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滋賀院門跡庭園|小堀遠州作庭の国指定名勝庭園と皇室ゆかりの門跡寺院を完全ガイド

滋賀院門跡庭園|小堀遠州作庭の国指定名勝庭園と皇室ゆかりの門跡寺院を完全ガイド

滋賀県大津市坂本にある滋賀院門跡庭園は、江戸時代初期に小堀遠州により作庭されたと伝わる池泉鑑賞式庭園で、国指定名勝「延暦寺坂本里坊庭園」の一つです。皇室ゆかりの寺院である「門跡」の名を持ち、延暦寺の本坊でもある格式高い寺院の庭園として、権現川の水を取り入れた滝組や立派な石橋が架かる池など、縁側からゆっくり鑑賞することができます。穴太積みの石垣に囲まれた延暦寺坂本里坊の中でも、ひときわ格式の高い寺院として多くの参拝者に愛されています。

滋賀院門跡庭園の概要・基本情報

滋賀院門跡庭園|小堀遠州作庭の国指定名勝庭園と皇室ゆかりの門跡寺院を完全ガイド

滋賀院門跡は、滋賀県大津市坂本にある天台宗の寺院で、本尊は薬師如来、比叡山延暦寺の本坊(総里坊)として重要な位置を占めています。滋賀院門跡(しがいんもんぜき)とも称され、天台宗の長であり延暦寺の住職でもある天台座主(ざす)の御座所であり、地元では滋賀院御殿と呼ばれています。

庭園は江戸時代初期の作とされる池泉回遊式庭園で、国の重要伝統的建造物群保存地区である延暦寺坂本里坊の中でも、穴太積みの石垣の一段高い所にあるひときわ格式の高い寺院として知られています。約2万平方メートルという広大な境内には、内仏殿・宸殿・書院・庫裏・土蔵などが立ち並んでいます。

歴史と由来

滋賀院の創建は江戸時代初期にさかのぼります。元和元年(1615年)に江戸幕府に仕え「黒衣の宰相」とも称された天台宗の僧天海が、後陽成天皇から京都法勝寺の建物を下賜されてこの地に建立した寺院です。

明暦元年(1655年)には後水尾天皇から滋賀院の名と寺領千石が下賜され、後水尾上皇により「滋賀院」の名前を賜わりました。皇室が代々住まったことから「滋賀院御殿」と呼ばれていた時代もあり、その格式の高さを物語っています。

天海大僧正は徳川家康の側近として仕え、秀忠、家光にも重用され、慈眼大師の号を賜った重要な人物でした。その御廟は境内を出たところにある慈眼堂に祀られており、滋賀院の歴史と深く結びついています。

滋賀院御殿と呼ばれた長大な建物は1878年(明治11年)火災により焼失しましたが、比叡山無動寺谷法曼院の建物3棟が移されて再建されました。現在も建築や唐門も豪華なのですが、明治時代に火事で焼失したため現在の建物はすべて明治時代以降のものとなっています。

門跡寺院としての格式と延暦寺の本坊

滋賀院門跡は、門跡寺院としての特別な格式を持つ寺院です。門跡とは住職が皇室や公家によって受け継がれてきた格式ある寺院のことで、天台座主は維新前までは法親王が務めていました。このため門跡寺院であることから、滋賀院門跡とも称されています。

延暦寺の本坊(総里坊)としての役割も重要で、歴代天台座主が暮らした本坊として、穴太衆石積みの石垣に囲まれた広大な敷地には内仏殿や書院が立ち並んでいます。狩野派の障壁画や小堀遠州の庭園でも知られ、天台宗の中枢としての機能を果たしてきました。

境内には天台宗務庁もあり、現在も天台宗の運営において重要な役割を担っています。このように宗教的な権威と皇室との深いつながりを持つ滋賀院門跡は、単なる寺院を超えた歴史的・文化的価値を有しています。

建物の屋根には菊の飾り瓦、牡丹の飾り瓦、唐獅子の飾り瓦、浪の飾り瓦などが上がっており、その豪華さからも門跡寺院としての格式の高さをうかがい知ることができます。

滋賀院門跡庭園の見どころ・特徴

滋賀院門跡庭園|小堀遠州作庭の国指定名勝庭園と皇室ゆかりの門跡寺院を完全ガイド

滋賀院門跡庭園の最大の魅力は、小堀遠州により作庭されたと伝わる池泉鑑賞式庭園の美しさと、権現川の水を活用した巧妙な水の演出にあります。国指定名勝として保護されている庭園は、江戸時代初期の作庭技法を現代に伝える貴重な文化遺産です。

小堀遠州作庭の池泉鑑賞式庭園

滋賀院門跡庭園は、江戸時代初期に小堀遠州により作庭されたと伝わる池泉鑑賞式庭園です。小堀遠州(1579-1647)は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての大名、茶人、建築家、作庭家として知られ、徳川家康に仕えた大名でもあり茶人としても知られる多才な人物でした。

