
慶雲館庭園|国指定名勝の美しい日本庭園と明治の迎賓館の魅力を完全ガイド
滋賀県長浜市に佇む慶雲館庭園は、明治天皇の行在所として建てられた歴史ある迎賓館と、近代日本庭園の傑作として名高い国指定名勝の庭園が織りなす特別な空間です。7代目小川治兵衛による豪壮な作庭と格調高い建造物が調和し、明治の歴史と文化の香りを今に伝える貴重な文化遺産として多くの人々を魅了しています。
慶雲館庭園の概要・基本情報
慶雲館は明治20年(1887年)に、長浜の実業家である浅見又蔵により明治天皇の行在所として建設された迎賓館です。館名は当時の内閣総理大臣であった伊藤博文が命名したとされており、その荘厳美麗な姿から「慶雲館」という名前が付けられました。庭園部分は国の名勝に指定されており、約6千平方メートルの広大な敷地を誇ります。
歴史と由来
慶雲館の建設は、明治19年(1886年)に浅見又蔵が明治天皇の行幸計画を知ったことがきっかけでした。長浜で自社の太湖汽船事業を営んでいた浅見は、天皇陛下をお迎えするにふさわしい施設として私財を投じて迎賓館の建設を決意しました。
建物は明治20年に竣工し、その後明治天皇皇后両陛下が実際に滞在されました。伊藤博文による命名の逸話からも、当時の政府要人からも高く評価されていたことがうかがえます。浅見又蔵の死去翌年である明治34年(1901年)には、その功績を顕彰するため慶雲館碑が建立されました。
作庭の背景と様式
現在見ることができる美しい庭園は、建物完成から25年後の明治45年(1912年)に造営されました。作庭を手がけたのは、近代日本庭園の先覚者として名高い7代目小川治兵衛です。平安神宮神苑をはじめ数多くの名庭を手がけた治兵衛による池泉回遊式庭園は、近代日本庭園の傑作の一つとして評価されています。
庭園は表門から中門に至る前庭、中門から本館玄関前に広がる玄関前庭、そして本館の南に広がる本庭の3つの空間で構成されています。それぞれが異なる趣を持ちながらも全体として調和のとれた設計となっており、見る者を圧倒する豪壮な意匠が特徴です。
慶雲館庭園の見どころ・特徴
慶雲館庭園は建造物と庭園が一体となって醸し出す独特の空間美が最大の魅力です。明治期の格調高い建築と、巨石を配した力強い庭園設計が絶妙に調和し、他では味わえない歴史的価値と美的価値を併せ持つ文化遺産となっています。
建造物・構造の魅力
慶雲館本館は純和風の木造建築で、明治期の迎賓施設としての格式を感じさせる重厚な造りが特徴です。建物内部からは美しい庭園を一望することができ、四季折々の景色を楽しむことができます。本館と同時期に建設された茶室も現存しており、当時の建築技術と美意識の高さを物語っています。
敷地内には慶雲館碑をはじめとする歴史的な石造物も点在しています。特に注目すべきは豊臣秀吉による朱印地区域を示す長浜領朱印地石柱で、2本が明治期以降に慶雲館に移設され、長浜の歴史を物語る貴重な遺構として保存されています。
自然・景観の美しさ
庭園の最大の見どころは、7代目小川治兵衛による巧みな石組みと植栽配置です。特に前庭に配置された高さ約5メートル、推定重量20トンの大灯籠は圧巻の存在感を放っています。この大灯籠をはじめとする庭園内の多くの巨石は、旧志賀町(現大津市)から船で琵琶湖を通って運ばれたと伝えられており、琵琶湖の水運を活用した当時の技術力を示しています。
本庭の池泉回遊式庭園では、水の流れと石組み、植栽が織りなす自然美を堪能できます。中門前に造られた枯滝と枯流の石組みは、水を使わずに水の流れを表現する日本庭園独特の技法で、見る者の想像力をかき立てます。庭園内の緑豊かな植栽は四季を通じて異なる表情を見せ、特に新緑の季節や紅葉の時期には格別の美しさを楽しむことができます。
国指定名勝の庭園構成
慶雲館庭園は表門から中門に至る前庭、中門から本館玄関前に広がる玄関前庭、本館の南に広がる本庭の3つの空間で構成されています。前庭には明治の大横綱である常陸山谷右エ門をモデルにした横綱像が配置されており、相撲界と慶雲館の深い関わりを物語っています。常陸山はライバルの横綱梅ヶ谷藤太郎とともに慶雲館を何度も訪れており、当時の記念写真も現存しています。
玄関前庭は平庭に灯籠や巨石が配置された落ち着いた空間となっており、本館への期待を高める設計となっています。本庭は池泉回遊式庭園の最も見どころが多い空間で、築山と茶室が配置され、中央の深い涸池を中心とした立体的な構成が特徴です。現在は埋め立てられていますが、かつては琵琶湖に面しており、その景観も庭園設計に組み込まれていました。
拝観案内
慶雲館庭園では四季を通じて異なる魅力を楽しめる美しい庭園と歴史ある建造物を見学することができます。特に本館2階からの庭園の眺めは格別で、明治天皇皇后両陛下の玉座からの景色を体感できる貴重な体験です。庭園内を実際に歩いて散策することも可能で、間近で巨石の迫力や繊細な石組みの技術を感じることができます。
拝観のポイントと楽しみ方
