
玄宮楽々園|彦根城下に広がる美しい日本庭園の魅力と見どころ、拝観案内を徹底紹介
国宝天守を誇る彦根城の東側に位置する玄宮楽々園は、江戸時代初期に彦根藩井伊家によって造営された大名庭園です。彦根城天守を借景とした美しい池泉回遊式庭園として知られ、四季折々の景観が訪れる人々を魅了し続けています。
玄宮楽々園の概要・基本情報
玄宮園は、江戸時代には「槻之御庭」と呼ばれていました。隣接する楽々園は槻御殿と呼ばれ、延宝5年(1677年)、4代藩主井伊直興により造営が始まり、同7年に完成したと伝えられ、昭和26年には国の名勝に指定されています。現在は、庭園部分を玄宮園、御殿部分を楽々園と称しています。
玄宮楽々園は、庭園部分の「玄宮園」と御殿部分の「楽々園」で構成される総合施設です。国の特別史跡「彦根城跡」の区域内にあり、2015年には「琵琶湖とその水辺景観-祈りと暮らしの水遺産」の構成文化財として日本遺産に認定されました。
歴史と由来
玄宮園の原形となる庭園が造営された時期や規模は明確ではないが、江戸時代初期の延宝6年(1678年)に彦根藩4代藩主井伊直興が整備したといわれる。江戸時代後期の文化10年(1813年)には第11代藩主井伊直中の隠居屋敷として再整備され、今日に近い形に整えられたといわれる。
玄宮園の名前は、古代中国の宮廷の名に由来しています。中国・唐時代の玄宗皇帝の離宮庭園を参考にしており、格式の高さを物語っています。江戸時代に描かれた絵図によると、当時は「玄宮園十勝」と呼ばれる十の景観名所があり、それぞれに風雅な名前が付けられていました。
作庭の背景と様式
玄宮楽々園は大池泉回遊式庭園として設計されており、彦根城の天守を借景とした独特の景観美を生み出しています。樹木・岩石・池を巧みに配し、池の周りに、湖南省洞庭湖(こなんしょうどうていこ)の瀟湘八景(しょうしょうはっけい)にちなんで選ばれた近江八景、竹生島(ちくぶしま)や沖の白石などを模して造られており、情趣のある庭になっています。
庭園は中国の瀟湘八景や琵琶湖の近江八景を意識した作庭思想のもとに造られており、池の中央には4つの中島が配置されています。これらの島は神仙思想に基づく鶴島や亀島として設計され、長寿への願いが込められています。
玄宮楽々園の見どころ・特徴
玄宮楽々園には数多くの見どころがありますが、特に歴史的建造物と自然景観の調和が見事です。庭園内には江戸時代から続く茶室や亭屋が残されており、当時の大名文化を今に伝えています。
建造物・構造の魅力
庭園の中心的な建造物として、池にせり出しているのが”臨池閣”、築山の上にあるのが”鳳翔台”。かつて玄宮園内に4つ存在した茶屋のうちの2つ(涵虚亭・春鶯亭は現存せず)で、鳳翔台では現在も500円で一服いただくことができます。
鳳翔台は彦根藩の賓客をもてなすための客殿として建てられた数寄屋建築で、ひなびた趣のある建物です。築山の上に位置する鳳翔台からは庭園全体を一望でき、さらに佐和山など周囲の山々の景観も楽しめます。現在でも抹茶と和菓子を500円でいただくことができ、特別な時間を過ごせます。
臨池閣は池に突き出すように建てられた数寄屋造りの建物で、江戸時代には八景亭とも呼ばれていました。明治時代以降は料理旅館「八景亭」として130年間営業していましたが、2017年に老朽化のため営業を終了し、現在は文化財修復に向けた準備が進められています。
自然・景観の美しさ
玄宮楽々園の最大の魅力は、何といっても国宝彦根城天守を背景とした美しい景観です。大きな池を中心に大小様々な中島や橋、その後ろに見える彦根城が大きな見所になります。
魚躍沼と呼ばれる大きな池には、9つの橋が架けられており、散策路として変化に富んだ回遊が楽しめます。池の水は外堀からサイフォンの原理により導水されており、江戸時代には船遊びも行われていました。
特に美しいのは鶴鳴渚と名付けられた鶴島で、天を突くような立石は鶴の首に見立てた鶴首石として知られています。この石組みには力強さと繊細さが感じられ、大名庭園の技術の高さを物語っています。
文化財・重要な庭園要素
江戸時代に描かれた「玄宮園図」に八景亭の名はなく「臨池閣(りんちかく)」と呼んでいたようです。そのほか玄宮園図には「鳳翔台(ほうしょうだい)」「魚躍沼(ぎょやくしょう)」「龍臥橋(りゅうがばし)」「鶴鳴渚(かくめいなぎさ)」 「春風埒 (しゅんぷうれつ)」「鑑月峯(かんげつほう)」「薩埵林(さったりん)」「飛梁渓(ひりょうけい)」「涵虚亭(かんきょてい)」の十景が付箋によって示されており、当時「玄宮園十勝」と呼ばれていたことが確認されています。
これらの景観要素は、それぞれに風雅な名前が付けられており、江戸時代の文人趣味や中国文化への憧憬を反映しています。現在でもこれらの多くを確認することができ、当時の庭園文化を理解する貴重な文化遺産となっています。
楽々園の御殿部分には、現在も枯山水の庭園が残されており、その石組みには見るべきものがあります。この庭園は文化年間の大規模な増改築の際に新たに築かれたもので、古絵図を見ると当時は満々と水をたたえていたことがわかります。
拝観案内
