
走水神社|由緒ある神社の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド
神奈川県横須賀市にある走水神社は、日本武尊と弟橘媛命を祀る由緒ある神社です。古事記や日本書紀にも記される古代の伝説が息づく神聖な地で、東京湾の美しい景観と共に多くの参拝者を魅了しています。
走水神社の概要・基本情報
走水神社は、十二代景行天皇の皇子である日本武尊と、その后である弟橘媛命の二柱を御祭神として祀る神社です。三浦半島の東端近く、東京湾に面した走水の地に鎮座し、古事記や日本書紀にもその名が記される歴史ある聖地として知られています。
走水の地名は、すでに古事記(712年)や日本書紀(720年)の中に表れており、大和朝廷時代には上総(千葉県)を経て東北地方に渡る最も便利な道として、この地方に古東海道が通じていました。現在は横須賀屈指のパワースポットとしても親しまれ、特に女性の参拝者から高い人気を集めています。
歴史と由来
神社の創建された年代については、享保年間の火災で神社の記録や社宝が焼失してしまったため正確には分かりません。しかし、伝説では景行天皇即位四十年(110年)、東夷征討の命を受けた日本武尊がこの走水から上総へ渡る際に、村民に「冠」を賜ったため、村人等がこの冠を石櫃に納め土中に埋めて、その上に社を建てたことが始まりとされています。
日本武尊は上総国へ軍船で渡ろうとしましたが、海上で突然強い風が吹き海が荒れ狂い、軍船は波にもまれ進むことも戻ることもできない危機的状況に陥りました。この時、弟橘媛命は「さねさしさがむのをぬにもゆるひの ほなかにたちてとひしきみはも」の歌を残し、日本武尊に代わって海に身を投じ、風波を鎮めました。
祭神とご利益
走水神社の御祭神は日本武尊と弟橘媛命の夫婦神です。日本武尊は西国・東国を平定した日本神話のスーパーヒーローとして知られ、武勇と国家安泰の神として信仰されています。一方、弟橘媛命は夫を救うために自らの命を犠牲にした献身的な愛の象徴として、女性らしさや夫婦和合、海上安全の神として崇敬されています。
特に弟橘媛命の自己犠牲の精神から、真の女性らしさを学ぶパワースポットとして「女子力アップ」のご利益があるとされ、多くの女性参拝者が訪れています。また、海に身を投じて航海の安全を守ったことから、海上安全、交通安全のご利益でも知られています。
走水神社の見どころ・特徴
走水神社は歴史的価値の高い建造物と美しい自然環境が調和した、見どころ豊富な神社です。境内には古代の伝説を物語る数々の史跡が点在し、訪れる人々に深い感動を与えています。
建造物・構造の魅力
海にほど近い鳥居をくぐって境内に入り、まっすぐ参道を進んだ先にある石段を登りきると、すぐに本殿があります。本殿は伝統的な神社建築の美しさを保ちながら、海を望む高台という立地を活かした荘厳な佇まいを見せています。
境内には複数の境内社も鎮座しており、水神社は走水神社本殿の右手奥に位置し、その名前のとおり水を祀る境内社です。このあたりには水の化身である河童伝説も残っており、河童が遭難した人を助けたり、漁業の手引きをして大漁をもたらしたとも伝えられています。さらに裏山には神明社・須賀神社・諏訪神社の三社が祀られており、神聖な空気に包まれたパワースポットとして親しまれています。
手水舎にある湧水は、深さ30mから湧き出ているミネラルを含む真水で、富士山より永い歳月をかけてこのあたりに湧き出ていると言われています。宿場町として栄えていた走水では、船に積む飲料水として用いられており、豊富に地下水が湧き出ることが「走水」の地名の由来とする説もあります。
自然・景観の美しさ
本殿の前で振り返ると、日本武尊と弟橘媛命の悲しい物語の舞台になった東京湾・浦賀水道がよく見えます。この絶景は走水神社の大きな魅力の一つで、古代の伝説と現代の美しい海の風景が重なり合う感動的な光景を楽しむことができます。
走水神社は、現在ほど各地に桜の名所と呼ばれるような場所ができる以前から、横須賀市民憩いのお花見スポットとして親しまれてきた場所です。境内にはたくさんの桜の木が植えられていて、桜の季節には走水神社全体が華やかな雰囲気に包まれます。現代では穴場の桜スポットとして、混雑を避けてゆっくりとお花見を楽しむことができます。
石段の途中には、御神木のイチョウの巨木が立っています。この御神木は長い年月を経て堂々とした姿を見せており、神社の神聖な雰囲気を一層高めています。
歴史的石碑と記念碑
走水神社には弟橘媛命に関する重要な石碑や記念碑が複数あります。明治四十三年六月、弟橘媛命の歌碑が東郷平八郎、乃木希典など七名士により社殿の裏手に建てられました。1910年(明治43年)に、東郷平八郎、伊東祐亨、井上良馨、乃木希典、高崎正風、上村彦之丞、藤井茂太の7名が発起人となり建立され、除幕式にも参列しています。
社殿の階段下の右側にある「舵の碑」は、弟橘媛命の崇高な行いにあやかり、航海の安全を願って国際婦人年(昭和五十年)を機に建てられました。この舵の碑は弟橘媛命の顕彰と海の安全と平和を祈る碑として、1975年(昭和50年)に建立されたものです。
左側にある「包丁塚」は、走水の住人大伴黒主が日本武尊に料理を献じて喜ばれたとの古事により、包丁への感謝と鳥獣魚介類の霊を慰めるため、昭和四十八年に建てられたものです。これらの記念碑は、走水神社の歴史的価値と地域との深いつながりを物語る貴重な文化遺産となっています。
