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西教寺庭園|小堀遠州作庭による名園と明智光秀ゆかりの古刹の魅力を完全ガイド

西教寺庭園|小堀遠州作庭による名園と明智光秀ゆかりの古刹の魅力を完全ガイド

滋賀県大津市坂本に位置する西教寺庭園は、江戸時代初期の名作庭家・小堀遠州による池泉観賞式庭園をはじめ、それぞれ異なる趣を持つ4つの庭園が楽しめる隠れた名所です。天台真盛宗の総本山として全国に450余りの末寺を有する西教寺の境内で、戦国武将・明智光秀ゆかりの歴史とともに、琵琶湖を表現した美しい庭園美を堪能できます。

西教寺庭園の概要・基本情報

西教寺庭園|小堀遠州作庭による名園と明智光秀ゆかりの古刹の魅力を完全ガイド

西教寺庭園は、天台真盛宗総本山の西教寺境内にある4つの庭園群の総称です。比叡山の南東山麓という立地を活かし、裏山の斜面から琵琶湖を一望できる絶好の環境に造られています。江戸時代初期から平成まで、時代を越えて作庭された各庭園は、それぞれが独自の美しさを持ちながら調和した空間を形成しています。

歴史と由来

西教寺の創建は、聖徳太子が恩師である高麗の僧慧慈と慧聡のために建立したと伝えられています。その後、長らく荒廃していましたが、平安時代に慈恵大師良源上人によって復興され、念仏道場として整備されました。恵心僧都も入寺し修業を積んだことから、次第に栄えるようになったとされています。

鎌倉時代の正中2年(1325年)には恵鎮上人が入寺し、文明18年(1486年)に真盛上人が入寺するに至って、堂塔と教法が再興されました。真盛上人は不断念仏の道場として西教寺を発展させ、以来全国に約400余りの末寺を有する総本山となりました。

戦国時代の元亀2年(1571年)、織田信長による比叡山焼き討ちの際に西教寺も焼失しましたが、坂本城主となった明智光秀が復興に尽力しました。現在の庭園群も、この復興期から江戸時代初期にかけて整備されたものが中心となっています。

天台真盛宗総本山としての特徴

天台真盛宗は、真盛上人を宗祖とする天台系仏教の一派です。戒律の厳守と称名念仏の励行を特徴とし、西教寺では現在に至るまで1日も絶えることなく念仏が唱え続けられています。本尊は阿弥陀如来で、不断念仏による極楽往生を説いています。

境内には幽玄静寂な空気が漂い、念仏と鉦の音が低く響き渡る独特の雰囲気があります。総欅入母屋造の本堂は江戸時代の元文4年(1739年)に上棟落成したもので、国重要文化財に指定されています。客殿は伏見城の遺構を移したとされる桃山様式の貴重な建造物で、内部には狩野派による人物・花鳥襖絵が残されています。

西教寺庭園の見どころ・特徴

西教寺庭園|小堀遠州作庭による名園と明智光秀ゆかりの古刹の魅力を完全ガイド

西教寺庭園の最大の魅力は、江戸時代初期から平成まで約400年間にわたって作庭された4つの庭園を一度に鑑賞できることです。客殿庭園、大本坊庭園、書院庭園、裏書院庭園がそれぞれ異なる様式と美しさを持ち、日本庭園の変遷を辿ることができる貴重な空間となっています。

小堀遠州作庭の客殿庭園

最も注目すべきは、江戸時代初期に大名茶人・小堀遠州によって作庭された客殿庭園です。池泉観賞式庭園として設計され、客殿から眺める構成となっています。中央の池泉は琵琶湖の姿を表現しているとされ、裏山の斜面を巧みに利用した立体的な構成が特徴的です。

池の周囲から裏山にかけてツツジやサツキの刈り込みが配置され、奥行きの演出が巧妙に施されています。池のほとりには明治時代に建てられた数寄屋風の茶室「観瀾亭」があり、国登録有形文化財に指定されています。新緑の季節には青々とした苔と刈り込みが美しく、秋には紅葉が池面に映える絶景を楽しむことができます。

小堀遠州らしい繊細な石組みと、琵琶湖という大きな自然を庭園に取り込んだスケール感が見事に調和した名作庭園です。

4つの庭園それぞれの魅力

客殿庭園以外にも、それぞれ独特の美しさを持つ3つの庭園があります。

大本坊庭園は江戸時代初期に作庭された枯山水庭園で、客殿庭園とは対照的な様式を見せています。白砂で海を表現し、その中に茶庭式の飛び石が大胆に配置されているのが特徴です。約2メートルもある立石を中心に、左右に多数の脇石を配した豪快な石組みは、見る者に強い印象を与えます。全体的に大小のサツキと苔を主体とした構成で、茶庭式露地の雰囲気も感じられる独特の空間です。

書院庭園は明治時代に作庭されたもので、坂本地区特有の「穴太式庭園」の一種とされています。穴太式庭園とは、寺院や城の石垣築造で優れた技術を持っていた穴太衆が手がけた庭園のことで、この地域の地域性を表現した重要な文化的遺産です。

裏書院庭園は最も新しく、平成元年(1989年)に地元の庭師・西村繁太郎氏によって作庭された池泉観賞式庭園です。細長い敷地を活かした露地部分の表現が特徴的で、枯流れも設けられて空間を最大限に活用した意匠となっています。現代の作庭技術と伝統的な美意識が融合した見事な庭園です。

明智光秀ゆかりの史跡

西教寺は明智光秀ゆかりの寺院として知られ、境内には光秀と一族の墓所があります。織田信長による比叡山焼き討ちで被害を受けた西教寺の復興に光秀が尽力したことから、光秀は西教寺の檀徒となりました。天正10年(1582年)に本能寺の変で討死した光秀は、正室の熙子とともに西教寺に眠っています。

