大内塗りの特徴とは?歴史も詳しく解説!

大内塗りの特徴とは?歴史も詳しく解説!

日本の工芸品として知られる漆器の中でも、独特の深い朱色が特徴的な大内塗りが注目されています。

今回は、山口県が誇る伝統的な技術である大内塗りについて詳しく解説します。

大内塗りとは

大内塗りは、山口県山口市において室町時代から現代に受け継がれている伝統工芸品です。

漆器といえば椀や盆が有名ですが、大内塗りでは丸く可愛らしいフォルムの人形も作られています。

大内塗りの特徴

大内塗りの主な特徴として、「大内朱」「大内菱」「大内人形」が挙げられます。

それぞれの特徴について紐解いていきましょう。

大内朱

漆器作りでは、朱色を使われるケースが多々ありますが、その中でも大内塗りの朱色は「大内朱」といわれ、深みのある重厚な色味が特徴です。

大内塗りでは、この朱色の下塗り・中塗り・上塗りと幾度も漆を塗り、その都度乾燥させて削る工程を繰り返します。

こうした作業はほとんど手作業で行われ、完成までにかかる日数は約2ヶ月です。

手間暇がかかる根気のいる作業を経て、丈夫で変色しにくい大内塗りに仕上がります。

大内菱

大内塗りが生まれた当時、山口県では南北朝時代の武将である大内弘世氏が権力を握っていました。

いわゆる「西の京」である山口の基礎を作った人物であり、京都から多くの文化人や公家を受け入れました。

大内塗りには、大内家の家紋である「大内菱」が金箔であしらわれています。

大内人形

大内塗りの代名詞といえるが「大内人形」です。

大内人形とは、雛人形のように切れ長の目と小さな口が特徴的な男女一対の人形であり、夫婦円満の象徴とされています。

大内塗りの歴史

大内塗りの歴史

続いては、大内塗りの歴史について解説します。

室町時代から続く伝統

1300年代中期、大内弘世氏は周防と長門の統一に成功し、山口に拠点を設けました。

京都に憧れを抱いていた大内氏は、京都を模した市街整備を行います。

同時に、文化人や公家たちを招き入れ、この中には漆塗り職人もいました。

彼らに漆器作りを進めたことが、大内塗りの始まりです。

また、大内氏は京都から迎えた姫が寂しくならないように、屋敷中を人形で飾ったといわれています。

大内邸は「人形御殿」と称され、このエピソードを踏まえて大正時代に生まれたのが大内人形です。

一つの文化を形成した大内塗り

周防と長門の統一と時期を同じくして生まれた大内塗りは、大内氏により朝鮮や明(みん)に輸出されるようになりました。

漆器は刀剣や扇子、硯といった輸出品と肩を並べる重要なアイテムとされており、当時は漆器作りが盛んに行われていたことがわかります。

このように、大内氏が築いた文化を「大内文化」といい、大内塗りはその中でも代表的な存在です。

江戸時代〜明治時代

1500年代の半ばに大内氏が衰退を迎えるまで、大内塗りも多くの製品が生産され華やかな時代が続きました。

しかし、江戸時代に入ると朝鮮や明との交易が途絶えてしまいます。

また、萩城に拠点を移した毛利氏により質素倹約が推し進められると、大内塗りをはじめとする豪華な産業は衰退していきました。

一時は消滅の危機にあった大内塗りですが、明治時代に入ってから郷土史学者の近藤清石氏が毛利家の所蔵品の中から漆塗りの椀を発見したことをきっかけに復興を遂げます。

大正時代〜現代

大正時代には、山口県で初めての公設試験研究機関として山口工業試験場が創設されました。

この中には、漆塗りに特化した漆工課も設置され、大内塗りの技術改良が本格的に行われます。

漆塗りの先進地である輪島からも専門家を招き、苦難の時代を乗り越えた大内塗りは、1989年に経済産業省により国の伝統工芸品として任命され、名実ともに山口県を代表するアイテムとなりました。

近年では、同じく山口県の伝統工芸である萩焼と融合した「山口陶漆器」も登場し、ますます注目を集めています。

大内塗りの職人たち

大内塗りは、「木地師(きじし)」と「塗師(ぬし)」という職人たちの手によって仕上げられます。

木地師とは、大内塗りの土台となる原木の感想や選別、加工などを手がける職人です。

わずかなズレが仕上がりに影響するため、非常に重要な役割を担っています。

一方、漆塗りを担当するのが塗師です。

木地師が仕上げた土台に漆を幾度も塗り重ね、絵付けも行います。

大内塗りの美しい朱色を表現し、退色しない丈夫な製品に仕上げる上で欠かせない仕事です。

こうした職人たちの手作業により作られる大内塗りは、高度な技術が求められる工芸品であり、大変な価値があります。

まとめ

大内塗りは、萩焼や赤間硯と並ぶ山口県の代表的な伝統工芸品です。

600年以上続く長い歴史は、衰退の危機を超えてなお現代に息づいています。

特に、大内塗りの代名詞である大内人形は、夫婦円満の象徴といわれギフトにもおすすめです。

近年は、「三世代末永く」という想いを込めたマトリョーシカ仕様なった斬新なアイテムも登場しており、出産祝いにも適しています。

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