慶雲館庭園の拝観では、まず表門から前庭に入り大灯籠の圧倒的な存在感を体感することから始まります。高さ約5メートル、推定重量20トンの巨石は自然石を組み合わせたような独特の形状で、その迫力は見る者を圧倒します。横綱像とともに前庭の見どころを楽しんだ後は、中門の枯滝と枯流の石組みを観賞し、庭園設計の妙技を味わいましょう。
本館内部では、まず1階から庭園を眺め、その後2階に上がることをおすすめします。2階の大広間には明治天皇皇后両陛下の玉座があり、当時の格式の高さを感じることができます。鶴の襖絵や明治とは思えない梅の花の形をした照明器具など、細部にわたる装飾も見どころの一つです。2階からの庭園の眺めは特に美しく、庭園全体の構成を俯瞰して楽しむことができます。
庭園散策では池泉回遊式の本庭を歩き、様々な角度から庭園美を堪能できます。茶室「恵露庵」は本館と同時期の1887年に建設された貴重な建造物で、当初は典型的な四畳半茶室でしたが、現在は十畳半の広間に改修されています。また、長浜市出身の西田天香ゆかりの坐禅石や、豊臣秀吉による朱印地区域を示す長浜領朱印地石柱など、歴史的な見どころも点在しています。
年中行事・季節のイベント
慶雲館では毎年1月から3月にかけて長浜盆梅展が開催され、この時期は特に多くの観光客で賑わいます。昭和27年(1952年)に始まった長浜盆梅展は、2025年で第74回の開催を迎えます。盆梅展期間中は開館時間が午前9時に早まり、ライトアップ期間中は閉館時間が午後8時30分まで延長されます。
春には庭園の新緑が美しく、夏は緑陰の涼しさを感じることができます。秋の紅葉シーズンには、巨石と紅葉のコントラストが格別の美しさを見せ、冬は雪化粧した庭園の静寂な美しさを楽しむことができます。四季それぞれに異なる表情を見せる庭園は、何度訪れても新たな発見があります。
周辺の観光スポット
慶雲館の向かいには長浜鉄道スクエアがあり、現存する日本最古の駅舎である旧長浜駅舎を中心とした鉄道博物館として人気を集めています。ジオラマ模型が走る長浜鉄道文化館や、巨大なSL車内部に入れる北陸線電化記念館があり、慶雲館と合わせて楽しむことができます。
徒歩圏内には長浜城跡や豊公園があり、豊臣秀吉ゆかりの史跡を巡ることができます。また、黒壁スクエアエリアでは江戸時代から明治時代の古い町並みとガラス工芸の店舗が軒を連ね、散策とショッピングを楽しめます。長濱八幡宮も徒歩約13分の距離にあり、厄除けや開運のご利益で知られる由緒ある神社として多くの参拝者が訪れています。
アクセス・利用情報
慶雲館は JR長浜駅から徒歩3分という便利な立地にあり、電車でのアクセスが非常に良好です。長浜駅は新快速電車が直通で運行しており、京都や大阪からも乗り換えなしでアクセスできます。自動車での来訪も可能ですが、専用駐車場がないため周辺の有料駐車場を利用する必要があります。
交通アクセス
電車をご利用の場合は、JR北陸本線(琵琶湖線)長浜駅で下車し、西口から南へ徒歩約3分でアクセスできます。新快速電車を利用すれば、京都駅から約1時間20分、大阪駅から約2時間でアクセス可能です。駅から慶雲館までの道のりは平坦で歩きやすく、長浜鉄道スクエアを目印にすると分かりやすいでしょう。
自動車をご利用の場合は、北陸自動車道長浜インターチェンジから約15分(約5キロメートル)の距離にあります。名神高速道路からは米原ジャンクション経由でアクセスできます。慶雲館には専用駐車場がないため、長浜駅西口駐車場や豊公園駐車場などの周辺有料駐車場をご利用ください。
拝観時間・料金・駐車場情報
慶雲館の開館時間は午前9時30分から午後5時まで(最終入館は午後4時30分)となっています。開館期間は3月中旬から12月上旬までで、冬期は休館となります。ただし、長浜盆梅展期間中(1月10日から3月10日頃)は開館しており、この期間の開館時間は午前9時からとなります。
拝観料は大人300円、小中学生150円です。長浜盆梅展や特別展開催期間中は特別料金が設定される場合があります。団体割引や障害者割引については、事前にお問い合わせください。館内の一部施設は有料で貸し出しも行っており、茶会や会議などにもご利用いただけます。
駐車場については、慶雲館専用の駐車場はありませんが、向かいの長浜鉄道スクエア横にある長浜駅西口駐車場(有料)をご利用いただけます。また、豊公園駐車場は3時間まで無料で利用でき、慶雲館まで徒歩約5分とアクセスが良好です。観光シーズンや盆梅展期間中は駐車場が混雑することがありますので、公共交通機関のご利用をおすすめします。
<住所> 〒526-0067 滋賀県長浜市港町2-5
参照サイト
・国指定名勝 慶雲館 公式サイト:https://kitabiwako.jp/keiunkan/
・慶雲館 | 滋賀県観光情報[公式観光サイト]:https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/3577/