
西明寺本坊庭園「蓬萊庭」|国指定名勝の美しい日本庭園の魅力と見どころ、拝観案内を徹底紹介
滋賀県甲良町に位置する西明寺本坊庭園「蓬萊庭」は、湖東三山の名刹・西明寺に広がる国指定名勝の美しい日本庭園です。江戸時代初期に望月友閑によって作庭されたこの遠州流庭園は、苔と紅葉が織りなす四季折々の風景で多くの人々を魅了し続けています。
西明寺本坊庭園「蓬萊庭」の概要・基本情報
西明寺本坊庭園「蓬萊庭」は、紅葉の名所として有名な滋賀県の”湖東三山”の一つに挙げられる龍應山西明寺の本坊に造られた庭園で、国指定名勝に指定されています。この庭園は、1673年(延宝元年)に望月越中守友閑により復興を記念して作庭された池泉鑑賞式庭園として知られています。
西明寺そのものは、平安時代初期の承和元年(八三四)に、三修上人が仁明天皇の勅願により開創された天台宗寺院で、鈴鹿山麓に連なって位置する金剛輪寺・百済寺と共に「湖東三山」の名称で親しまれています。境内には鎌倉時代の代表的な建造物で、国宝第1号に指定されている本堂や同じく総桧造りの国宝三重塔があり、歴史と文化の重層性を感じることができます。
歴史と由来
西明寺の歴史は平安時代の834年(承和元年)、時の仁明天皇の勅願により天皇が帰依していた三修上人(慈勝上人)が創建したことに始まります。源平合戦の頃には源頼朝が訪れ戦勝祈願をしたと伝わり、室町時代になった頃には17のお堂・300の僧坊のある大寺院となりました。
しかし、天台宗だったことから戦国時代には織田信長の比叡山の焼き打ち直後に西明寺もその被害を受けました。幸運にも本堂・三重塔・二天門が火災を免れ、現代まで残り続けています。
江戸時代に入り、天台宗の僧・天海、公海や、望月越中守友閑により徐々に復興が進められました。庭園「蓬萊庭」もこの復興事業の一環として整備されたのです。
作庭の背景と遠州流の特徴
国指定名勝の庭園”蓬莱庭”は1673年(延宝元年)、望月友閑により復興を記念して作庭された池泉鑑賞式庭園です。作庭したのは江戸時代初期に西明寺復興を担った望月越中守友閑自身といわれ、西明寺再興を記念して、江戸時代初期の名作庭家・小堀遠州の造りを真似て造られました。
斜面を活かした築山に数多くのサツキの刈込みと庭石を配した遠州流庭園となっています。遠州流庭園の特徴である洗練された石組みと植栽の調和が、この庭園でも見事に表現されています。現在は回遊式庭園として園路が整備されており、様々な角度から庭園の美しさを楽しむことができます。
西明寺本坊庭園「蓬萊庭」の見どころ・特徴
蓬萊庭の最大の魅力は、計算された美しさと自然の豊かさが調和した庭園構成にあります。江戸時代から受け継がれてきた作庭技法と、四季を通じて変化する自然の表情が織りなす風景は、訪れる人々に深い感動を与えています。
池泉鑑賞式庭園の魅力
庭園の石組は御本尊の薬師如来と日光・月光の菩薩さま、そして十二神将などに見立てられ、刈込みは雲を表現しています。この宗教的な意味を込めた石組みは、単なる装飾ではなく、仏教的な世界観を庭園という空間で表現した芸術作品といえます。
池中、正面にある石組は鶴島、左手にあるのが亀島となっています。鶴と亀は長寿の象徴として古来より日本庭園に取り入れられてきた要素で、蓬萊庭でもこの伝統的な構成が採用されています。これらの島は蓬萊山を模したもので、庭園名の由来にもなっています。
池泉を中心とした構成は、水面に映る空や周囲の植栽が刻々と変化する表情を見せ、静的でありながら動的な美しさを演出します。また石屋弥陀六作の鎌倉時代の灯籠も配置されており、歴史的な価値も併せ持っています。
自然・景観の美しさ
“蓬莱庭”の園路を進んだ庭園上段には苔の世界が広がり、深山幽谷のような静寂な空間が演出されています。この苔庭は湿潤な気候に恵まれた滋賀県ならではの美しさで、特に雨上がりには鮮やかな緑色が際立ちます。
庭園の魅力は季節によって大きく変化します。春には新緑が美しく、夏には深い緑陰が涼を提供し、秋には境内一円に1,000本を数えるもみじが紅葉して壮観な景色を作り出します。冬には天然記念物の「不断桜」が花を咲かせ、雪景色との対比が美しい風情を醸し出します。
途中にある小さな池が開山の三修上人がこの地にたどり着くきっかけとなった光を放っていたという”阿伽池”があり、開山伝説とも結びついた神秘的な魅力を持っています。
国指定名勝としての価値
西明寺本坊の庭園”蓬莱庭”が国指定名勝となっていることは、その芸術的・学術的価値が国家レベルで認められていることを意味します。江戸時代初期の遠州流庭園として、作庭技法や様式の研究においても重要な位置を占めています。
庭園は単体で評価されるのではなく、鎌倉時代に”飛騨の匠”が建立したと推定されている本堂・三重塔が国宝に指定されています(本堂は”国宝保存法”での第一号)など、境内全体の文化財群との調和の中でその価値が認められています。
また、アメリカのニュース専門放送局CNNで「日本の最も美しい場所31選(Japan’s 31 most beautiful places)」に滋賀県で唯一選ばれたことからも、国際的にもその美しさが評価されていることがわかります。
拝観案内
西明寺本坊庭園「蓬萊庭」は、寺院境内の一部として公開されており、国宝建造物とともに拝観することができます。庭園の美しさを十分に堪能するためには、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。
