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志波彦神社・鹽竈神社|陸奥国一宮の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド

志波彦神社・鹽竈神社|陸奥国一宮の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド

宮城県塩竈市の一森山に鎮座する志波彦神社・鹽竈神社は、陸奥国一宮として千年以上の歴史を誇る格式高い神社です。国指定重要文化財の社殿群と天然記念物の鹽竈桜、そして松島湾を望む絶景が織りなす神域は、多くの参拝者を魅了し続けています。

志波彦神社・鹽竈神社の概要・基本情報

志波彦神社・鹽竈神社|陸奥国一宮の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド

志波彦神社・鹽竈神社は、宮城県塩竈市にある神社で、志波彦神社と鹽竈神社の二社が同一境内に鎮座しています。元は当地には鹽竈神社のみが鎮座していましたが、明治時代に志波彦神社が境内に遷座し、現在は正式名称を「志波彦神社・鹽竈神社」とし1つの法人となっています。

鹽竈神社は式外社、陸奥国一宮で、志波彦神社は式内社(名神大社)です。両社合わせて旧社格は国幣中社で、現在は神社本庁の別表神社となっています。境内面積は約3万平方メートルの広大な敷地を誇り、塩竈市と松島湾の島々を見晴らす高台に位置しています。

歴史と由来

鹽竈神社は、武甕槌命・経津主神が東北を平定した際に両神を先導した塩土老翁神がこの地に留まり、現地の人々に製塩を教えたことに始まると伝えられています。創建年代は明確ではありませんが、奈良時代より前に創建されたと考えられています。

弘仁11年(820年)に撰進された『弘仁式』の『主税式』では「鹽竈神を祭る料壹萬束」と記載され、祭祀料10,000束を国家から受けており、これが正史における鹽竈神社の初見と言われています。平安時代から朝廷の特別な崇敬を受け、東北鎮護の神として重要な役割を担ってきました。

一方、志波彦神社は平安時代の『延喜式神名帳』に記載される式内社で、1874年(明治7年)に現在の地に遷座されました。それまでは岩切村冠川のほとりに鎮座していましたが、明治政府の政策により鹽竈神社境内に移されて現在に至ります。

江戸時代には仙台藩初代藩主伊達政宗をはじめとする歴代藩主の篤い信仰を受け、慶長12年(1607年)に政宗により新しい社殿が完成し、寛文3年(1663年)には四代藩主伊達綱村の時代に社殿の造営が行われました。現在の社殿は元禄8年(1695年)に綱村が造替に着工し、五代吉村の宝永元年(1704年)に完成したものです。

祭神とご利益

鹽竈神社には三柱の神が祀られています。海の守護神であり人々に製塩の方法を伝授した鹽土老翁神(シオツチノオジノカミ)は別宮に祀られています。戦の神である武甕槌神(タケミカヅチノカミ)と経津主神(フツヌシノカミ)はそれぞれ左宮と右宮に祀られています。

塩土老翁神は謎の多い神ですが、海や塩の神格化と考えられています。神武天皇や山幸彦を導いたことから、航海安全・交通安全の神徳を持つものとしても見られ、また安産祈願の神でもあります。武甕槌神と経津主神は東北を平定するために派遣された朝廷の神として、武運長久や国家安泰のご利益があるとされています。

志波彦神社は、塩竈地域の守護神でもある農耕の神・志波彦神(シワヒコノカミ)を祀っています。農業守護、国土開発、殖産興業の神として信仰され、地域の発展と繁栄を願う人々の信仰を集めています。

志波彦神社・鹽竈神社の見どころ・特徴

志波彦神社・鹽竈神社|陸奥国一宮の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド

志波彦神社・鹽竈神社は、歴史的建造物と自然の美しさが調和した境内で、多くの見どころを有しています。国指定重要文化財の社殿群をはじめ、四季折々の花々や松島湾の絶景など、訪れる人々を魅了する要素が数多く存在します。

建造物・構造の魅力

2012年、本殿や拝殿、石鳥居などが国の重要文化財の指定を受けました。1704年に建立された本殿は、背面より全面が長い非対称の傾斜屋根を持つ流造(ながれづくり)という建築様式で建てられています。

最も特徴的なのは、全国的にも珍しい「三本殿二拝殿」の構造です。鹽竈神社は別宮・左宮・右宮の三つの本殿を持ち、それらに対して二つの拝殿が配置されています。本殿は素木造檜皮葺の三間社流造りですが、拝殿は朱漆塗銅板葺入母屋造となっており、異なる建築様式の対比が見事な調和を創出しています。

志波彦神社の黒と朱で塗られた豪華な本殿は、1938年に建て直されたものです。鹽竈神社の古式ゆかしい建築とは対照的に、華やかな装飾が施された美しい社殿となっています。

参拝者は、両脇に杉の木立が鬱蒼と茂り、石灯籠が立ち並ぶ202段の石段を登って社殿に向かいます。階段の上にそびえる重厚な随神門(1700年代建造)をくぐると神社の中心部にたどり着きます。この表参道は「男坂」とも呼ばれ、石段を上ることでパワーが付くと言われています。

