いが難しいように思いますが、酸、アルカリ、塩分、アルコールなどにも強く、耐水性や断熱性、防腐性もあります。

洗う時もスポンジと中性洗剤で洗えるので、日常でも使うことができます。

ただし、たわしなどでの擦り洗いや食洗器を使うなどはできません。

駿河漆器を支える「漆の地産地消」への取り組み

漆器は高価で扱いが面倒というイメージから失費離れが進み、国内でのウルシの栽培と漆生産は激減しました。

その結果、漆の約97%を中国産に頼っています。

静岡県の国宝・重要文化財の漆塗りの建造物数は、京都に並び全国で2番目の多さで、修復には国産の漆を使わなくてはなりませんが、国内での漆の生産の供給不足から、静岡の中山間地域で漆の栽培を始めました。

2019年にスタートしたばかりの「ウルシの木を育てるプロジェクト」ですが、静岡産漆の地産地消を目指して動いています。

まとめ

まとめ

駿河漆器は江戸時代に大きく発展し、参勤交代の大名のお土産品として全国に広がりました。

漆器が高級品というイメージや手入れが難しそうだという思い込みもあり、漆器離れが起こりますが、伝統的な変わり塗りの技法を生かし、現代の生活にマッチしたデザインの漆器も数多く作っています。

伝統とモダンを合わせ持つ駿河漆器で、日常に彩を添えてみてはいかがでしょうか。

出典元
駿河漆器|静岡郷土工芸品振興会
駿河漆器:静岡市公式ホームページ

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