鳥居株式会社の表装裂 日本の伝統を現代の暮らしへ

博物館や展示会、寺社を訪れると、よく目にする「掛け軸」や「屏風」。

文字や絵がかかれた紙の下に敷かれている表装裂(ひょうそうぎれ)は、職人の手によって織られています。

和室や床の間がある家庭が減り続けるなか、鳥居株式会社は長く続く伝統工芸を大切にしながら、斬新なアイディアで表装裂の商品開発を重ね、進化してきました。

今回は、表装裂を取り扱う鳥居株式会社と表装裂を使った商品を紹介します。

鳥居株式会社

鳥居株式会社は、表装裂を扱う卸売商店です。1872年(明治5年)に京都市中京区絹屋町に創業し、当時は僧侶や尼僧が着る神仏金襴法衣(しんぶつきんらんほうえ)を取り扱っていました。

やがて2代目社長・鳥居長治郎が商店を引き継ぐと、表装用金襴緞子(ひょうそうようきんらんどんす)を開発し、卸売を始めました。金襴と緞子はいずれも紋織物を総称します。

鳥居長治郎は金欄のみならず染色糸用いた緞子に着目し、表装裂を確立していきました。

時代とともに世代を重ねた鳥居株式会社は、表装裂を販売するだけでなく、表装裂を使った商品の開発や、全国の寺社仏閣、博物館や美術館の文化財修復に力を注いでいます。

受け継ぐ伝統と新たな取り組み

生活様式が変化すると、和室や床の間が減り、表具を目にすることが少なくなりました。また、後継者不足や原料不足が続き、表装裂の伝統と歴史の衰退が危惧されました。

そのため2023年、鳥居株式会社表装裂を生業とする企業たちと一緒に一般社団法人『文化財修理表装裂継承協会』を発足しました。これは若手職人の育成や、失われた原料の製造復興、そして今ある技術を絶やさないという事を目的としています。

また、鳥居株式会社のデザイナー・鳥居玲子さんは、表装裂の裏打ち技術に着目し、ワインバッグや封筒などの日用雑貨を手がけています。飾るものだった表装裂が、使うものに進化したのです。

表装裂(ひょうそうぎれ)

「表装裂(ひょうそうぎれ)」とは、掛物や巻物、屏風、襖などの表具に使用される裂地(きれじ)です。

表装裂がまだ存在しなかった頃、法衣や装束の布を活用していました。やがて明治時代になると、表装裂産業が増加し、京都の西陣地域や丹後の織物技術が発展しました。

優れた職人が多くの技法を巧みに使い、シンプルなものから、重ね文様が浮き立つ織物まで多くのデザインを生み出しています。

鳥居を代表する裂地:金襴(きんらん)と緞子(どんす)

「金襴(きんらん)」とは、(綾地や繻子地の)よこ糸に金糸(金箔糸)を織り込んで文様を表した裂地のことです。

金箔糸は和紙に漆を塗り、その上に金箔を押し、細く裁断します。

裁断された金箔(平金糸ともいいます)を緯糸と合わせて織り込む技法は、優れた職人さんの技術が必要とされることから、日本の伝統のひとつとして認められています。

「緞子(どんす)」とは、金糸(金箔糸)を使わず先染めの糸で文様を織り出した裂地のことです。

詫び寂びの落ち着いた色目でありながら、繻子地の表面は光沢があり上品でしなやかな伝統織物です。

茶人によって愛好された緞子は名物裂として多くの種類が生み出され、今もなお愛され続けています。

おすすめ商品3選

京都の西陣や丹後で作られた原料を使い、長年受け継がれてきた伝統と職人の技を駆使する鳥居株式会社の表装裂。裂地の量り売りをはじめ、斬新なアイディアで開発されたインテリア商品も販売されています。

鳥居株式会社が立ち上げた「TORII 裂 PROJECT」は、表具に使われる「表装裂」の魅力に立ち返り、現代的な機能と洗練された息吹を与えることで、閉ざされた可能性を広げようとする試みです。

そんな「TORII 裂 PROJECT」おすすめの3選を紹介します

ワインバッグ 金襴・緞子

「ワインバック 金襴・緞子」は、表装裂を使用した贅沢なワインバッグです。

金襴や緞子で高級感があり、袋としての機能性も備え、お酒とともにプレゼントするのに最適。2015年にグッドデザイン賞を受賞しました。

また、パリのギャラリー併設のコンセプトストアSwayGalleryが取り扱ったため、海外でも人気になりました。日本文化に詳しい方へのプレゼントにも最適な伝統工芸品や日本のアイディア商品を数多く取り揃えたショップとして有名です。大切な人との食事やパーティの手土産として、ワインや日本酒を入れてお渡ししてみましょう。

文様フレーム がくぷち

「文様フレーム がくぷち」は、表装裂を使ったフレームです。

金襴・緞子をふんだんに使い、現代の住まいに溶け込むようモダンアート風に仕上げています。もともと表具はかかれた文字や絵の本紙を裂地と組み合わせて飾るものです。

「文様フレーム がくぷち」は現代版の表具と言えるでしょう。        

「文様フレーム がくぷち」にお好きなポストカードを入れて、部屋に置いたり、壁に飾れます。控えめな色合いなので、お部屋の雰囲気を壊すことなく、自然に溶け込みます。引き出しの奥底に使わないポストカードがあれば、インテリアとして飾ってみてはいかがでしょうか。

かんどこ(御札立て)

「かんどこ」は、金襴緞子の小さなお札立てです。お札を家の中に祀っておきたいけど、「祀る場所がない」「インテリアに合わない」といった悩みを解消してくれるアイテムです。

表面は金襴緞子の織物、裏面は魔除けの朱色の布を使用。朱色は強いエネルギーを放ち、ネガティブなエネルギーを跳ね返すと言われています。邪気を寄せ付けない効果があり、神聖な神様の領域と俗世を区別する結界の意味を持つのです。

壁に画鋲で留めるだけで、お札の置き場所になります。かんどこにお札を祀ることで、「神様に見守っていただけている」という安心感に包まれるでしょう。

とめ

長い歴史と伝統工芸を大切にし、表装裂を身近なものにしようと試みる鳥居株式会社について紹介しました。

和室や床の間が少なくなり、表具も減少していくなか、表装裂を「装飾品」から「日用品」として多くの商品を開発しました。

鳥居の表装裂を取り入れた商品で、京都の伝統を身近に感じてみませんか。

鳥居株式会社公式HP
鳥居株式会社 金襴緞子 オンラインショップ

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