境内には文治3年(1187年)に藤原忠衡が寄進したとされる文治神燈があり、松尾芭蕉も『奥の細道』でその美しさに感銘を受けたと記されています。また、境内各所に表情豊かな狛犬が配置されており、それぞれ異なる特徴を持っています。

自然・景観の美しさ

鹽竈神社境内には、国の天然記念物に指定されている塩竈桜(シオガマザクラ)があり、4月下旬頃になるとふんわりとした丸いかたちの薄桃色の花を咲かせます。この鹽竈桜は、他では見ることのできない貴重な品種で、毎年多くの人々が花見に訪れます。

神社の敷地内にはソメイヨシノを始め数十種類もの桜が植えられており、春にはお花見の名所にもなります。約40品種300本の桜が植えられ、春には境内全体が薄紅色に染まります。春には日没後に桜がライトアップされ、幻想的な夜桜を楽しむことができます。

境内からは松島湾の絶景を望むことができ、特に志波彦神社前からの眺めは格別です。この湾は古くから「千賀の浦」と呼ばれ、平安時代の歌枕として数多くの和歌に詠まれてきました。晴れた日には松島や遠く金華山まで見渡すことができ、先人と同じような感動を味わうことができます。

境内には日本庭園も整備されており、四季折々の美しさを見せています。秋には大規模な菊花展が開催され、丹精込めて育てられた菊の花が境内を彩ります。

文化財・重要な所蔵品

境内にある鹽竈神社博物館には、約5000点の貴重な文化財が収蔵されています。その代表的な物として挙げられるのは、国指定重要文化財の「太刀:銘 来国光」及び同「太刀:銘 雲生」です。博物館では、この2振に加えて、江戸時代に藩主・伊達氏によって奉納された太刀35振(いずれも宮城県指定重要文化財)も収蔵しています。

藩主による鹽竈神社への太刀奉納は慣例で、治世の節目に行われました。いずれも華麗な糸巻太刀拵で、作刀は藩お抱えの刀工が行いました。太刀の奉納記録は39振あり、このうち35振が現存し、宮城県の有形文化財に指定されています。

博物館2階では製塩業や漁業に関係する資料が展示されており、主祭神である塩土老翁神にちなんだ塩の歴史を学ぶことができます。また、江戸時代から明治時代にかけての書物や版画なども数多く所蔵されており、当時の神輿行列や祭りの様子が描かれているものもあります。

境内には林子平が考案した日時計(レプリカ)や、長崎から持ち帰った蝋梅、北限地帯の老大木として貴重な多羅葉など、珍しい植物も見ることができます。また、運が良ければ献魚台にまぐろなどが丸ごと奉納されているのに出会えることもあります。

参拝・拝観案内

志波彦神社・鹽竈神社|陸奥国一宮の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド

志波彦神社・鹽竈神社では、二つの神社が同一境内に鎮座する特殊な形態のため、それぞれの神社への参拝方法を理解しておくことが大切です。また、年間を通じて多彩な祭事が執り行われ、季節ごとに異なる魅力を楽しむことができます。

参拝作法とマナー

一般的な神社参拝の作法に従い、鳥居をくぐる際は一礼し、参道の中央を避けて歩きます。手水舎で心身を清めた後、拝殿前で二拝二拍手一拝の作法で参拝します。

特に注意すべき点は、鹽竈神社の主祭神である塩土老翁神は別宮に祀られていることです。正面の拝殿は左宮(武甕槌神)・右宮(経津主神)となっており、主祭神への参拝は唐門をくぐった右側の別宮で行います。「別宮」は「特別な・スペシャル」の意味の別であるため、別宮からの参拝がおすすめです。

志波彦神社は鹽竈神社境内の東側に位置しており、こちらも合わせて参拝することで、より充実したご利益を得られるとされています。両社とも撮影は可能ですが、神聖な場所であることを念頭に、他の参拝者への配慮を忘れずに行いましょう。

年中行事・季節のイベント

鹽竈神社と志波彦神社では、年間を通していくつかのお祭りが開催されます。春には日没後に桜がライトアップされ、「帆手祭(ほてまつり) 」では16人の男たちが重さ1トンの神輿を担いで202段の石段を下ります。夏の「みなと祭」では、両神社の神輿が龍や鳳凰を模した華やかな船に乗せられ、松島湾を巡幸します。

春の主要行事として、3月に帆手祭、4月に花祭が開催されます。帆手祭は重さ250貫(約1t)の神輿を若者16人が担ぎ、鹽竈神社の参道・表坂を一気に下り、さらに市内を勢いよく御神幸する勇壮な祭りです。約300年前、火伏祭として町内の厄除けと繁栄を祈願して始まりました。花祭は境内の桜が満開の時期に行われ、華やかな神輿渡御で春の訪れを祝います。

