江戸のお洒落心を染物に「富田染工芸」
「周りとかぶらないお洒落なデザインがいい」とネクタイやスカーフなどを探している方もいるのではないでしょうか。
そんな方におすすめなのが「富田染工芸」が手掛けるアイテムです。江戸時代から愛される江戸小紋・江戸更紗を手作業で染め続け、伝統的な柄をデザインしたネクタイやスカーフなど数多く展開しています。
江戸と令和の架け橋となる「富田染工芸」の魅力をまとめました。ぜひ最後までお読みください。
江戸のお洒落心を染物に「富田染工芸」
大正3年(1914年)、東京都新宿区で創業した「富田染工芸」は、140年もの歴史とともに江戸小紋・江戸更紗を手作業で染め続けています。
「染物」と聞くと、着物が頭に浮かんだ方も多いのではないでしょうか。しかし、老舗の富田染工芸が手掛けるアイテムは、和装にとどまりません。
「売っていては、商売の世界では生き残れない」
そう考える「富田染工芸」は、現代の日常に溶け込むアイテムも次々に開発。「粋」な染物として、ネクタイやスカーフ、ハンカチ、レザー小物など幅広いラインアップを展開しています。伝統的な技法を受け継ぎながら、ライフスタイルの移り変わりとともに進化を遂げているのです。
機械化が進む中、手作業を貫く「富田染工芸」は、江戸時代から続く洒落心を令和の時代に届けています。
手作業だから生まれる美しさと繊細さ
富田染工芸の染物は、全工程を手作業で仕上げています。全工程が完了するのにかかる時間は、約1か月ほど。基本的に分業制で、それぞれの職人が自分の持ち場を担当しています。
①色糊調整
色糊は、染め上がりの出来栄えを左右する大事な作業です。色糊は糯粉と米糠を混ぜて蒸し、よく練ってから染料を入れ、試験染をしながら慎重に作ります。
②型付け
長板に白生地を貼り、その上に型紙をのせ、ヘラで糊(目色糊)を置いていきます。型紙の彫り抜かれた部分だけが染め出されることで、生地に柄が染まります。
③地色染め(しごき)
糊が乾いたところで、生地を板から剥がし、染料の入っている地色糊を大きなヘラで全体を均一に塗りつけて、生地の地色を染めます。
④蒸し
地色糊が乾かないうちに蒸箱に入れ、摂氏90~100度で、15~30分ほど蒸します。糊の中に入っている染料を生地に定着させることが目的です。
⑤水洗い
水洗いは、蒸しあがった生地に付着した糊や余分な染料を落とす作業です。昭和38年までは前を流れる神田川で洗っていましたが、現在は地下水をくみあげ、水を噴射する糊落とし機を使用します。
⑥乾燥
水洗いされた生地を、貼って乾燥させ、湯のしで幅を整えます。
これらの徹底した手仕事がもたらす緻密さは、機械では再現できません。富田染工芸ならではの美しさなのです。
一万以上の柄が最大の武器
富田染工芸の武器は、今まで蓄積してきた柄の豊富さ。その数は、1万を超えるそうです。
東京染小紋の中の一つ「江戸小紋」は、当時武士が公務の際に着用する正装に使われるほど、特別な柄でした。江戸時代中頃になると、小紋は庶民の間でも用いられるようになり、それまでの品格を重んじる柄がガラリと変化。自由で粋な感覚の洗礼を受け、さらに磨かれていきました。
「鮫」
紀州徳川家の裃にも使われた格式高い柄。遠目には無地に見えるものの、近くで見ると鮫のように繊細な文様が浮かび上がる、しっとりとした美しさが魅力です。
「家内安全」
「家」「内」「安」「全」で柄が表現された「いわれ柄」。一家が安泰で災いがなく、心身ともに元気に過ごせるようにと願いが込められたデザインです。
「宝尽くし」
様々な宝物を散りばめた縁起のいい柄です。小槌、扇面、束ね熨斗、巻物、分胴、宝鍵、丁子、七宝、珊瑚などの文様が散りばめられています。
豊富な伝統的な柄を、富田染工芸の技によって現代のファッションアイテムとして蘇っているのです。
新しい技術や感性を取り入れる!ファッションブランド「SARAKICHI」
伝統を守りながらも、現代の感性を取り入れて進化を遂げる「SARAKICHI(さらきち)」。シルクの光沢と和柄が織り成すネクタイや、裏表で異なる柄が楽しめるストールなど、日本の芸術美を感じつつも新鮮なデザインが揃います。
特に小紋柄のネクタイは、スーツの内側でひそやかに輝く「粋」を楽しめる一品です。
東京染小紋や江戸更紗の伝統を身に纏うことで、普段の装いが格別なものに変わるといえるでしょう。
古きを守り、今を生きる「5代目富田篤」
受け継がれた伝統を守りながら、新たな可能性を切り開く「富田染工芸」を支えるのは、5代目・富田篤さんです。洋服メーカーでの経験を経て、伝統工芸に現代の視点を取り入れ、よりモダンで機能的なデザインを生み出しています。
さらに、過去の染色パターンはすべてデータベースで管理。伝統の柄を生かした新しいインテリア商品開発にも取り組んでいます。富田染工芸は「伝統を守る」だけではなく、「伝統を育てる」精神で次世代へと受け継いでいるのです。
長く使える、愛着を育む悉皆
富田染工芸の悉皆(しっかい)は、ただ修理するだけではありません。シミ抜きや染め替えなど、細やかなケアによってお客様の着物をより美しく甦らせています。
悉皆の技術を使えば柄つきの着物でも真っ白にすることも可能であるため、着物を4回新しく生まれ変わらせることも可能です。
ものを大切にする精神と持続可能なアプローチは、SDGsの観点からも注目されています。
「悉皆の金額は9,800円~とリーズナブルだから、気軽に相談してほしい」
富田篤さんも、悉皆を気軽に利用する人が増えることを願っています。
江戸の「粋」に触れるワークショップも大人気
「より多くの方に東京染小紋や江戸更紗を知ってもらい、伝統が続いてほしい」
そう考える富田染工芸では、江戸更紗や東京染小紋の技法を体験できるワークショップをほぼ毎日開催。国内外から訪れる方に染物の奥深さを伝え、誰もが気軽に江戸の「粋」に触れられる機会が設けられています。
歴史ある伝統の柄が、現代の生活空間や装いの一部となる日常のアイテムへと息づいていく。この機会に、富田染工芸の繊細で奥ゆかしい美しさを感じてみませんか。
・「富田染工芸」公式HP
・「SARAKICHI」公式Instagram