総門は坂本城の城門を移築したものとされ、鐘楼堂にはかつて光秀の陣鐘が使用されていました。現在は収蔵庫に保管されており、光秀の武将としての足跡を物語る貴重な史料となっています。庭園を鑑賞しながら、戦国時代の歴史に思いを馳せることができるのも西教寺庭園の大きな魅力の一つです。

拝観案内

西教寺庭園|小堀遠州作庭による名園と明智光秀ゆかりの古刹の魅力を完全ガイド

西教寺庭園を訪れる際は、4つの庭園それぞれの特色を理解して回廊を巡ることで、より深く楽しむことができます。境内は広大で見どころが多いため、時間に余裕を持った拝観をおすすめします。

拝観のポイントと楽しみ方

西教寺庭園の拝観は、受付で拝観料を支払った後、境内の指定されたルートを巡る形式となっています。まず大本坊庭園の枯山水から始まり、客殿から小堀遠州作庭の池泉庭園を鑑賞し、書院へと続く回廊を移動しながら各庭園を楽しむことができます。

客殿庭園では、客殿内から池泉を眺めるのが最も美しい鑑賞方法です。琵琶湖を模した池の表現と、背景の裏山との調和を味わってください。茶室「観瀾亭」からの眺めも格別で、異なる角度から庭園の美しさを発見できます。

大本坊庭園の枯山水では、中央の立石を中心とした豪快な石組みと、白砂に配された飛び石の配置に注目してください。茶庭式の要素を取り入れた独特の表現は、他では見ることのできない貴重な庭園様式です。

書院庭園と裏書院庭園は、回廊を移動する際に自然に視界に入る構成となっています。特に裏書院庭園の細長い敷地を活かした枯流れの表現は、限られた空間を最大限に活用した現代の作庭技術の粋を感じることができます。

季節の見どころと年中行事

西教寺庭園は四季を通じて異なる美しさを楽しむことができます。春には参道の桜並木が美しく、新緑の季節には客殿庭園の苔と刈り込みが鮮やかな緑に染まります。特にツツジやサツキの花が咲く時期には、池泉庭園が色鮮やかな花景色に包まれます。

秋は西教寺庭園が最も美しい季節の一つです。参道のモミジが紅葉トンネルを形成し、客殿庭園では池面に映る紅葉が絶景を演出します。この時期には特別拝観や限定御朱印などの企画も実施されることがあります。

冬には雪景色の庭園を楽しむことができ、枯山水庭園の石組みが雪に映える幽玄な美しさを味わえます。また、西教寺では年間を通じて様々な行事が行われており、3月3日にはひな人形供養、夏季には風鈴参道の設置など、季節に応じた特別な体験ができます。

御朱印・記念品情報

西教寺では大本坊の朱印所で御朱印をいただくことができます。通常の御朱印は300円で、天台真盛宗総本山としての格式ある御朱印を受けられます。季節限定の特別御朱印も用意されることがあり、特に紅葉シーズンや特別拝観期間中には限定デザインの御朱印が授与されます。

境内では数珠玉を集めてお守りにする「数珠玉集め」という独特の体験もできます。一玉に思いを込めて集めることで、念仏の功徳を積むことができるとされています。また、真盛上人にちなんだお守りや記念品も授与されており、参拝の記念として人気があります。

アクセス・利用情報

西教寺庭園|小堀遠州作庭による名園と明智光秀ゆかりの古刹の魅力を完全ガイド

西教寺庭園へのアクセスは電車とバス、または徒歩での移動が便利です。比叡山の麓という立地のため、坂道を歩くことになりますが、美しい坂本の町並みを楽しみながら向かうことができます。

交通アクセス

電車をご利用の場合、JR湖西線「比叡山坂本駅」または京阪電鉄石山坂本線「坂本比叡山口駅」が最寄り駅となります。JR比叡山坂本駅からは江若バスで約7分、「西教寺」バス停で下車後徒歩すぐです。徒歩の場合は約30分の道のりとなります。

京阪坂本比叡山口駅からは江若バスで約4分、「西教寺」バス停下車後徒歩すぐです。徒歩の場合は約20分程度で到着できます。坂本比叡山口駅の観光案内所ではレンタサイクルの貸し出しも行っており、自転車での移動も可能です。

自動車でお越しの場合は、湖西道路下阪本インターチェンジから約10分でアクセスできます。比叡山方面へ向かう道路沿いにあるため、案内標識に従って進んでください。

住所:〒520-0113 滋賀県大津市坂本5丁目13番1号

拝観時間・料金・駐車場情報

西教寺庭園の拝観時間は午前9時から午後5時まで(拝観受付は午後4時30分まで)となっています。年中無休で拝観可能ですが、法要や特別行事の際には拝観時間が変更される場合があります。

拝観料金は大人500円、中学生300円、小学生200円です。団体割引は30名以上から適用され、大人450円となります。庭園だけでなく、本堂や客殿などの建造物も含めた総合的な拝観料金となっており、西教寺の文化財すべてを見学することができます。

駐車場は西教寺の受付近くに50台分の専用駐車場が完備されており、駐車料金は無料です。大型バスにも対応しているため、団体での参拝にも便利です。ただし、紅葉シーズンや特別拝観期間中は混雑することがありますので、公共交通機関のご利用をおすすめします。

バリアフリー対応については、一部の庭園は段差がありますが、車椅子でもアクセス可能なルートが確保されています。詳細については事前に西教寺までお問い合わせください。

参照サイト

・西教寺 公式ホームページ:http://saikyoji.org/
・西教寺|滋賀県観光情報[公式観光サイト]:https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/88/

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