
今宮戎神社|由緒ある神社の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド
大阪ミナミの賑わいの中に静かに佇む今宮戎神社は、商売繁盛の神様「えべっさん」として1400年以上もの間、大阪の人々に親しまれ続けてきた由緒ある神社です。毎年1月の十日戎では約100万人もの参拝者が訪れ、福笹を求める人々の活気に満ちた光景は、大阪の新春風物詩として全国に知られています。
今宮戎神社の概要・基本情報
今宮戎神社は大阪市浪速区恵美須西一丁目に鎮座し、推古天皇8年(西暦600年)の創建と伝えられています。現在は神社本庁の別表神社として、地域の信仰の中心的役割を担っています。
歴史と由来
今宮戎神社の創建は推古天皇8年(西暦600年)、聖徳太子が四天王寺を建立する際に、その西方の守護神として鎮座されたことに始まります。当初は四天王寺の鎮護神として建立されましたが、時代とともにその役割は大きく発展していきました。
古代にはこの辺りは海岸沿いで、海・里・野の諸産物が物々交換される「市」が開かれ、その市の守り神として戎さんが祀られていました。これが後の商売繁盛の神としての信仰の基礎となったのです。
豊臣時代には庶民のえびす様への信仰がより厚くなり、豊臣秀頼は片桐且元に社殿造営の普請奉行を命じました。また、江戸期になると大阪は商業の町として一層の繁栄を遂げ、それと期を一にして今宮戎神社も大阪の商業を護る神様として篤く崇敬されるようになりました。
祭神とご利益
今宮戎神社の主祭神は天照皇大神、事代主命、素盞嗚尊、月読尊、稚日女尊の五柱で、中でも事代主神はえびすとして特に信仰を集めています。
御祭神「事代主神」は一般には商売繁盛の神様と広く知られていますが、「言霊」をつかさどる神、つまり智恵と言語を掌る神様として古代から厚く信仰されています。また、幼い子供たちの守護神としても信仰される御神慮があり、幅広いご利益を授ける神様として崇敬されています。
事代主神は右手に釣竿、左手に鯛を持つ姿で親しまれており、もともとは漁業の神様でしたが、時代とともに商売繁盛、福徳円満、五穀豊穣の神として広く信仰されるようになりました。
今宮戎神社の見どころ・特徴
今宮戎神社は都市部の神社でありながら、長い歴史に培われた独特の魅力と文化的価値を持つ神社です。境内は決して広くありませんが、そこには1400年を超える歴史の重みと、大阪の商業文化が色濃く反映されています。
建造物・構造の魅力
今宮戎神社の社殿は戦災によって一度焼失しましたが、戦後に再建され、現在の姿となっています。本殿は南向きに建てられており、これには興味深い逸話があります。江戸期の商売の中心地、船場から見ると本殿は南向きでそっぽを向いているので、お祭りの時くらいこっちを向いてくれと願って、独特の参拝作法が生まれました。
境内には参拝者が鳴らす銅鑼が設置されており、これは他の神社ではあまり見られない特徴的な設備です。また、十日戎の際には境内全体が福笹を求める参拝者で埋め尽くされ、平時とは全く異なる賑やかな雰囲気に包まれます。
境内の雰囲気と特色
約170メートル北方に廣田神社(大阪市)が鎮座しており、関係が深いとされています。これは兵庫県西宮市の西宮神社と廣田神社の位置関係と同様で、えびす信仰における興味深い共通点となっています。
境内は比較的コンパクトながら、十日戎の期間中は約100万人もの参拝者を受け入れる工夫が随所に見られます。参拝ルートや福笹の授与場所など、大勢の人々が安全に参拝できるよう配慮された設計となっています。
大阪市指定文化財としての価値
今宮戎神社は平成25年度に大阪市指定文化財に指定されており、その歴史的・文化的価値が公的に認められています。特に十日戎の祭礼や福笹の文化は、大阪の商業文化を象徴する重要な無形文化財としての側面も持っています。
延宝三年(1675)の現存する最も古い大阪案内の図「葦分舟」にも十日戎の状景が描かれており、江戸時代から続く祭礼の歴史的価値の高さを物語っています。また、文芸の分野においても江戸初期の俳人小西来山の句集で今宮のことが書かれており、中期の大田蜀山人の紀行文にも十日戎が記されています。
参拝・拝観案内
今宮戎神社への参拝は年間を通じて可能で、商売繁盛や福徳円満を願う多くの人々が訪れます。特に独特の参拝作法や年中行事は、この神社ならではの魅力となっています。
参拝作法とマナー
今宮戎神社では一般的な神社と同様に、手水舎で身を清めてからの参拝が基本となります。しかし、今宮戎神社には独特の参拝作法があります。それが「裏参り(念押し参り)」です。
この参拝方法は、まず正面の本殿で通常通りお参りを済ませた後、本殿の裏側に回って設置されている銅鑼を叩いてもう一度お祈りするというものです。これは「念を押す」という大阪らしい発想から生まれた参拝方法で、えべっさんが少し耳が遠いと伝えられているため、近くから銅鑼を鳴らすことで願いがしっかりと届くとされています。
