信楽焼の魅力とは?特徴や歴史を詳しく解説!

信楽焼の魅力とは?特徴や歴史を詳しく解説!

信楽焼といえば、たぬきの置物を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
実は、古い歴史を持つ焼き物であり、その魅力は多岐にわたります。今回は信楽焼の魅力について、特徴や歴史を踏まえながら詳しく解説します。

信楽焼の特徴

信楽焼は、滋賀県甲賀市信楽町の焼き物として知られる陶磁器です。

信楽町の近隣には琵琶湖があり、土には花崗岩や流紋岩が風化した物質が含まれているため粘り気があります。さらに、耐火性が優れている点も、信楽町から取れる土の特徴です。

大地の恵みをそのままに生かし、釉薬をかけずに焼き締める信楽焼が生まれたのも、この恵まれた土地のおかげといえるでしょう。近年は、色のある釉薬を使うケースもありますが、信楽焼の素朴な特徴はそのまま生かされています。

信楽焼とたぬきの関係

信楽焼とたぬきの関係

信楽焼が全国区になったきっかけのひとつが「たぬきの置物」です。たぬきは「他(た)」を「抜く」とも読めるため、昔から商売繁盛を導く縁起物とされてきました。

また、信楽焼のたぬきには、「八相縁喜(はっそうえんぎ)」といって各部位に縁起を担ぐ意味が込められています。例えば、大きなお腹は冷静さ大胆さを兼ね揃えた「太っ腹」を意味し、たぬきが持つ徳利には飲食に困らないという意味があるそうです。

1951年に当時の天皇陛下が信楽を訪れた際に、信楽焼のたぬきに日の丸を持たせて出迎えたところ大変喜ばれたことから、全国に知れ渡るようになりました。

以降、「信楽焼=たぬきの置物」という構図が生まれ今日に至っています。

朝の連続ドラマ「スカーレット」のモチーフ

信楽焼は、NHKの朝の連続ドラマ「スカーレット」でも取り上げられました。

モチーフとなったのは、女性の陶芸家であり、失われつつあった伝統的な古信楽の復興に携わった人物です。「スカーレット」というタイトルは、信楽焼の焼成過程で緋色に発色することが由来とされています。

信楽焼の歴史

信楽焼の歴史

信楽焼は、日本六古窯のひとつとして数えられる焼き物です。

日本六古窯とは、「信楽」「備前」「丹波」「越前」「瀬戸」「常滑」の6つを指し、いずれも平安時代から鎌倉時代の中世に生まれました。続いては、信楽焼の歴史について解説します。

鎌倉時代

信楽焼は、13世紀の鎌倉時代に生まれたといわれています。当初は、同じく日本六古窯のひとつである常滑焼の技術を色濃く受けていました。

常滑焼と区別がつかないほど酷似していたとされる信楽焼ですが、14世紀に入ると独自の作風が登場します。

この頃は、主に農耕を行う人々の間で使われており、「甕(かめ)」や「壺(つぼ)」など生活に密着した製品が作られていました。

安土桃山時代

信楽焼が生まれた当初から、粘り気の強い土に恵まれており、当時も土の素材を生かした素朴な風合いが特徴でした。

侘茶(わびちゃ)が普及した安土桃山時代には、「茶の湯」の精神に通ずるものがあるとして、茶人の間で信楽焼が流行します。

さらに、信楽町近隣には京都や堺、奈良といった当時の主要都市があったことから、町人の間でも信楽焼が浸透し、日本でも屈指の窯元として知られるようになりました。

江戸時代

江戸時代に入り登り窯が登場したことで、信楽焼も大量生産が可能となりました。

さらに、釉薬を使わない焼締製造が信楽焼の特徴でしたが、この頃からは全国のニーズに対応するために釉薬も用いられるようになっています。

また、当時の信楽焼のメインであった茶壺に加えて、生活雑器の生産も本格的になり、庶民の暮らしになくてはならない焼き物として浸透していきました。

昭和〜現在

前章でも触れたように、昭和時代には「たぬきの置物」をきっかけに全国区になった信楽焼ですが、実は国会議事堂にも信楽焼で作られたテラコッタの瓦が使われています。

テラコッタとは、イタリア語で「焼いた土」という意味があり、素焼きの焼き物を指します。

国会議事堂が建設されたのは、たぬきの置物が浸透するよりも前の昭和11年のことでした。全国各地から集められた様々な石材が施されていますが、その中でも目立つ位置にあるのが信楽焼のテラコッタです。

