
岸和田城庭園”八陣の庭”|戦国武将の知恵が息づく美しい日本庭園の魅力と見どころ、拝観案内を徹底紹介
大阪府岸和田市にある岸和田城の本丸跡に佇む国指定名勝の日本庭園「八陣の庭」。昭和を代表する作庭家重森三玲の傑作として、戦国時代の軍略と現代アートが見事に融合した独創的な枯山水庭園です。
岸和田城庭園”八陣の庭”の概要・基本情報
岸和田城庭園”八陣の庭”は、昭和28年(1953年)に著名な庭園研究家・作庭家である重森三玲によって設計・作庭された回遊式枯山水庭園です。重森三玲は生涯において約370に及ぶ歴史的庭園の実測図を作成し、200近くもの創作庭園を残した昭和期における代表的な庭園研究家及び作庭家であり、岸和田城庭園は彼の唯一の城郭庭園として特別な意味を持ちます。
平成26年10月6日付けで国の名勝に指定され、その芸術上の価値及び近代日本庭園史における学術上の価値が高く評価されています。園内では、上・中・下3段の基壇構成の中央に「大将」の石組みを配置し、これを中心に8つの石組みが円形に配列されています。
歴史と由来
岸和田城は古くは南北朝時代からの歴史を持つ城郭で、戦国時代から桃山時代にかけては織田信長や豊臣秀吉が紀州征伐の際に入城した歴史ある名城です。明治維新後は廃城となりましたが、昭和29年に復興天守が再建され、その前年に八陣の庭が完成しました。
重森三玲はこの庭園を岸和田市の依頼に基づき設計し、翌年に建築されることが決まっていた天守閣や、航空機などの発達で上空から観賞されることを意図して設計するなど、伝統的な日本庭園にはなかった独創的なデザインで現代庭園の画期となった作品として評価されています。
作庭の背景と軍略八陣法
庭園の最大の特徴は、中国三国志の英雄として名高い諸葛孔明(諸葛亮)の「八陣法」をモチーフとしていることです。中段には「虎」、「風」の各陣を配置し、下段には「天」、「地」、「雲」、「竜」、「鳥」、「蛇」の各陣を配置しています。
庭園の平面構成は中世の城郭縄張図を参考として考案されたもので、複雑な形状を成す3段の基壇の上に大将を中心として方円陣の如く円形に配置された8群の石組みから成ります。重森三玲は、八陣法は本来敵を攻める陣形ではなく、平和確立のために外敵から守る陣形であるとして、平和への願いをこの庭に込めたと自ら記しています。
岸和田城庭園”八陣の庭”の見どころ・特徴
岸和田城庭園”八陣の庭”は、従来の日本庭園にはない革新的な要素を多数含んだ現代庭園の傑作です。重森三玲の独創的な作庭理念を余すところ無く示しており、その芸術上の価値及び近代日本庭園史における学術上の価値は高いと評価されています。
八陣法を表現した庭園構成
庭園最大の見どころは、諸葛孔明の軍略「八陣法」を石組みで表現した独創的な構成です。三重の屈曲線で仕切られた上・中・下三段で構成され、上段中央に「大将」を表す石組を配置し、中・下段には大将を守るように8組の石組が配置されています。
各石組みは360度どの方向からも観賞できるように設計されており、地上を巡ることにより一群の立石の立体的な造形を観賞するのみならず、立地する本丸全体の地形を含め庭園全体を岸和田城天守閣の最上階からも俯瞰するなど、水平・垂直の方向に展開する多様な視点から広く観賞することが意図されました。
石材は沖ノ島(和歌山県)産の緑色結晶片岩が主に使用されており、力強い石組みが特徴的です。枯山水庭園の地面には京都白川産の白砂が敷かれ、モダンな幾何学模様を描いています。
四季折々の自然美
岸和田城庭園”八陣の庭”は四季を通じて異なる表情を見せる美しい庭園です。春には周辺の桜が咲き誇り、石組みとのコントラストが美しく映えます。夏には緑豊かな木々が庭園を取り囲み、清涼感ある景観を演出します。
秋の紅葉シーズンには、周辺の樹木が色づき、モノトーンの石庭に暖色の彩りが加わります。冬には雪化粧した石組みが幻想的な美しさを見せ、四季それぞれに異なる魅力を発見できます。
庭園の砂紋は定期的に引き直され、訪れるたびに微妙に異なる表情を楽しむことができます。天候や時間帯によっても光と影の具合が変化し、何度訪れても新しい発見がある庭園です。
岸和田城天守閣との調和
再建される天守閣からの俯瞰の眺望を意識してデザインされており、城郭を借景とする形で平面から360度に回遊して鑑賞していても変わる庭園の姿が楽しい点が大きな特徴です。
天守閣の最上階から庭園全体を見下ろすと、八陣法の配置が明確に理解でき、重森三玲の設計意図を体感できます。また、地上から見上げる天守閣と石組みの組み合わせも、城郭庭園ならではの見どころとなっています。
庭園と天守閣は互いを引き立て合う関係にあり、日本の伝統的な城郭建築と現代庭園芸術の見事な調和を実現しています。特に夕暮れ時には、西日に照らされた天守閣と石組みのシルエットが印象的な風景を創り出します。
拝観案内
岸和田城庭園”八陣の庭”は岸和田城天守閣と合わせて拝観できる貴重な文化遺産です。庭園単体での拝観はできませんが、天守閣入場券で庭園も合わせてお楽しみいただけます。歴史と芸術が調和した独特の庭園美を心ゆくまでご堪能ください。