遠州の作庭の特徴である「きれいさび」の美意識が庭園全体に表現されており、華やかさと寂びを兼ね備えた独特の美しさを持っています。庭園にはじめて直線的な造形を持ち込んだのも遠州の特徴で、様々な形の切石を寄せ集め大きな石畳などの構成をしたり、反りのない直線的な石橋を配置したりと独自の美意識で表現されています。

池泉鑑賞式庭園として設計されているため、建物の縁側から座って静かに鑑賞することを前提とした構成となっており、視点を移すごとに異なる景観を楽しむことができます。建築、茶室、庭園の自然な調和が感じられる点も、遠州作庭の大きな特徴の一つです。

権現川の水を活かした滝組と石橋

滋賀院門跡庭園の大きな見どころの一つが、権現川の水を取り入れた滝組や立派な石橋が架かる池の美しい水景です。権現川の水を巧妙に庭園に引き込むことで、常に清らかな水が流れる動的な美しさを演出しています。

庭園内の滝組は高低差を活かした巧妙な設計で、水音とともに視覚的な美しさも楽しめる構成となっています。水の流れは池へと注がれ、池には立派な石橋が架けられており、これらの石橋は遠州の特徴である直線的なデザインが採用されています。

豪壮な鶴石組の意匠も素晴らしく、池の中に配置された石組は鶴の形を模した縁起の良い意匠となっています。これらの石組と水の流れ、石橋が一体となって、格式高い門跡寺院にふさわしい荘厳な景観を作り出しています。

四季を通じて異なる表情を見せる水景は、春の新緑、夏の青々とした緑陰、秋の紅葉、冬の雪景色と、それぞれの季節に美しい景観を提供しています。

国指定名勝「延暦寺坂本里坊庭園」としての価値

滋賀院門跡庭園は、国指定名勝「延暦寺坂本里坊庭園」の構成要素の一つとして、極めて高い文化的価値を有しています。延暦寺坂本里坊庭園は、雙厳院庭園、宝積院庭園、滋賀院門跡庭園、佛乗院庭園、旧白毫院庭園、旧竹林院庭園、蓮華院庭園、律院庭園、実蔵坊庭園、寿量院庭園の11の庭園からなる総合的な名勝です。

これらの庭園群は、延暦寺の僧侶が里で暮らす里坊の総本山的な位置づけを持つ坂本の地において、それぞれ異なる特徴を持ちながらも、全体として調和のとれた庭園文化を形成しています。

滋賀院門跡庭園は、その中でも延暦寺の本坊という特別な地位にふさわしく、最も格式の高い庭園として位置づけられています。小堀遠州という当代一流の作庭家による作庭、皇室ゆかりの門跡寺院という背景、そして現在まで良好に保存されている状態など、名勝としての価値を支える要素が数多く揃っています。

国の重要伝統的建造物群保存地区である延暦寺坂本里坊の中核をなす庭園として、日本の庭園文化史上においても重要な位置を占めており、後世に継承すべき貴重な文化遺産として保護されています。

拝観案内

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滋賀院門跡庭園では、江戸時代初期の名庭を静寂な環境の中でじっくりと鑑賞することができます。庭園は原則撮影禁止となっていますが、小堀遠州の作庭技法と門跡寺院としての格式を五感で感じることができる特別な空間として多くの方に愛されています。

庭園鑑賞のポイントと楽しみ方

滋賀院門跡庭園の鑑賞は、建物の縁側から座って静かに眺めることを基本とした池泉鑑賞式庭園として設計されています。庭園に向かう途中、ガラス越しに「蹴鞠の庭(けまりのにわ)」を眺めることができ、ヒムロスギやアカマツなどの植木だけからなる庭園の美しさを楽しめます。

メインの庭園では、権現川の水を取り入れた滝組の水音を聞きながら、池に架かる立派な石橋や豪壮な鶴石組の意匠を鑑賞できます。小堀遠州の特徴である直線的なデザインの石橋や、様々な形の切石を寄せ集めた石畳の構成など、江戸初期の作庭技法を間近で観察することができます。

二階書院からは琵琶湖を借景として、眼下に「蹴鞠の庭」を楽しめるとのことですが、通常の見学ルートには含まれていません。しかし、一階の縁側からでも十分に庭園の美しさを堪能することができ、季節ごとに異なる表情を見せる植栽と水景の調和を楽しむことができます。

庭園鑑賞の際は、雨の日でも十分に楽しめるのが特徴で、雨に濡れた石組や植栽がより一層美しく映える場合もあります。静寂な環境の中で、時間をかけてゆっくりと鑑賞することをお勧めします。

