
叶神社|源氏再興の願いが叶った由緒ある神社の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド
神奈川県横須賀市浦賀に鎮座する叶神社は、源頼朝の源氏再興の願いが叶ったことから名付けられた歴史ある神社です。浦賀港を挟んで東西に位置する2つの神社からなり、縁結びのパワースポットとして多くの参拝者が訪れています。
叶神社の概要・基本情報
叶神社は、神奈川県横須賀市の浦賀地区に位置する神社で、浦賀港を挟んで東西に2つの社殿を構える珍しい形態を持っています。正式名称はどちらも「叶神社」ですが、一般的には西浦賀の神社を「西叶神社」、東浦賀の神社を「東叶神社」と呼び分けています。
両社ともに誉田別尊(応神天皇)を主祭神とし、石清水八幡宮から勧請された由緒正しい八幡神社です。特に縁結びのご利益で知られ、近年ではパワースポットとして若い女性を中心に人気を集めています。
歴史と由来
叶神社の創建は、平安時代末期の養和元年(1181年)8月15日まで遡ります。創建の経緯には興味深い歴史があります。
源平合戦の時代、伊豆に配流されていた源頼朝と知遇を得た高雄山神護寺の僧・文覚上人が、源氏の再興を願って京都の石清水八幡宮の分霊を迎えて創建したのが始まりとされています。文覚上人は上総の鹿野山で修行を積み、源氏再興への強い願いを込めてこの地に神社を建立しました。
その後、源頼朝が平氏を打倒し、鎌倉幕府を開いて源氏再興を果たしたことから、その願いが「叶った」として「叶大明神」「叶神社」と呼ばれるようになりました。まさに神社の名前が、歴史上の大きな転換点を物語っている貴重な存在です。
江戸時代に入ると、下田から奉行所が浦賀に移されたことで、叶神社は奉行に任ぜられた武士たちから代々厚く崇敬されました。春秋2期の大祭には奉行自らが参詣し、幣物を捧げるほどの信仰を集めていました。
祭神とご利益
西叶神社の主祭神は誉田別尊(応神天皇)で、相殿神として比売大神、息長帯比売命(神功皇后)、天照大神、保食神、大名貴命、少名彦命、火産霊神、白山比売命が祀られています。
東叶神社の主祭神も同じく誉田別尊(応神天皇)です。どちらの神社も石清水八幡宮と同様の八幡神を祀っており、武運長久や勝負運、厄除けなどのご利益があるとされています。
特に注目されるのは縁結びのご利益です。「叶」という文字が持つ縁起の良さから、様々な願いを叶えてくれる神社として信仰されており、恋愛成就、良縁結び、夫婦和合などを願う参拝者が全国から訪れています。
また、勝海舟が咸臨丸での太平洋横断前に東叶神社で断食修行を行ったという歴史から、困難を乗り越える力や新しい挑戦への勇気を授けてくれるとも信じられています。
叶神社の見どころ・特徴
叶神社の最大の特徴は、浦賀港を挟んで東西に分かれて鎮座していることです。この珍しい配置と、それぞれの神社が持つ独特の魅力、そして歴史的な価値の高い文化財が見どころとなっています。
東西に分かれる二つの神社
西叶神社は横須賀市西浦賀1-1-13に位置し、養和元年(1181年)の創建とされる古い歴史を持ちます。石段の両脇には源頼朝が伊豆から移植奉納したと伝えられるソテツが植えられており、歴史の重みを感じさせます。
拝殿の格天井には、当時の日本には渡来していないとされる珍しい花や鳥の絵が描かれており、どこにその絵があるのかを探すのも参拝の楽しみの一つです。また、棟木を支える力神の見事な彫刻も施されています。
東叶神社は横須賀市東浦賀2-21-25に位置し、江戸時代初期の正保元年(1644年)に西叶神社を勧請して創建されました。明治の神仏分離まで、耀真山永神寺という真言宗醍醐派の寺院を別当寺としていた歴史があります。
興味深いのは両社の狛犬の特徴です。西叶神社の狛犬はいずれも口を開けた「阿形」に見え、東叶神社の狛犬は左右とも口を閉じた「吽形」に見えることから、東西で一対をなしているという説があります。また、東叶神社の狛犬はそれぞれ子供を抱いており、右側の狛犬の子供はお乳を飲んでいる珍しい姿が見られます。
勝海舟ゆかりの歴史的な遺跡
東叶神社には、幕末の偉人・勝海舟にまつわる貴重な史跡があります。勝海舟が咸臨丸での太平洋横断という困難な航海に臨む前に、この神社で身を清め、精神を鍛えたという逸話が残されています。
社務所の裏には勝海舟が水垢離を行ったとされる井戸があり、現在でもその井戸を見ることができます。水垢離とは冷水を浴びて身を清める修行のことで、勝海舟はこの井戸の冷たい水で身を清めた後、裏山の明神山山頂で断食修行を行ったと伝えられています。
明神山は標高約53メートルの小高い山で、山頂には東叶神社の奥宮が祀られています。その左手には「勝海舟断食の場」の標柱が立てられており、幕末の激動期に新しい時代への扉を開いた偉人の足跡を辿ることができます。山頂からは浦賀港や房総半島を一望でき、勝海舟もこの景色を眺めながら決意を新たにしたのかもしれません。
後北条氏の時代には、房総半島の里見水軍による三浦半島への攻撃を防ぐため、この明神山に水軍が配置されていたという軍事的な歴史もあり、浦賀城跡としても知られています。
県指定天然記念物の社叢林
東叶神社の裏山である明神山一帯は、「叶神社の社叢林」として昭和51年(1976年)12月17日に神奈川県指定天然記念物に指定されています。