中央塔の屋根部分に、約4,000枚も施されているため、一目で信楽焼の勇姿を目にすることができます。そのほか、大阪万国博覧会で建設された「太陽の塔」にも、信楽焼のタイルが使用されています。

このように、信楽焼は時代に合わせてさまざまな変化を遂げながら私たちの暮らしに浸透している焼き物です。
現在では、宿泊施設のお風呂や飲食店の手洗い鉢などにも採用されており、インテリアやエクステリアとしても愛されています。

信楽焼の魅力

信楽焼の魅力

信楽焼の特徴や歴史を踏まえると、さまざまな魅力が見えてきます。続いては、信楽焼の魅力について解説します。

大地を感じる素朴な風合い

信楽焼の大きな特徴は、信楽町の宝ともいえる良質な土を生かした風合いでしょう。大地が持つ自然豊かな力をそのままに感じられる素朴な質感は、独特の温かみを感じさせてくれます。

大物を作るのに適した素材

信楽焼で使われる土は、たぬきの置物をはじめとする大物を作るのにも適しています。そのため、古くから「甕(かめ)」や「壺(つぼ)」、「大皿」など生活に役立つ焼き物作りにも生かされてきました。

細工のしやすさ

信楽町の土は、粘度が高く細工がしやすい点も特徴です。信楽焼といえば大物というイメージもありますが、実は細工のしやすさから新仏具や煎茶器など繊細なデザインが必要なアイテムにも採用されています。

つまり、信楽焼はサイズを問わず変幻自在に作品を作り出せる有能な焼き物であり、現在でも多く愛用されている理由のひとつといえるでしょう。

多彩な発色

信楽焼の特徴として、焼締め時に生まれる多彩な発色が挙げられます。信楽焼の多くは、釉薬を施さず高温で焼き締めるのが特徴です。この時、作品を置いた位置や表面に降りかかった灰の加減により、それぞれ異なる風合いに仕上がります。

例えば、土の中に鉄分が含まれていた場合、焼成時に参加することで赤褐色になります。信楽焼では「火色」もしくは「緋色」と呼ばれる発色です。炎が当たらない箇所は白い地の色が残り、緋色との割合が多岐にわたるため、自然な変化を楽しめる点も信楽焼の魅力といえるでしょう。

緋色以外にも、灰に含まれる成分であるアルカリや石灰などが化学反応を起こしてガラス質になる「自然釉」や信楽町の土に含まれる長石が焼成時に溶けてガラスの粒となる「霰(あられ)」なども信楽焼の特徴です。

信楽焼の窯元

信楽焼の窯元

信楽町には、山の傾斜をうまく活用した登り窯が複数あります。多くは使われなくなりましたが、現在でも活用しつつ信楽焼を世に送り出している窯元も見られます。そのうち2つの窯元を紹介します。

重蔵窯

信楽焼の中でも、大型のロクロを使用して作品を作る技術を受け継ぐ数少ない窯元が重蔵窯です。重蔵窯の代表的な作品として、水が奏でる音を楽しむ水琴窟が挙げられます。

天然素材だからこそ表現できる重蔵窯の水琴窟は、空間に柔らかい音色を響かせてくれます。

参照元:重蔵窯 – 水琴窟を現代の仕様「琴音」に作り上げた信楽焼大物ろくろ伝統工芸士

宗陶苑

宗陶苑は、日本でも屈指の大きな登り窯を有する窯元です。全11室が備わっており、一度の焼成で15,000点もの作品を焼き上げられます。

大自然が生んだ土と炎による唯一無二の作品たちは、焼き物を愛する人たちの心を掴んで話しません。朝の連続ドラマ「スカーレット」のロケ地としても知られ、事前予約で見学可能です。

参照元:信楽焼の窯元「宗陶苑」

まとめ

まとめ

今回は、誰もが知る有名な焼き物である信楽焼について解説しました。信楽焼は、滋賀県甲賀市信楽町の焼き物であり、認知度の高い「たぬきの置物」をはじめ、国会議事堂や「太陽の塔」などにも使用されています。

また、古くから茶人や町民などに愛され、生活に欠かせない雑貨も多く生産されてきました。大地の風合いをそのままに生かした釉薬を使わない作り方が主流でしたが、近年は素朴な質感を生かしながら釉薬を使った製品も増えています。

新進気鋭の作家も多数見られるので、ぜひ一度信楽焼を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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