夏の最大行事は7月の塩竈みなと祭で、日本三大船祭の一つに数えられています。塩竈みなと祭の際には、鹽竈神社が祭りの出発点となり、志波彦神社・鹽竈神社の神輿が塩竈市内を練り歩き、御座船を始め約100隻の船を従えて松島湾を巡幸します。前夜祭では花火大会も開催され、多くの観光客で賑わいます。

製塩法を伝えたとされる鹽土老翁神を祀る、鹽竈神社の末社・御釜神社で行われる古代製塩の神事が7月4日から6日にかけて行われます。7月4日に、花渕浜でホンダワラ(海藻)を刈り取る神事が行われ、5日に神釜の水替神事、6日に古式にのっとり藻塩焼神事と御釜神社例祭が斎行されます。この藻塩焼神事は宮城県無形民俗文化財に指定されており、同種の神事としては日本で唯一現在でも行われているものです。

秋には11月23日に初穂曳(はつほひき)が行われ、本殿の前の広場が豊穣と大漁に感謝して捧げられた米俵や巨大な魚、野菜で埋め尽くされます。また、秋には大規模な菊花展が開催され、境内が美しい菊の花で彩られます。

冬には2月上旬に節分祭が開催され、邪気を祓うとされる豆まきが行われます。家庭でお祀りをしていた前の神符や門松、お正月飾りなどを焼納するお焚き上げ神事も行われ、勢いよく燃える火とともに神々が神の国へ昇るという勇壮な、正月神送りの神事です。その火にあたると、一年間、無病息災で家業繁栄するといわれています。

御朱印・お守り情報

志波彦神社・鹽竈神社では、両社それぞれの御朱印をいただくことができます。御朱印所は境内の授与所にあり、通常の参拝時間内であれば対応していただけます。初穂料は各300円程度となっています。

お守りについては、主祭神の塩土老翁神にちなんだ安産守護、航海安全、交通安全のお守りが特に人気です。また、志波彦神社の農業守護、国土開発のお守りも授与されています。鹽竈桜をモチーフにしたお守りや、塩にちなんだ清めの塩なども用意されています。

境内では、鳩豆も販売されており、多くの鳩が生息する境内で鳩への餌やり体験も楽しめます。お守りや御朱印の詳細については、事前に神社へお問い合わせいただくか、公式サイトをご確認ください。

アクセス・利用情報

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志波彦神社・鹽竈神社は宮城県塩竈市の中心部に位置し、仙台市内からも比較的アクセスしやすい立地にあります。公共交通機関、自家用車ともに利用可能で、参拝者のニーズに応じた交通手段を選択できます。

交通アクセス

電車でのアクセスは、JR仙石線「本塩釜駅」または「西塩釜駅」が最寄り駅となります。本塩釜駅からは徒歩約15分、西塩釜駅からは徒歩約10分で到着します。仙台駅からは仙石線で約25分とアクセスが良好です。初詣時には、仙石線・東北本線とも深夜から早朝にかけて臨時列車が運行されます。

また、JR東北本線「塩釜駅」からも徒歩約20分でアクセス可能です。こちらは東北本線沿線からのアクセスに便利です。

自家用車でのアクセスは、三陸自動車道「利府中IC」から約10分、または仙台東部道路「仙台港北IC」から約15分となります。東北自動車道からは「大和IC」経由で約30分程度です。

バスでのアクセスも可能で、宮城交通の路線バスが塩竈市内各地から運行されています。「一森山」バス停下車すぐとなっており、バスでの参拝も便利です。

拝観時間・料金・駐車場情報

境内への参拝は年中無休で、基本的に24時間可能です。ただし、夜間の参拝は照明が限られるため、日中の参拝をおすすめします。

拝観は無料です。ただし、鹽竈神社博物館は入館有料となっています。博物館の入館料は一般200円・中高校生150円・小学生80円です。開館時間は季節により異なり、4月〜9月は8:30〜17:00、2・3・10・11月は8:30〜16:30、1・12月は8:30〜16:00となっています。博物館は原則無休ですが、展示替えなどで臨時休館する場合があります。

境内の東側から北側にかけて参拝者専用の無料駐車場が4か所(第1・第2・第3・バス)があり、合計300台収容可能です。大型バスでの参拝にも対応しており、団体での参拝も可能です。ただし、正月三が日や桜の時期、祭礼時などは駐車場が混雑するため、公共交通機関の利用をおすすめします。

境内にはバリアフリー対応の参拝ルートも整備されており、車椅子での参拝も可能です。ただし、表参道の202段の石段は車椅子での通行ができないため、東側の駐車場から境内に入る迂回ルートをご利用ください。

神社では結婚式や各種祈祷も受け付けており、詳細については事前にお問い合わせが必要です。また、団体での参拝や特別な行事への参加を希望される場合も、事前の連絡をおすすめします。

<住所> 〒985-8510 宮城県塩竈市一森山1-1

参照サイト

・志波彦神社・鹽竈神社 公式サイト:http://www.shiogamajinja.jp/

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