玄宮楽々園は四季を通じて美しい景観を楽しめる庭園として、多くの人々に愛され続けています。特に庭園の作庭思想や建造物の配置を理解することで、より深く楽しむことができます。
拝観のポイントと楽しみ方
玄宮楽々園の魅力を最大限に楽しむためには、まず回遊式庭園の特性を理解することが重要です。庭園は大きな池を中心に設計されており、散策路を歩きながら様々な角度から景観を楽しむことができます。
特におすすめの楽しみ方は、鳳翔台での抹茶体験です。築山の上に位置する鳳翔台では、現在でも500円で抹茶と和菓子をいただくことができ、庭園全体を一望しながら贅沢な時間を過ごせます。江戸時代には彦根藩の賓客をもてなす客殿として使われていた場所で、当時の大名文化を体感できる貴重な体験です。
庭園を散策する際は、「玄宮園十勝」と呼ばれた十の景観名所を意識して歩くと、より深い理解が得られます。魚躍沼の池面に映る彦根城天守、龍臥橋や七間橋などの橋からの眺め、鶴鳴渚の立石群など、それぞれに異なる趣があります。
季節の見どころとベストシーズン
鳳翔台では、抹茶を楽しむことができ、池に浮かぶ蓮や菖蒲(しょうぶ)の花が咲く初夏の季節は、花の香りが園内を包みます。
玄宮楽々園は季節ごとに異なる美しさを見せる庭園です。春には桜が彦根城とともに美しい風景を作り出し、初夏には池に浮かぶ蓮や菖蒲の花が園内に芳しい香りを漂わせます。
秋の紅葉シーズンは特に人気が高く、毎年11月中旬から12月上旬にかけて「錦秋の玄宮園ライトアップ」が開催されます。令和6年(2024年)11月16日(土)〜11月30日(土) 18:00〜21:30(入場は21:00まで)で行われる夜間ライトアップでは、水面に映る紅葉が幻想的な美しさを演出します。
冬季も雪景色の中に佇む彦根城天守と庭園の組み合わせが美しく、静寂に包まれた大名庭園ならではの趣を味わうことができます。一年を通して楽しめる庭園ですが、特に春の桜と秋の紅葉の時期は格別の美しさです。
フォトスポット情報
玄宮楽々園には数多くの撮影ポイントがありますが、最も人気が高いのは池越しに見る彦根城天守の景観です。臨池閣を前景に彦根城を背景とした構図は、この庭園を代表する風景として知られています。
鳳翔台からの眺めも絶好の撮影ポイントです。庭園内で最も高い位置にあるため、庭園全体を見下ろすパノラマ写真が撮影できます。また、佐和山など周囲の山々も視界に入り、スケールの大きな風景写真を撮ることができます。
橋の上からの撮影も魅力的で、特に龍臥橋や七間橋からは池の中島や対岸の建物を美しく撮影できます。季節によっては水面に映る桜や紅葉、雪景色なども撮影でき、四季折々の美しい写真が期待できます。
ライトアップ期間中は、水面に映る光と紅葉の幻想的な組み合わせが撮影でき、昼間とは全く異なる表情の庭園を楽しむことができます。
アクセス・利用情報
玄宮楽々園は彦根城に隣接しているため、彦根城観光と合わせて訪れる人が多く、アクセスも便利な立地にあります。公共交通機関でも自家用車でも比較的容易にアクセスできます。
交通アクセス
公共交通機関を利用する場合、JR「彦根」駅から徒歩約20分。彦根駅からバスの便もあり。JR東海道本線彦根駅が最寄り駅となります。彦根駅から徒歩でのアクセスも可能ですが、距離があるため彦根城方面への路線バスの利用も便利です。
自動車でアクセスする場合は、名神高速道路「彦根IC」より約10分。駐車場あり(有料)名神高速道路の彦根インターチェンジが最寄りとなります。インターチェンジから彦根城方面へ向かうルートは比較的わかりやすく、案内標識も充実しています。
彦根城周辺は観光地として整備されており、夢京橋キャッスルロードや四番町スクエアなどの観光施設も徒歩圏内にあるため、庭園見学と合わせて彦根の町並み散策も楽しめます。
拝観時間・料金・駐車場情報
拝観時間は開園時間 8:30〜17:00 (最終入場16:30まで) / 無休となっており、年中無休で開園しています。ただし、彦根城博物館や開国記念館などの一部施設は年末に休館となる場合があります。
拝観料金は大人: 200円 玄宮園単独券 子供: 100円 玄宮園単独券となっています。彦根城との共通券もあり、彦根城と玄宮楽々園をセットで見学する場合はお得な料金設定となっています。詳細な料金については事前に公式サイトで確認することをおすすめします。
駐車場は彦根城周辺に複数あり、観光駐車場は普通車1,000円で一日利用できます。ただし、桜や紅葉のシーズンには混雑が予想されるため、公共交通機関の利用も検討することをおすすめします。
なお、ライトアップ期間中は通常とは異なる料金設定となり、夜間特別入園料が設定されます。ライトアップ期間の詳細や料金については、事前に彦根観光協会のホームページで最新情報を確認してください。
住所:〒522-0061 滋賀県彦根市金亀町3-40
参照サイト
・【公式】 国宝 彦根城:https://hikonecastle.com/
・彦根観光ガイド : 公益社団法人 彦根観光協会:https://www.hikoneshi.com/
・玄宮楽々園(玄宮園) | 滋賀県観光情報[公式観光サイト]:https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/1666/