
大鳥大社|和泉国一宮の歴史と見どころ、参拝案内を詳しく解説
大阪府堺市西区に鎮座する大鳥大社は、約1900年の歴史を持つ和泉国一宮として、古くから多くの人々の信仰を集めてきました。日本武尊の魂が白鳥となって舞い降りたという神話で知られ、千種の杜と呼ばれる豊かな森に包まれた神聖な空間が広がっています。全国の大鳥神社の総本社として格式高い地位を占める大鳥大社の魅力をご紹介します。
大鳥大社の概要・基本情報
大鳥大社は、正式名称を大鳥神社といい、延長5年(927年)に完成した延喜式神名帳に名神大社として記載された由緒ある神社です。和泉国一宮として、泉州地域はもとより全国から多くの参拝者が訪れています。境内面積は約1万5千坪(東京ドーム約1個分)と広大で、鬱蒼とした森に覆われた神域は「千種の杜」と呼ばれ、都市部にありながら神秘的な雰囲気を醸し出しています。
歴史と由来
大鳥大社の創建は景行天皇43年(113年)に遡るとされ、その起源は日本武尊の白鳥伝説に深く関わっています。日本武尊は景行天皇の皇子として、父帝の命により西征では熊襲を平定し、東征では東国を平定した古代の英雄です。しかし、伊吹山で荒ぶる神の祟りに遭い病となり、伊勢国能褒野で薨去されました。
日本武尊の御霊は白鳥となって陵から飛び立ち、まず大和国琴引原に舞い降り、次に河内国古市に降り立った後、最後にこの大鳥の地に舞い降りました。白鳥が舞い降りると一夜にして種々の樹木が生い茂り、白鳥が再び飛び立つことができなくなったという伝説があります。これが「千種の杜」の由来であり、この地に社を建てて日本武尊をお祀りしたのが大鳥大社の始まりとされています。
歴代皇室からの崇敬も篤く、奈良・平安時代には国家的災難時に神祇官から指定された防災雨祈の御祈願社85社の一つとして、途切れることなく臨時の奉幣を受けました。清和天皇貞観3年(861年)には従三位に叙せられ、のちに正一位まで昇階しています。
祭神とご利益
大鳥大社の主祭神は日本武尊と大鳥連祖神です。祭神については歴史的な変遷があり、元来は大鳥連の祖神であったとされますが、一時期天照大神が祭神とされた時代もありました。その後、日本武尊の白鳥伝説と大鳥という社名が結び付けられ、日本武尊が主祭神として定着しました。明治29年(1896年)に政府の祭神考証により大鳥連祖神に変更されましたが、昭和36年(1961年)に大鳥連祖神に加えて日本武尊も合祀され、現在に至っています。
連戦連勝の英雄である日本武尊をお祀りすることから、勝負運、武運長久、商売繁盛、交通安全のご利益があるとされています。また、境内東側にある樹齢600年を超える根上がりの楠は「根上がりさん」と親しまれ、「値(根)が上がる」として商売繁盛・財運向上の御利益があると信仰されています。特に受験や就職、スポーツなどの勝負事において多くの参拝者が訪れ、「先が見通せる御守」や「勝みくじ」などの授与品も人気を集めています。
大鳥大社の見どころ・特徴
大鳥大社の魅力は、歴史ある社殿建築と豊かな自然が調和した境内にあります。住宅街に位置しながらも、一歩境内に足を踏み入れると千種の杜の深い緑に包まれ、神話の世界へと誘われるような神聖な空間が広がっています。
建造物・構造の魅力
大鳥大社の本殿は、出雲大社の大社造に次いで古いとされる「大鳥造」という独特の建築様式で建てられています。大鳥造は切妻造、妻入りで正面・側面ともに二間ですが、入口が正面中央にあるため中央の柱がなく、内部は前後の2室に分かれているのが特徴です。心柱がなく、高床も低い点などが大社造と異なる古代神社建築様式の一つです。
現在の本殿は明治42年(1909年)12月に再建されたもので、堺市指定有形文化財に指定されています。戦国時代の兵火により一度焼失し、慶長7年(1602年)に片桐且元を奉行として豊臣秀頼による社寺造営で再建されましたが、大坂の陣で再び灰燼に帰し、その後も落雷による焼失を経て現在の姿となりました。
