
金刀比羅神社|由緒ある神社の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド
北海道根室市に鎮座する金刀比羅神社は、文化3年(1806年)に高田屋嘉兵衛によって創建された歴史ある神社です。海の安全や商売繁盛の神様として親しまれ、北方領土の神社の御神体も預かる特別な役割を担っています。毎年8月には北海道三大祭りの一つである例大祭が盛大に開催され、多くの参拝者で賑わいます。
金刀比羅神社の概要・基本情報
金刀比羅神社は、北海道根室市琴平町に位置する神社で、香川県の金刀比羅宮を総本宮とする金刀比羅信仰の神社です。根室の発展とともに歩んできた歴史を持ち、地域の人々から「こんぴらさん」として親しまれています。現在の社格は旧県社で、根室地域における重要な神社として位置づけられています。
歴史と由来
金刀比羅神社の創建は文化3年(1806年)にさかのぼります。北方漁業開発の祖で、根室の漁場を開いた商人、高田屋嘉兵衛が文化3年(1806)に建立した神社として始まりました。高田屋嘉兵衛は当時、根室での漁場請負を行っており、海上安全と事業の繁栄を祈願して金刀比羅大神を奉斎したと伝えられています。
1881年(明治14年)現在地に遷座した。同年に郷社、1919年(大正8年)に県社に列格しているという変遷を経て、神社としての格式を高めてきました。明治時代には開拓使庁の認可を受けて公認の神社となり、現在地への移転とともに社殿造営や境内整備が行われました。
昭和21年(1946年)には、北方領土の島々にあった神社の御神体を仮鎮座させるという重要な役割を担うようになりました。これは終戦後のソ連による北方領土占領により、島から退去を余儀なくされた島民たちが、身を挺して御神体を本土に持ち帰ったことに始まります。
祭神とご利益
金刀比羅神社の主祭神は、大物主神(おおものぬしのかみ) 事代主神(ことしろぬしのかみ) 倉稲魂命(うがのみたまのみこと)の三柱です。これらの神様は、それぞれ異なるご利益をもたらすとされています。
大物主神は国土開発や産業振興の神として知られ、事代主神は商売繁盛や漁業の神、倉稲魂命は五穀豊穣や食物の神として信仰されています。金刀比羅信仰の特徴として、特に海上安全や航海安全のご利益が強く信じられており、根室という海に囲まれた土地柄にも合致した信仰となっています。現在でも漁業関係者や海運業者をはじめ、商売繁盛を願う多くの人々が参拝に訪れています。
金刀比羅神社の見どころ・特徴
金刀比羅神社には、長い歴史の中で培われた数多くの見どころがあります。境内の建造物から展示施設まで、訪れる人々に根室の歴史と文化を伝える貴重な場所となっています。
建造物・構造の魅力
社殿様式は入母屋流造で建てられた本殿は、伝統的な神社建築の美しさを感じることができます。現在の社殿は昭和17年(1942年)に造営されたもので、戦前の技術と意匠を今に伝える貴重な建造物です。
境内面積は34,171㎡と広大で、ゆったりとした空間の中で参拝することができます。境内には手水舎や神楽殿なども配置され、参拝者が心静かに祈りを捧げられる環境が整えられています。
神社の入口には立派な鳥居が立ち、そこから海を望むことができる立地も魅力の一つです。根室の海と一体となった神社の景観は、訪れる人々に深い印象を与えています。
北方領土の神社御神体の保管
金刀比羅神社の最も特徴的な役割の一つが、北方領土の多楽島・志発島・水晶島・色丹島・国後島にあった神社の御神体も預かっており,各社の例祭日に祭典が行われることです。
終戦時、北方四島はソ連(現ロシア)の不法占拠され、17,291人いた島民達は、故郷の島を追われることとなりました。この際、島民たちが命がけで本土に持ち帰った11社の御神体を、金刀比羅神社が預かることになりました。
現在でも毎年、それぞれの神社の例祭日には、元島民やその家族、関係者が集まって祭典を行い、一日も早い北方領土の返還を祈念しています。これは単なる宗教的行事を超えて、北方領土問題への関心を継続させる重要な文化的活動となっています。
神輿殿・お祭り資料館
2005年(平成18年)には「金刀比羅神社御創祀200年」を迎え、御神輿が御色直しを行い、さらに社務所を新築し「神輿殿・お祭り資料館」を併設した施設は、神社の大きな見どころの一つです。
この施設には約1.5トンの大神輿が展示されており、入館無料で見学が可能です。神輿は例大祭で実際に使用されるもので、その壮大さと美しさを間近で見ることができます。資料館部分では、過去の例大祭の写真や祭りに関する貴重な資料が展示されており、根室の祭り文化を深く理解することができます。
また、北方領土に関する展示もあり、かつて島々にあった神社の写真や資料を通じて、北方領土の歴史と現状について学ぶことができる貴重な学習の場ともなっています。
参拝・拝観案内
金刀比羅神社への参拝は、基本的なマナーを守って行うことで、より意義深い体験となります。また、年間を通じて様々な行事が行われており、特に夏の例大祭は見逃せない行事です。
参拝作法とマナー
金刀比羅神社での参拝は、一般的な神社参拝のマナーに従って行います。まず鳥居をくぐる際は一礼し、参道の中央は神様の通り道とされているため、端を歩くよう心がけましょう。