この社叢林の素晴らしさは、よく保全された自然林にあります。標高53メートルの山頂まで常緑広葉樹林が広がり、山頂部付近はスダジイ林、斜面部はタブノキ林で覆われています。高木層には樹高20~22メートルのタブノキが優占し、亜高木層にはヤブツバキ、イヌビワ、モチノキが生育しています。
特に注目すべきは、ウバメガシの自生です。神奈川県内でウバメガシが自生しているのは、この明神山と城ヶ島だけで、ここが分布の北限とされています。このことからも、この地域の生態系が学術的に非常に貴重であることが分かります。
低木層にはトベラ、アオキ、シロダモ、ヤツデ、ヤブニッケイ、オオバグミ、ムラサキシキブなどが見られ、林床の草本層にはキズタ、ヤブラン、ビナンカズラ、イノデ、ベニシダ、テイカカズラなど多様な植物が生育しており、都市部にありながら豊かな自然環境が保たれています。
参拝・拝観案内
叶神社への参拝は、一般的な神社参拝の作法に従いますが、東西2つの神社を巡る特別な楽しみ方があります。また、縁結びで有名な特別なお守りの授与方法も大きな魅力となっています。
参拝作法とマナー
叶神社での参拝は、まず鳥居の前で一礼してから境内に入ります。手水舎で手と口を清めた後、拝殿前で二拝二拍手一拝の作法でお参りします。
東西2つの神社を参拝する場合は、特に決まった順序はありませんが、多くの参拝者は西叶神社から東叶神社の順で参拝しています。これは縁結びお守りの授与方法と関連しているためです。
浦賀港を挟む2つの神社の移動には、「浦賀の渡し」という小さな渡船を利用することができます。この渡船は地元の生活の足としても利用されており、昔ながらの情緒を味わいながら参拝することができます。ただし、天候や運航状況により欠航する場合もあるため、事前に確認することをおすすめします。
縁結びお守りの特別な授与方法
叶神社の最大の特徴は、東西2つの神社で授与される縁結びお守りの特別なシステムです。21世紀に入り、両社の宮司の話し合いにより実現したこの新しい試みは、多くの参拝者に愛されています。
まず西叶神社で「勾玉お守り」を授かります。この勾玉は水晶など様々な種類があり、好みに応じて選ぶことができます。次に東叶神社でお守り袋を授かり、西叶神社の勾玉をこの袋に納めることで、一つの完成した縁結びお守りとなります。
このお守りを身につけていると、恋愛をはじめとした様々な良縁を結んでいただけるとされており、カップルや夫婦での参拝はもちろん、良縁を求める多くの人々が訪れています。勾玉とお守り袋の組み合わせは自由に選ぶことができるため、自分だけの特別なお守りを作ることができます。
御朱印・お守り情報
両社ともに御朱印を授与しており、それぞれ異なるデザインの御朱印をいただくことができます。東叶神社では咸臨丸の絵柄が入った御朱印帳も授与されており、勝海舟ゆかりの神社らしい記念品として人気です。
西叶神社と東叶神社の御朱印を見開きで書いていただくことも可能で、2つの神社を参拝した記念として多くの参拝者がお願いしています。
お守りは縁結びお守り以外にも、厄除け、交通安全、学業成就など様々な種類が用意されています。特に「叶」の文字が入ったお守りは、様々な願いを叶えてくれるとして人気があります。
年中行事としては、1月1日の歳旦祭、2月節分の節分祭、3月下旬の祈年祭、6月30日の夏越大祓式などが行われており、春と秋には大祭が執り行われます。
アクセス・利用情報
叶神社へのアクセスは、公共交通機関と自動車の両方で可能です。浦賀港を挟んで東西に位置するため、それぞれの神社へのアクセス方法をご紹介します。
交通アクセス
【電車でのアクセス】
最寄り駅は京浜急行電鉄本線の浦賀駅です。浦賀駅は京急本線の終点駅となっています。
西叶神社へは、浦賀駅から徒歩約10分です。駅を出て浦賀港方向に向かい、港沿いを歩いていくとアクセスできます。
東叶神社へは、浦賀駅からバスを利用するのが便利です。京急バスの「新町」バス停で下車し、そこから徒歩約7分でアクセスできます。または浦賀駅から徒歩約15分程度でもアクセス可能です。
【車でのアクセス】
横浜・横須賀道路の浦賀ICから車で約5分の距離にあります。東京方面からは約1時間程度でアクセスできます。
【浦賀の渡しでの移動】
東西の神社間の移動には、浦賀港を行き来する「浦賀の渡し」が利用できます。この渡船は約3分程度の短い船旅ですが、浦賀の歴史を感じながら移動できる貴重な体験です。運賃は大人200円、小学生100円で、運航時間は午前7時から午後6時(冬期は午後5時)までです。ただし、荒天時は運休となる場合があります。
拝観時間・料金・駐車場情報
【拝観時間】
両社とも拝観は基本的に自由ですが、社務所の対応時間は午前9時から午後5時頃までとなっています。
【参拝料】
参拝は無料です。御朱印やお守りの授与は別途初穂料が必要です。
【駐車場】
西叶神社には神社専用の駐車場があります。東叶神社にも鳥居の脇と海側に数台駐められるスペースが用意されています。ただし、どちらも台数が限られているため、参拝の際は公共交通機関の利用もご検討ください。
混雑が予想される正月や大祭の際は、周辺の有料駐車場の利用や公共交通機関でのアクセスをおすすめします。
<住所>
西叶神社:〒239-0824 神奈川県横須賀市西浦賀1-1-13
東叶神社:〒239-0821 神奈川県横須賀市東浦賀2-21-25
参照サイト
・叶神社公式ホームページ:https://kanoujinjya.jp/
・横須賀市観光情報:https://www.cocoyoko.net/spot/higashi-kanou-z.html