参拝・拝観案内
走水神社は終日参拝可能な開かれた神社として、多くの方に親しまれています。古代の伝説が息づく神聖な場所での参拝は、きっと心に深い感動を与えてくれるでしょう。
参拝作法とマナー
走水神社での参拝は一般的な神社と同様の作法で行います。まず鳥居をくぐる前に一礼し、参道は中央を避けて歩きます。手水舎で手と口を清めてから本殿へ向かいましょう。手水舎にある湧水は、深さ30mから湧き出ているミネラルを含む真水で、富士山より永い歳月をかけてこのあたりに湧き出ていると言われています。この清らかな水で身を清めることで、より神聖な気持ちで参拝に臨むことができます。
本殿前では「二拝二拍手一拝」の作法で参拝します。日本武尊と弟橘媛命の夫婦神に、感謝の気持ちと願いを込めてお参りしましょう。特に弟橘媛命の献身的な愛の精神に思いを馳せながら参拝すると、より深い体験が得られるとされています。
階段の上り下りの際は安全に注意してください。石段は弟橘媛命の苦難を表したものとも言われており、一歩一歩大切に登ることで、女子力アップのご利益がいただけるとも伝えられています。
年中行事・季節のイベント
走水神社の例大祭は10月15日に行われます。この日は地域の人々が集まり、神社の歴史と伝統を大切に受け継ぐ重要な行事となっています。地元に愛される神社として、夏祭りも盛大に開催され、多くの参拝者で賑わいます。
桜の季節には境内が美しい桜で彩られ、お花見スポットとしても親しまれています。桜の名所が増えた現代では、桜の季節でもそこまで混雑することはなく、走水神社は横須賀のお花見スポットの中でも穴場の一つと言えるでしょう。静かな環境で桜を楽しみながら参拝できるのは、走水神社ならではの魅力です。
年間を通じて、海上安全や交通安全の祈願祭なども執り行われており、漁業関係者や船舶関係者の参拝も多く見られます。詳細な行事予定については、事前に神社にお問い合わせすることをおすすめします。
御朱印・お守り情報
御朱印はシンプルな構成で、相模国走水の文字と「走水神社」の朱印が押されます。歴史ある神社らしい格調高い御朱印として、多くの参拝者に人気があります。
オリジナルの御朱印帳も用意されており、表面には桜、裏面には海に身を投げる弟橘媛を描いたもので、紺色とピンク色の2色を用意しています。弟橘媛命の物語を美しくデザインした特別な御朱印帳は、走水神社ならではの記念品として大変喜ばれています。
お守りについては、海上安全や交通安全、女子力アップなど、御祭神のご利益に関連したものが授与されています。特に弟橘媛命にちなんだお守りは、真の女性らしさを願う方々に人気があります。
なお、宮司は叶神社(西)と兼務しており、走水神社には常駐していません。御祈祷・御祓い等については叶神社(西)にお問い合わせください。御朱印やお守りの授与についても、事前に確認されることをおすすめします。
アクセス・利用情報
走水神社は横須賀市の観光地としても知られており、公共交通機関でのアクセスが便利な立地にあります。美しい海の景色を楽しみながら参拝できる環境が整っています。
交通アクセス
電車・バスでのアクセス 京急馬堀海岸駅からバス「観音崎行」(約8分)、JR横須賀駅からバス「観音崎行」(約20分)で、いずれも「走水神社」バス停下車すぐです。バス停から神社まではとても近く、迷うことなく到着できます。
自動車でのアクセス 横浜横須賀道路、馬堀海岸インターを出て右折し観音崎方面に向かって走り、バス停「走水神社」手前(ファミリーマート)を右折します。観音崎方面への案内標識に従って進むことで、スムーズに到着できます。
神社は横須賀美術館からも近く、横須賀美術館から徒歩10分程の所にありますので、行きや帰りに寄るというルートがおすすめです。観光と合わせて参拝を楽しむことができる立地の良さも魅力の一つです。
<住所> 〒239-0811 神奈川県横須賀市走水2-12-5
拝観時間・料金・駐車場情報
拝観時間
御参拝は終日可能で、社務所は9:00〜15:00の営業時間となっています。いつでも参拝できる開かれた神社として、早朝や夕方の静かな時間帯にも訪れることができます。
拝観料金
参拝は無料です。境内の散策や見学についても、特別な料金は必要ありません。御朱印やお守りなどの授与品については、それぞれ初穂料が設定されています。
駐車場情報
神社には参拝者用の駐車場が用意されており、自家用車での参拝も可能です。ただし、桜の季節や例大祭などの行事の際は混雑が予想されるため、公共交通機関の利用をおすすめします。
その他の利用案内
神社周辺は坂道や石段があるため、歩きやすい靴での参拝を心がけてください。また、神社は階段を昇った高台にあり海を一望できるのも魅力の一つで、写真に納めたくなる素晴らしい景色が楽しめます。カメラを持参して、美しい景色と合わせて参拝の思い出を残すのもおすすめです。
参照サイト
・走水神社 公式ホームページ:http://www12.plala.or.jp/hasirimizujinjya/
・神奈川県神社庁:https://www.kanagawa-jinja.or.jp/shrine/1205065-000/
・横須賀市観光情報:https://www.cocoyoko.net/spot/hasirimizu-z.html