拝殿は茅葺屋根の重厚な造りで、正式参拝や御祈祷が行われる神聖な場所です。拝殿前には珍しい八角形の柱の鳥居があり、これも大鳥大社の特徴的な建造物の一つです。境内には日本武尊の御神像も建立されており、参拝者の目を引く存在となっています。
千種の杜と自然の美しさ
大鳥大社の境内は「千種の杜」と呼ばれ、日本武尊の魂である白鳥が舞い降りた際に一夜にして種々の樹木が生い茂ったという伝説に由来します。都市部にありながら約1万5千坪の広大な敷地には古木が立ち並び、四季折々の美しい景観を楽しむことができます。
特に注目すべきは、本殿東側にそびえ立つ樹齢600年を超える根上がりの楠です。この御神木は「根上がりさん」として親しまれ、根が地上に盛り上がった独特の形状から「値(根)が上がる」として商売繁盛・財運向上の御利益があると信仰されています。木の周りには祠と鳥居も設けられており、多くの参拝者がこの御神木の前で手を合わせています。
境内にはかつて菖蒲園があり、6月中旬の菖蒲祭の時期には美しい花菖蒲を楽しむことができました。現在は2018年の台風21号の被害により公開を停止していますが、「大鳥大社の菖蒲園復活を願う会」が発足され、地域の人々と神主を中心とした美化活動が行われており、将来の復活が期待されています。
重要文化財・所蔵品
大鳥大社には数々の貴重な文化財や所蔵品があります。本殿は堺市指定有形文化財として保護されており、大鳥造という古代建築様式の貴重な遺構として学術的価値も高く評価されています。
境内には歴史的な記念碑も多数あります。特に平清盛が平治元年(1159年)に熊野参詣の途中で立ち寄り、戦勝祈願として詠んだ歌「かひこぞよ かへりはてなば 飛びかけり はぐくみたてよ 大鳥の神」の歌碑があります。この歌は平治の乱での勝利を祈願したもので、実際に平氏が勝利を収めたことから、勝負運のご利益を象徴する史跡として親しまれています。
また、与謝野晶子が詠んだ「和泉なる わがうぶすなの 大鳥の 宮居のすぎの 青きひとむら」の歌碑もあり、文学史上の価値も有しています。これらの歌碑は、大鳥大社が古くから多くの文化人に愛され、日本の歴史と文化に深く関わってきたことを物語っています。
参拝案内
大鳥大社への参拝は年間を通じて多くの方々に親しまれており、特に勝負事を控えた方や商売繁盛を願う方々の信仰を集めています。神聖な空間での参拝を通じて、心身の浄化とともに日本武尊のご加護をいただくことができます。
参拝作法とマナー
大鳥大社での参拝は、一般的な神社参拝の作法に従います。まず境内に入る前に、正面の大鳥居で一礼をして神域に入ります。参道は中央を避けて左右どちらかを歩き、手水舎で心身を清めてから拝殿へ向かいます。
手水の作法は、右手で柄杓を取り左手を清め、左手に持ち替えて右手を清めます。再び右手に持ち替えて左手に水を受け、口をすすいでから柄杓の柄を清めて元の位置に戻します。拝殿前では「二拝二拍手一拝」の作法でお参りし、本殿前でも同様に手を合わせることをお勧めします。
大鳥大社は住宅街に位置しているため、参拝の際は近隣住民への配慮も大切です。早朝や夜間の参拝は控えめにし、境内では静粛に過ごすよう心がけましょう。また、撮影を行う際は他の参拝者の迷惑にならないよう注意が必要です。
年中行事・季節のイベント
大鳥大社では年間を通じて多彩な祭事が行われており、中でも4月第3土曜日に開催される花摘祭は最も有名な年中行事です。花摘祭は平安時代に起源を持つ厄病・災厄除けを祈願する古式ゆかしい祭で、桜の散る時期に疫病が流行ることを恐れ、野に咲く花を摘んで神前にお供えして災厄を祓うものです。
花摘祭当日は、鳳南町会館から花摘女、仕丁、稚児、花車等が列を整えて時代絵巻さながらに神社まで練り歩きます。錦の装束に身を包んだ花摘女たちの行列は特に美しく、多くの見物客が訪れる春の風物詩となっています。近年では境内で「花摘市」も開催され、花屋、雑貨店、キッチンカーなどの出店とともに、水墨画の実演や太鼓、ダンスなどの催し物も楽しめます。