穴太積み石垣と重要伝統的建造物群保存地区

滋賀院門跡は、国の重要伝統的建造物群保存地区である延暦寺坂本里坊の中でも、穴太積みの石垣の一段高い所にあるひときわ格式の高い寺院として知られています。穴太積みとは、穴太衆と呼ばれる石工集団による独特の石積み技法で、坂本の町の特徴的な景観を形成しています。

坂本の町には、穴太積みの石垣が見事な里坊が数多く残っていますが、中でも滋賀院門跡はひときわ背の高い石垣と白壁に囲まれて、延暦寺の本坊らしい堂々とした外構えを見せています。これらの石垣は、単なる防御機能だけでなく、格式を示す装飾的な役割も果たしており、庭園と一体となって美しい景観を作り出しています。

重要伝統的建造物群保存地区として保護されている坂本の街並みは、延暦寺と密接に関わった里坊群の歴史的価値が認められたもので、滋賀院門跡はその中核的な存在として位置づけられています。庭園を訪れる際は、周辺の里坊群の石垣や街並みと合わせて散策することで、より深く坂本の歴史と文化を理解することができます。

写経体験と御朱印情報

滋賀院門跡では、庭園鑑賞と合わせて写経体験を楽しむことができます。静寂な環境の中で行う写経は、心を落ち着かせ、集中力を高める効果があり、多くの参拝者に人気です。写経体験では、般若心経などの経典を丁寧に書き写すことで、仏教の教えに触れながら精神的な充実感を得ることができます。

御朱印については、滋賀院門跡独自の御朱印をいただくことができ、延暦寺の本坊としての格式を示す特別な御朱印として参拝の記念になります。御朱印は書院での庭園拝観と合わせて授与されることが多く、参拝の証として大切に保管される方が多くいらっしゃいます。

写経体験や御朱印の授与については、事前に確認されることをお勧めします。特に団体での参拝や特別な行事の際は、事前の連絡が必要な場合があります。また、写経体験には別途料金が必要な場合がありますので、詳細は直接お問い合わせください。

アクセス・利用情報

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滋賀院門跡庭園は、京阪電鉄や JR を利用して比較的アクセスしやすい立地にあります。延暦寺坂本里坊の中心部に位置しているため、他の里坊庭園と合わせて巡ることで、坂本の庭園文化をより深く理解することができます。

交通アクセス

滋賀院門跡への最も便利なアクセス方法は、京阪電鉄石山坂本線の利用です。「坂本比叡山口」駅から徒歩約5分の距離にあり、駅を出て南西方向に歩くとすぐに到着します。京阪電鉄は京都市内からのアクセスも良好で、出町柳駅から約25分程度で坂本比叡山口駅に到着します。

JR 湖西線を利用する場合は、「比叡山坂本」駅から徒歩約15分となります。JR 京都駅からは約20分、大阪方面からは約1時間程度でアクセス可能です。比叡山坂本駅からは、延暦寺坂本里坊の街並みを楽しみながら歩くことができ、穴太積みの石垣や古い街並みを見学しながら滋賀院門跡に向かうことができます。

車でお越しの場合は、名神高速道路京都東インターチェンジから約30分、湖西道路坂本北インターチェンジから約10分程度の距離にあります。近くの坂本観光案内所の駐車場に車を止めて歩いて行く方法もあり、駐車場代は無料で、歩いても5分ほどなので、坂本の石積みの景色を眺めながら歩いて行かれることをお勧めします。

拝観時間・料金・駐車場情報

滋賀院門跡庭園の拝観時間は、9:00から16:30までとなっており、不定休のため事前に確認されることをお勧めします。最終入場は16:00頃となりますので、時間に余裕を持って訪問されることが大切です。

拝観料は500円となっており、庭園だけでなく書院からの眺望や建物内部の見学も含まれています。この料金で国指定名勝の庭園を鑑賞できることを考えると、非常にリーズナブルな設定となっています。

駐車場については、滋賀院門跡専用の駐車場は限られているため、坂本観光案内所の駐車場(無料)の利用が推奨されています。観光案内所の駐車場から滋賀院門跡までは徒歩約5分の距離で、途中で日吉大社の方に向かって歩いて行くと左側に「滋賀院門跡」の看板が見えるので、すぐにわかります。

団体での拝観については、事前の連絡が必要な場合がありますので、10名以上でお越しの際は事前にお電話でご相談ください。また、庭園は原則撮影禁止となっていますが、現在では宣伝にもなるため禁止もしていないとの情報もありますので、撮影を希望される場合は受付で確認されることをお勧めします。

<住所> 〒520-0113 滋賀県大津市坂本4丁目6-1

参照サイト

・滋賀院門跡 | 滋賀県観光情報[公式観光サイト]:https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/434/
・比叡山・びわ湖 観光情報サイト:https://www.hieizan.gr.jp/sakamoto/shigainmonzeki

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