漆器町「黒江」の町並みをめぐる!歴史や見どころを紹介
和歌山県海南市に位置する「黒江」は、紀州漆器の里として知られるエリアです。
今回は、長い歴史を持つ黒江の町並みや見どころと併せて、紀州漆器についてもご紹介します。
漆器町「黒江」とは
漆器町「黒江」は、和歌山県の北西部にある海南市の地名です。
人口2,300人ほどの小さな町ですが、古くから漆器の生産地として知名度が高く、現在も伝統工芸士が技術を継承しています。
ここでは、黒江の歴史や町並みについて解説します。
黒江の歴史
黒江は、室町時代より会津・越前・山中に並ぶ漆器の四大生産地のひとつとして知られていました。
江戸時代に入ると、紀州藩により保護され発展していきます。
もともと入り江だった黒江の町ですが、漆器づくりが盛んになったことから干潟が埋め立てられ、現在の町並みが形成されました。
紀州藩からの保護は明治時代に終わったため、紀州漆器は衰退の危機に陥ります。
これを救ったのが1870年(明治3年)に開始された貿易です。
その結果、1883年(明治16年)には海外へ輸出される日本の漆器のうち、紀州漆器が半数以上をシェアするようになりました。
こうした背景もあり、当時は漆器を「KUROE」と訳していたようです。
昭和時代には天道塗やシルク塗、錦光塗などさまざまな手法が考案され、紀州漆器の技術はますます向上します。
そして、1949年(昭和24年)に黒江は国の重要漆工業団地として指定を受けました。
また、1978年(昭和53年)には紀州漆器が伝統工芸品として認定され、現在もなお貴重な技術が継承されています。
黒江の町並み
黒江の町は、川端通りと呼ばれるエリアに位置しています。
長さ230m幅12mの通りには、趣ある紀州連子格子の家々が規則正しく軒を連ね、その姿はまるで「のこぎりの歯」のようです。
これらの家は、かつて漆器職人たちの住居兼工房や問屋でした。
室町時代から脈々と続くこの町には、現在古民家カフェや漆器店などがあり多くの観光客を楽しませています。
紀州漆器の特徴
黒江の町を語る上で欠かせない特産が紀州漆器です。
紀州漆器は非常に丈夫で破損しにくいことから、気軽な日用品として庶民に親しまれています。
また、表面に施された朱塗りの下には黒塗りが施されており、あえて下地を浮き出させた模様も特徴的です。
参照:和歌山県公式観光サイト
漆器町「黒江」の見どころ
黒江の町には、さまざまな観光名所があります。
続いては、黒江の主な見どころを3箇所紹介します。
うるわし館
うるわし館は、正式名称を「紀州漆器伝統産業会館」といいい、貴重な紀州漆器の制作道具や資料を展示しています。
また、漆芸作品の展示販売スペースも常設されており、観光客が多く訪れる場所です。
土日限定で開催される蒔絵体験では、実際に丸盆や小判盆、弁当箱のいずれかに伝統の技を施すことができます。
紀州漆器について詳しく知りたい方は、ぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。
参照:うるわし館
黒江ぬりもの館
黒江ぬりもの館は、地元の食材を中心としたランチやスウィーツを楽しめる古民家カフェです。
160年前の塗師(ぬし)職人が暮らしていた家をリノベーションした建物で、当時の空気を感じられる点も魅力といえるでしょう。
もちろん料理は紀州漆器に盛り付けられており、その魅力を存分に体感できます。
店内には、漆芸作家や問屋の漆器を販売するスペースも設けられているので、実際に使用感を確認した上で購入できる点もポイントです。
参照:黒江ぬりもの館
池庄漆器店
池庄漆器店は、1876年に漆器卸問屋として創業した店です。
築220年を超える実店舗は、国の登録有形文化財に指定されており一部が公開されています。
紀州漆器が大きく栄えた時代の空気を感じながら、紀州漆器の味わいを堪能できる場所です。
現在の店主は5代目であり、黒江の町並みを生かした景観づくり協定(黒江JAPAN)の会長も務めておられます。
参照:池庄漆器店
黒牛茶屋
黒牛茶屋は、株式会社名手酒造が直営する酒店です。
黒江の銘酒「純米酒 黒牛」をはじめとするさまざまなお酒を取り扱っているほか、利き酒体験もできます。
名手酒造で使用している仕込み水は、蔵内にある井戸から汲み上げたものです。
この井戸は、紀州名水のひとつである「黒牛の水」が湧き出る中言神社と同じ水脈であり、紀州名水50選「万葉黒牛の水」として大切に守られています。
店内は、黒江の伝統産業である酒作りの道具でデザインされており、味わいのある空間を楽しめる点も魅力です。
参照:株式会社名手酒造店
まとめ
今回は漆器町として知られる黒江の町並みや見どころを紹介しました。
黒江は、400年以上にわたり継承される紀州漆器が生まれた当時の空気を今に伝える町です。
のこぎりの歯に例えられる整然とした町並みは健在であり、賑やかだった時代を感じられるでしょう。
また、リノベーションされた古き良き建物は、地元の素材を使った食事や特産を楽しめる店舗に生まれ変わっています。
鎌倉時代から続く伝統と現代の融合を体感できるエリアとしてもおすすめです。