10月第1土曜日には美波比社例祭が行われ、鳳だんじり祭として10基の地車が摂社美波比神社前に整列してお祓いを受ける勇壮な祭典が開催されます。6月中旬には菖蒲祭、8月13日には夏祭、11月の酉の日には酉の市神事なども行われ、四季を通じて地域の人々に親しまれています。
御朱印・お守り情報
大鳥大社では、日本武尊が白鳥となってこの地にたどり着いた故事にちなんで「八尋白鳥」の印が押された御朱印をいただくことができます。御朱印は気持ちを込めて揮毫されており、季節限定の御朱印も授与されています。7月には「天の川と織姫さま」、4月には桜をモチーフにした「大鳥の四季」など、季節感あふれる美しい御朱印が人気です。
大鳥大社で特に注目されるのは、日本初となる「先が見通せる御守」と「先が見通せるおみくじ」です。先が見通せる御守は、受験や就職、事業展開などで将来への見通しを立てたい方に人気が高く、多くの参拝者に授与されています。
「勝みくじ」も大鳥大社独特の授与品で、木箱の中から勝殊を選び取る独特のスタイルが話題になっています。見事「強運」を引き当てた方には、金箔押しの特製みくじが授与される仕組みになっており、勝負運を求める参拝者に人気です。
その他、交通安全、家内安全、商売繁盛、学業成就などの各種お守りも豊富に取り揃えられており、人生の節目や願い事に応じて選ぶことができます。御朱印帳も大鳥大社オリジナルデザインのものが授与されています。
アクセス・利用情報
大鳥大社は関西国際空港からもアクセスしやすく、大阪南部地域の交通の要所に位置しています。電車、バス、自動車のいずれでも参拝可能で、特に電車でのアクセスが便利です。
交通アクセス
最も便利なアクセス方法は、JR阪和線鳳駅からの徒歩です。鳳駅西出口の階段を下りてそのまま直進し、突き当りを左折して徒歩約3分で到着します。関西国際空港からは、JR関西空港線で天王寺方面行きに乗車し、日根野駅でJR阪和線に乗り換えて鳳駅まで約30分程度です。
バスでのアクセスも可能で、南海バスの複数路線が利用できます。堺東駅から西区役所・光明池方面行きで鳳北口バス停下車徒歩3分、または西区役所から石津川駅前行きで大鳥神社前バス停下車徒歩1分です。石津川駅前から諏訪ノ森駅前・浜寺公園駅前通経由で大鳥大社前バス停まで直行するバスも1日10本程度運行されています。
自動車でのアクセスは、阪和自動車道堺出口を右折して大池前交差点方面へ向かいます。国道26号線や府道210号線からもアクセス可能で、境内には無料駐車場が完備されています。
住所:〒593-8328 大阪府堺市西区鳳北町1-1-2
拝観時間・料金・駐車場情報
大鳥大社の開門時間は季節により異なり、4月1日から9月30日までは午前5時30分、10月1日から3月31日までは午前6時に開門されます。閉門時間は通年午後6時です。境内への参拝は無料で、いつでも自由に参拝することができます。
御祈祷を希望される方は、午前9時から午後4時30分まで受付しており、予約は不要で直接受付にお越しいただけます。御祈祷料は祈祷の内容により異なりますので、詳細は社務所にお問い合わせください。お宮参り、七五三、交通安全、家内安全、病気平癒など様々な御祈祷に対応しています。
駐車場は境内に無料で利用できる参拝者用駐車場が設けられています。大鳥居の横にあり、普通車約50台程度が駐車可能です。ただし、花摘祭やだんじり祭などの大きな祭事の際は混雑が予想されるため、公共交通機関の利用をお勧めします。
境内はバリアフリーに一部配慮されていますが、千種の杜の自然地形を活かした造りのため、車椅子での参拝を希望される方は事前に社務所にご相談いただくことをお勧めします。
参照サイト
・大鳥大社 公式ホームページ:https://www.ootoritaisha.jp/