手水舎では、左手、右手の順で清め、口をすすいで身を清めます。現在は新型コロナウイルス感染症対策として、自動の手水舎が設置されている場合もあります。本殿前では、二拝二拍手一拝の作法で参拝を行います。
金刀比羅神社では海上安全や商売繁盛、五穀豊穣などの祈願が多く行われています。心を込めて祈りを捧げることで、神様からのご加護をいただくことができるでしょう。参拝後は、来た道を振り返らずに帰路につくのが良いとされています。
金刀比羅神社例大祭
毎年8月9日(宵宮祭)、10日(本祭・御神輿渡御)、11日(御神輿渡御)の3日間に渡って、金刀比羅神社例大祭が行なわれるこの祭りは、北海道三大祭りのひとつとして広く知られています。
例大祭の最大の見どころは神輿渡御です。重量約1.5トンの神輿を道中一貫して人力で担ぎ、4つの祭典区が繰り出す山車には子供や若者が担う手古舞・金棒・先太鼓・お囃子などの演目が加わり、華やかな行列が市内を練り歩きます。
「西部祭典区」「第一祭典区」「東部祭典区」「第三祭典区」の4つの祭典区があり、それぞれの行列は旗持ち、先太鼓、金棒、山車など10の部門で構成されており、各祭典区が独自の特色を持った演出で祭りを盛り上げます。
令和2年5月19日には北海道指定無形民俗文化財に指定され、その文化的価値が正式に認められました。地域の人々が代々受け継いできた伝統の技術と情熱が、この祭りを支えています。
御朱印・お守り情報
金刀比羅神社では御朱印の授与を行っており、受付時間は08:30~12:00、13:00~17:00となっています。ただし、祭事等による神職不在時をはじめ、下記期間は直接御朱印帳に書き入れが叶いません その際は「書き置き御朱印(日付入)」となりますので、事前に確認することをお勧めします。
御朱印には「本土最東端」の文字と共に「祈 返還 北方領土」と記載されており、根室という土地の特殊性を表現した特別なものとなっています。遠路根室までお参りいただいた皆様に「根室」を感じていただけるようなデザインの切り絵御朱印を作製しましたという配慮も行われています。
お守りについては、「旅守」や「福ざんまいみくじ」が人気です。旅守は本土最東端の地まで訪れた記念として、また旅の安全を祈願するお守りとして多くの参拝者に親しまれています。福ざんまいみくじは北海道ご当地みくじシリーズの一つで、北海道各地の特色を活かした張り子が使用されています。
また、「厄割の玉」という独特のお守りもあり、災いや悩み事を玉に移し込んで厄割の岩に投げることで、災難を打ち砕くとされています。海上安全守も漁業や海運に関わる人々に人気のお守りです。
アクセス・利用情報
金刀比羅神社へのアクセスは、根室市の中心部からも近く、比較的便利な立地にあります。参拝時間や駐車場の情報も含めて、事前に確認しておくと安心です。
交通アクセス
金刀比羅神社へは、JR根室駅を起点とした交通手段が一般的です。JR根室駅より3㎞(車で5分、バスは汐見町下車となっており、駅からのアクセスは良好です。
車でのアクセスの場合、根室駅から約5分程度で到着できます。根室市内の主要道路から神社への案内標識も設置されているため、迷うことなく到着できるでしょう。バスを利用する場合は、汐見町バス停で下車後、徒歩数分で神社に到着します。
根室は本土最東端に位置する街で、札幌からは車で約6時間、釧路からは約2時間の距離にあります。遠方からお越しの場合は、釧路空港を利用して釧路市内で宿泊し、翌日根室へ向かうのが一般的なルートです。
神社周辺からは海を望むことができ、天気の良い日には北方領土の島影を見ることも可能です。この立地の特殊性も、金刀比羅神社参拝の魅力の一つとなっています。
住所:〒087-0055 北海道根室市琴平町1丁目4番地
拝観時間・料金・駐車場情報
金刀比羅神社の参拝は24時間可能ですが、社務所や神輿殿・お祭り資料館の開館時間は8:30~17:00となっています。1/15~3/15の冬季期間の開館時間は9:00~16:30と短縮されるため、冬季の参拝時には注意が必要です。
参拝料は無料ですが、御朱印やお守りの授与には初穂料が必要です。神輿殿・お祭り資料館の見学も入館無料で行うことができ、貴重な神輿や祭りの資料を自由に見学することができます。
駐車場は神社境内に完備されており、無料で利用できます。一般参拝者向けの駐車スペースは十分に確保されているため、車でのアクセスも安心です。ただし、例大祭期間中などの繁忙期には混雑が予想されるため、公共交通機関の利用も検討すると良いでしょう。
祈祷や特別な行事への参加を希望する場合は、事前の予約が推奨されています。詳細については神社社務所まで直接お問い合わせください。
冬季期間の根室は積雪があるため、参拝の際は防寒対策と滑りにくい靴の着用をお勧めします。また、強風が吹くことも多いため、帽子などの飛ばされやすいものには注意が必要です。
参照サイト
・根室 金刀比羅神社 公式ホームページ:https://www.nemuro-kotohira.com/
・北海道神社庁:https://hokkaidojinjacho.jp/金刀比羅神社/