サスティナブルな器・砥部焼で普段使いの贅沢を知る
サスティナブルやSDGsといった考え方が普及し、環境に配慮した質の良い物を大切に長く使いたいと思う人が増えてきました。
今回は、丈夫で欠けにくい特徴を持つ、普段使いにぴったりな砥部焼(とべやき)をご紹介します。
砥部焼は手頃な価格で、白磁に青く染付がされた伝統的なデザインから、若手作家の可愛らしくおしゃれなデザインまで多様です。
砥部で取れた陶石を原料に、砥部の窯元で陶工たちが手作りしている砥部焼は、一つひとつに温かみが感じられエシカルな焼き物として愛されています。
砥部焼の特徴は厚くて丈夫な職人の手作り
砥部焼の特徴は「ぽってり」という言葉が最適な厚手で丸みのあるフォルムと、白磁に大胆に描かれた青い染付です。
砥部焼は砥部で産出される陶石を原料としており1300℃という高温で焼くためとても硬く、厚みがあるので欠けにくく丈夫です。夫婦喧嘩で投げても割れないと言い伝えがあり、喧嘩茶碗とも呼ばれていました。
また、熱が伝わりにくいので料理も冷めにくかったり、持っても熱くなかったりと使いやすく、丸みのある縁があり入れた物がこぼれにくいなど実用的です。
しかし、実用品にありがちな大量生産ではなく、一つひとつ職人の手仕事によって作られ染付も手書きで仕上げる伝統を守っています。
砥部焼は、丈夫で日常使いしやすい器でありながら、職人の手仕事を味わえる贅沢な器と言えるでしょう。
砥部焼は伝統と新しい魅力にあふれている
砥部焼は手仕事と伝統の染付を守りながらも、新しい感覚も柔軟に受け入れています。
伝統的な意匠はしっかり残しつつも、多様なデザインも増えました。現在約100軒の窯元があります。
伝統を守る
砥部焼と言えば、玉縁のある白くぽってりしたフォルムに、砥部焼の伝統的な文様といわれる「太陽文」「唐草文」「なずな文」を大胆な筆遣いで描いた染付の器でしょう。
呉須という顔料を使って染付をするため色は主に藍青色です。その他にも青磁や白磁、色絵などもあります。
また、「白磁」「染付作品」「青磁」「天目(鉄釉)」の四種類が国の伝統的工芸品の指定を受けています。
新しい感覚
近年は、若い作家や女性作家が工房を構え、新しい感覚の砥部焼を作っています。
水彩画のような淡くて可愛いデザインや、アジアンテイストな柄や北欧風のデザイン、現代アート作品のようなデザインなど多様です。
砥部焼のマグカップが人気上昇中
砥部焼の伝統的な和食器の需要は多いですが、最近はマグカップが人気となっています。
砥部焼らしさを継承しながらも、それぞれの窯元が特徴的なデザインを施しています。日常に彩を添えるおしゃれでかわいいカップたちです。
砥部焼の歴史には村人の苦役と陶工達の技術革新があった
砥部焼のできるまでの歴史と、砥部焼が産業として発展する歴史を探ります。
古墳時代の砥部
砥部の山は窯の立地に適した傾斜をしており燃料となる木材も豊富だったことから、古墳時代から須恵器が焼かれていました。
発見された須恵器の中でも「子持高杯」は国指定文化財になっています。江戸時代の半ばまでは現在のような磁器ではなく陶器が作られていました。
砥石としての歴史
奈良・平安時代から、砥部・外山の砥石山から切り出される砥石は、白色で質が軟らかく刀剣をとぐのに適していたことから広く知られていました。
砥石の生産が盛んな一方で、切出しの際に出る砥石屑の処理は無償で動員されていた村人に任せていました。村人は困りついに労役負担の免除を大洲藩に願い出た「砥屑捨夫事件」が起こったのです。
砥石屑を原料にしたサスティナブルな焼き物
1775年(安永4年)に大洲藩主・加藤泰侯(かとうやすとき)が、捨てられていた砥石屑を再利用し磁器づくりを行うよう、杉野仗助に命じたことから砥部焼は始まりました。
杉野仗助は登り窯を築き試行錯誤を繰り返すも、1776年(安永6年)に白磁器の焼成に成功し、その後も絶え間なく技術の改良が続けられ独自の発展を遂げ海外に輸出されるようになりました。
明治時代の砥部焼
明治時代には「伊予ボール」の名で輸出されるようになり、シカゴ万国博覧会では向井和平が製作した「淡黄磁」が1等賞を受賞し、砥部焼の名は世界に知られるようになります。
民芸運動推進者が砥部焼を絶賛
大正、昭和の戦前は生産が落ち込んだ時代でしたが、戦後は手仕事の良さが見直され、柳宗悦ら民芸運動の推進者から高い評価を受けます。
昭和51年には「伝統的工芸品産地」として指定され、250年余りの歴史の中で、手仕事が途切れることなく繋がってきたことは、砥部の地域だけでなく日本にとっても大きな財産です。
砥部焼は、大量のごみだった砥石屑から生まれた、サスティナブルな磁器と言えるでしょう。
魅力的な砥部焼を買う
砥部焼は通販サイトが充実しており、それぞれの窯元が通販サイトを持っています。また、窯元別、作家別、商品別と、欲しいものを簡単に検索できるショッピングモールもあり便利です。
都内では、自由が丘の「砥部焼の浜陶」や、豪徳寺の「うつわのわ田」など、各所で購入できます。観光がてら、産地に足を運ぶのも楽しいでしょう。
まとめ
ぽってりとした白磁に大胆に描かれた青い染付が特徴的な砥部焼は、丈夫な上に手頃な価格なので普段使いに適した器です。現在も一つひとつが陶工の手作りなので、手仕事ならではの温かみが感じられます。
近年は若い作家や女性の作家も増え、伝統を受け継ぎながらも新しく斬新なデザインの砥部焼も作られるようになりました。
もともと捨てられていた砥石屑の再利用から生まれた砥部焼は、サスティナブルを体現した器と言えるでしょう。伝統ある手作りの磁器が日常で使える贅沢を味わってみませんか?