拝観のポイントと楽しみ方
庭園は回遊式として整備されているため、決められた順路に沿って歩きながら様々な角度から庭園美を楽しむことができます。受付から二天門(本堂)へ向かう階段がありますが、名勝の蓬莱庭を見ながら一方通行で本堂へ登って行く構成になっています。
庭園鑑賞のポイントとしては、まず池泉を中心とした全体の構成を把握し、次に鶴島・亀島などの個別の石組みの美しさを観察することが重要です。石組は御本尊の薬師如来と日光・月光の菩薩さま、そして十二神将などに見立てられているため、仏教的な世界観を感じながら鑑賞すると、より深い理解と感動を得ることができます。
庭園上段の苔の世界では、足音を立てずに静かに歩き、深山幽谷のような静寂な雰囲気を味わってください。また、石屋弥陀六作の鎌倉時代の灯籠も見どころの一つですので、見逃さないよう注意深く観察することをおすすめします。
季節の見どころ・紅葉情報
蓬萊庭は四季を通じて美しい景観を楽しめますが、特に紅葉の季節は格別です。秋には境内一円に1,000本を数えるもみじが紅葉し、庭園の池泉に映る紅葉の美しさは多くの人々を魅了します。紅葉の見頃は例年11月中旬から12月上旬にかけてで、この時期には多くの観光客が訪れます。
春の新緑も見事で、サツキの刈込みが美しい緑色に輝き、池泉の水面との対比が清々しい印象を与えます。夏には深い緑陰が涼を提供し、暑い季節でも快適に庭園散策を楽しむことができます。
冬の魅力は天然記念物の「不断桜」で、雪の中で花を咲かせる珍しい桜として知られています。冬の静寂な庭園に咲く桜の花は、他の季節とは全く異なる幽玄な美しさを演出します。
紅葉期にはJR彦根駅より「湖東三山シャトルバス」が運行されるため、アクセスも便利になります。ただし、この時期は非常に混雑するため、早朝の訪問をおすすめします。
阿伽池と開山伝説
庭園の中には、西明寺開山にまつわる重要な史跡があります。途中にある小さな池が開山の三修上人がこの地にたどり着くきっかけとなった光を放っていたという”阿伽池”です。
伝承によれば承和元年(834年)、琵琶湖の西岸にいた三修上人は、湖の対岸の山に紫の雲のたなびくのを見て不思議に思いました。そこで神通力を用いてこの地に来てみると、美しい池から光が放たれていたといいます。この池が阿伽池で、上人はこの神秘的な現象に感動し、この地に寺院を建立することを決意したと伝えられています。
この池から”池寺”という通称となり、現在では地名にもなっています。阿伽池は庭園の中でも特に神聖な場所として位置づけられており、開山の精神的な体験を現代に伝える重要な史跡といえます。
アクセス・利用情報
西明寺本坊庭園「蓬萊庭」へのアクセスは複数の方法があり、目的や季節に応じて最適な交通手段を選択することができます。自然豊かな場所に位置するため、道中の景色も楽しみの一つとなっています。
交通アクセス
公共交通機関を利用する場合、JR琵琶湖線 河瀬駅・近江鉄道 尼子駅より予約型乗合タクシー「西明寺」下車が便利です。予約型乗合タクシーの時刻表については、事前に西明寺公式サイトで確認することをおすすめします。
紅葉の時期にはJR彦根駅より「湖東三山シャトルバス」運行されており、この期間中は最もアクセスしやすくなります。シャトルバスは湖東三山の三寺院を効率よく巡ることができるため、他の寺院と合わせて参拝したい方には特におすすめです。
レンタサイクルを利用する場合は、近江鉄道 多賀大社前駅・尼子駅・豊郷観光協会案内所にレンタサイクルあり 約6kmとなっています。自転車での道のりは約6kmで、田園風景を楽しみながらのサイクリングも魅力的です。
自家用車の場合は名神高速道路を利用し、彦根ICまたは湖東三山スマートICが最寄りのインターチェンジとなります。駐車場は境内に無料駐車場が用意されています。
<住所> 〒522-0254 滋賀県犬上郡甲良町大字池寺26
拝観時間・料金・駐車場情報
開館時間は午前8時~午後5時(午後4時30分までに入山のこと)となっています。入山料:大人600円で、庭園と寺院境内を合わせて拝観することができます。
駐車場は無料で利用でき、普通車であれば十分な台数が確保されています。ただし、紅葉期などの繁忙期には満車になる可能性があるため、早めの到着を心がけることをおすすめします。
拝観料には庭園だけでなく、国宝の本堂・三重塔の外観拝観も含まれています。また、期間限定で本堂後陣の仏像群特別拝観が行われることもあり、重要文化財の「不動明王三尊像」「釈迦如来像」「阿弥陀三尊像」などを間近で拝観できる貴重な機会もあります。
団体での拝観を希望する場合は、事前に連絡することで対応してもらえます。また、修学旅行や学術調査などの特別な目的での拝観についても相談に応じてもらえますので、詳細は公式サイトで確認するか直接問い合わせることをおすすめします。
参照サイト
・湖東三山西明寺の公式ホームページ:https://saimyouji.com/
・甲良町公式サイト:https://www.kouratown.jp/shisetsuwosagasu/kankoubunkakanren/1387445676701.html
・滋賀県観光情報[公式観光サイト]:https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/1206/