拝観のポイントと楽しみ方
岸和田城庭園”八陣の庭”を最大限楽しむためには、まず地上レベルからの回遊鑑賞をおすすめします。360度どの角度からも異なる表情を見せる石組みの配置を、ゆっくりと歩きながら観察してください。各石組みは諸葛孔明の八陣法における「天」「地」「風」「雲」「竜」「虎」「鳥」「蛇」の各陣を表現しており、それぞれに込められた意味を考えながら鑑賞すると一層深い理解が得られます。
特に重要なのは、天守閣最上階からの俯瞰による鑑賞です。重森三玲が意図した垂直方向の視点から庭園全体を見下ろすことで、八陣法の全体像と設計者の意図を体感できます。上空から見ると、各石組みの配置関係や全体の構成が明確に理解でき、地上からでは分からない庭園の真の姿を発見できます。
庭園内では写真撮影が可能ですので、様々な角度から庭園の美しさを記録してください。ただし、石組みに登ったり砂紋を乱すような行為は避け、文化財保護にご協力をお願いします。
フォトスポット情報
岸和田城庭園”八陣の庭”には数多くの魅力的なフォトスポットがあります。最も人気が高いのは天守閣を背景に八陣の庭全体を撮影できるアングルで、日本の城郭と現代庭園芸術の融合を一枚の写真に収めることができます。
地上からのおすすめ撮影ポイントは、庭園の東南角付近から天守閣と石組みを同時に捉えるアングルです。午前中の順光時には、石組みの質感と天守閣の白壁が美しく映えます。また、各石組みの個性的な形状をクローズアップで撮影するのもおすすめで、重森三玲の独創的な作庭技法を詳細に記録できます。
天守閣最上階からの俯瞰撮影では、八陣法の全体配置を写真に収めることができ、この庭園ならではの特別な一枚となります。季節や時間帯によって異なる光と影の表情も魅力的で、何度訪れても新しい発見があります。
季節のイベント
岸和田城では年間を通じて様々なイベントが開催され、庭園も季節ごとに異なる魅力を見せます。春の桜シーズンには城周辺の桜と八陣の庭のコントラストが美しく、多くの観光客で賑わいます。この時期には夜間ライトアップが実施されることもあり、幻想的な夜桜と石庭の組み合わせをお楽しみいただけます。
夏季には緑豊かな環境の中で涼やかな石庭の美しさを感じることができ、秋の紅葉シーズンには周辺の木々の彩りと白砂・石組みのモノトーンが見事に調和します。冬季には雪化粧した庭園の静寂な美しさが特別な魅力となります。
詳細な開催情報については岸和田市公式サイトまたは岸和田城受付でお確認ください。
アクセス・利用情報
岸和田城庭園”八陣の庭”へのアクセスは公共交通機関が便利で、関西国際空港からも近く、国内外からの観光客にも訪れやすい立地となっています。
交通アクセス
電車でのアクセスが最も便利で、南海本線をご利用ください。南海本線「蛸地蔵駅」から徒歩約7分、または「岸和田駅」から徒歩約13分となります。岸和田駅は特急電車も停車するため、大阪市内からのアクセスも良好です。
岸和田駅からは岸和田市内周遊バスもご利用いただけ、「市役所前」バス停下車徒歩約4分でアクセス可能です。関西国際空港からは南海本線で約20分と非常にアクセスが良く、海外からの観光客にも人気の観光スポットとなっています。
自動車でお越しの場合は、阪神高速道路4号湾岸線「岸和田南IC」から約5分、阪和自動車道「岸和田和泉IC」から約10分の距離です。大阪市内からは約45分、京都市内からは約1時間30分程度です。
<住所> 〒596-0073 大阪府岸和田市岸城町9-1
拝観時間・料金・駐車場情報
岸和田城天守閣の開場時間は10時00分から17時00分(入場は16時00分まで)となります。令和7年4月1日より開場時間が変更予定のため、最新の情報は公式サイトでご確認ください。
休場日は毎週月曜日(祝日・休日の場合は開場)、年末年始(12月29日から1月3日)です。なお、お城まつり期間中(4月1日から15日)は月曜日も開場いたします。
入場料金は大人300円、中学生以下無料です。岸和田だんじり会館、きしわだ自然資料館との3館共通券は700円でお得にご利用いただけます。身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方は入場料免除となります(手帳の提示が必要)。
駐車場について、岸和田城には専用駐車場がないため、最寄りの岸和田市役所第4駐車場をご利用ください。最初の1時間は無料、以降1時間毎に100円の料金設定となっています。岸和田城周辺の道路は駐車禁止区域のため、必ず指定駐車場をご利用ください。
参照サイト
・岸和田市公式ウェブサイト:https://www.city.kishiwada.osaka.jp/soshiki/36/kishiwadajyo.html
・岸和田城特設サイト:https://www.city.kishiwada.lg.jp/kishiwadajyo/
・八陣の庭紹介ページ:https://www.city.kishiwada.osaka.jp/site/kishiwada-side/hachijinn-niwa.html