また、江戸期の商売の中心地、船場から見ると本殿は南向きでそっぽを向いているため、お祭りの時くらいこっちを向いてくれという願いから始まったとも言われています。この裏参りは今宮戎神社の名物となっており、参拝の際は忘れずに体験していただきたい作法です。
十日戎の年中行事・季節のイベント
今宮戎神社で最も重要な神事が「十日戎」です。毎年1月9日から11日までの3日間開催され、約100万人もの参拝者が訪れる大阪の新春風物詩となっています。
9日を「宵戎(よいえびす)」、10日を「本戎(ほんえびす)」、11日を「残り戎(のこりえびす)」または「残り福」と呼び、期間中は「商売繁盛で笹もってこい」の掛け声とともに福笹の授与が行われます。福笹には銭叺(ぜにかます)、銭袋、末広、小判、丁銀、烏帽子、臼、打ち出の小槌、米俵、鯛などの縁起物「吉兆(きっちょう)」を付けることができ、福娘による飾り付けを受けることができます。
夏には7月22日23日の夕刻に「こどもえびす」が開催されます。事代主神が幼い子供たちの守護神としても信仰されることから始まったこの行事では、雪のスロープや雪のゲレンデが設けられ、夏に雪遊びができる珍しいイベントとして親子連れに人気を集めています。
また、この期間中には「マンザイ新人コンクール」も開催されます。中世以来、くぐつまわし(人形遣い)が戎神の神徳を説いて回り、戎神は歌舞音曲の神ともされることから始められ、現在では漫才師の登竜門として定着しています。
御朱印・お守り情報
今宮戎神社では通常の御朱印と十日戎期間限定の御朱印の2種類を授与しています。通常の御朱印は中央に「今宮戎神社」、左下に「摂津今宮戎神社」の御朱印、右上に鯛の御朱印が捺され、「奉拝」「えびす大神」「今宮戎神社」と日付が揮毫されます。十日戎限定の御朱印では、十日戎という文字と福笹の笹の絵があしらわれた特別仕様となります。
また、季節ごとの限定御朱印も年5種類授与されており、春夏秋冬と十日戎のデザインが用意されています。授与数に限りがあるため、詳細は公式サイトで確認することをおすすめします。
お守りは商売繁盛の神社らしく、福小判、福銭、打ち出の小槌などの商売繁盛・金運上昇に関するものが豊富に用意されています。特に人気なのは財布に入れておくとお金に困らないとされる「福小判」(300円)や、福笹につける大判(1500円)です。また、子供の健やかな成長を願う「福娘守」なども授与されています。
御朱印とお守りの授与時間は午前9時から午後5時までで、十日戎期間中は午後10時まで延長されます。
アクセス・利用情報
今宮戎神社は大阪市の中心部に位置し、複数の路線からアクセス可能な立地にあります。公共交通機関の利用が便利で、徒歩圏内に複数の駅があります。
交通アクセス
今宮戎神社へのアクセスは非常に便利で、以下の路線が利用できます。
最も近いのは南海高野線「今宮戎駅」で、駅から徒歩すぐの距離にあります。また、Osaka Metro御堂筋線「大国町駅」3番出口から東へ徒歩約5分、Osaka Metro堺筋線「恵美須町駅」5番出口から西へ徒歩約5分でアクセス可能です。
阪堺線「恵美須町駅」からは西へ徒歩約5分、JR「新今宮駅」からは北へ徒歩約10分、または南海高野線に乗り換えて今宮戎駅を利用することもできます。
十日戎期間中は周辺で交通規制が行われるため、公共交通機関の利用を強くおすすめします。また、心斎橋や難波などの繁華街からも徒歩圏内にあり、観光と合わせての参拝も可能です。
<住所> 〒556-0003 大阪市浪速区恵美須西1-6-10
参拝時間・駐車場情報
今宮戎神社の開門時間は午前6時から午後5時までです。ただし、南側脇門のみ午後10時まで開門しています。本殿の開扉時間は午前6時30分から午後5時までとなっています。
授与所での御朱印やお守りの授与時間は午前9時から午後5時まで、ご祈祷の受付時間は午前9時30分から午後4時30分までです。ご祈祷は随時行われていますが、予約された方が優先されるため、事前の電話予約をおすすめします。
駐車場は境内北側、阪神高速高架下より境内に入った西側(右手側)に約10台分の無料駐車場があります。ただし、参拝時間に限り利用可能で、1月、7月、11月の土日、12月は利用できない期間があります。特に十日戎期間中とその前後は神社周辺で交通規制が行われるため、駐車場の利用はできません。
周辺にはコインパーキングも複数ありますが、十日戎期間中は大変混雑するため、公共交通機関の利用が最も確実です。
参照サイト
・今宮戎神社 公式ホームページ:https://www.imamiya-ebisu.jp/