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旧秀隣寺庭園(興聖寺)|歴史と自然が織りなす名所の魅力を完全ガイド

旧秀隣寺庭園(興聖寺)|歴史と自然が織りなす名所の魅力を完全ガイド

旧秀隣寺庭園(興聖寺)は、滋賀県高島市朽木岩瀬に位置する、道元禅師ゆかりの曹洞宗寺院興聖寺の境内に佇む国指定名勝庭園です。室町幕府の将軍足利義晴が戦乱を逃れて滞在した際に、管領細川高国が贈った池泉庭園として知られ、別名「足利庭園」とも呼ばれています。安曇川の清流と比良山系を借景とした美しい庭園と、重要文化財を有する古刹の歴史が織りなす、奥深い魅力を持つ名所です。

旧秀隣寺庭園(興聖寺)の概要・基本情報

旧秀隣寺庭園(興聖寺)|歴史と自然が織りなす名所の魅力を完全ガイド

旧秀隣寺庭園(興聖寺)は、鎌倉時代から続く古刹と室町時代の名庭が一体となった貴重な文化財です。現在の朽木地域は古くから京都と若狭を結ぶ鯖街道の要衝として栄え、多くの歴史的な出来事の舞台となってきました。

歴史と由来

興聖寺の創建は、曹洞宗の開祖である道元禅師が都から越前国へ向かう際、近江国朽木庄に一時隠居中であった佐々木信綱に一寺を建立するように勧め、寛元元年(1243年)に安曇川の対岸の上柏村指月谷に創建されたことに始まります。道元禅師が朽木の里を訪れた際、付近の風光明媚な様子が宇治の興聖寺に酷似していると大変感激して、同じ名前を付けたという由来があります。

現在の境内地には複雑な歴史があります。享禄元年(1528年)に室町幕府将軍の足利義晴と細川高国が、細川晴元や三好元長に京を追われ、朽木氏を頼って当地に逃れました。この時、朽木稙綱が将軍のために造営したのが岩神館で、館内に造られたのが現在残る庭園です。秀隣寺は、朽木宣綱が慶長11年(1606年)に正室の菩提を弔うために、かつての岩神館のあった地に建立した寺院で、のちに他の地に移され、江戸時代に興聖寺が現在地に移転しました。

興聖寺は文政11年(1828年)に本堂が焼失しましたが、安政4年(1857年)3月に朽木大綱公の寄進で25世仙英和尚の代に再建され、朽木家代々の菩提所として現在に至っています。

寺院と庭園の特徴

興聖寺は曹洞宗の寺院として、禅の教えに基づいた静寂な雰囲気を保っています。林のように木々が茂っている中に寺が立っており、境内からは安曇川や上山などの広大で雄大な景色が眺められます。朽木地域は曹洞宗寺院が集中する地域として知られ、興聖寺はその中心的な存在として位置づけられています。

一方、旧秀隣寺庭園は昭和10年に国の名勝指定を受けている庭園で、池泉鑑賞式庭園として分類されます。この庭園は、正しくは「岩神館庭園」と呼ぶべきかもしれませんという指摘もあるように、足利将軍の居館に関連する歴史を持つ貴重な遺構です。

旧秀隣寺庭園(興聖寺)の見どころ・特徴

旧秀隣寺庭園(興聖寺)|歴史と自然が織りなす名所の魅力を完全ガイド

旧秀隣寺庭園(興聖寺)の魅力は、中世武家庭園の傑作と、道元禅師ゆかりの古刹が融合した独特の景観にあります。歴史的価値と美的価値の両方を兼ね備えた、他では見ることのできない名所です。

国指定名勝・旧秀隣寺庭園の魅力

安曇川の清流と比良山系を借景として、西側の築山に石を利用した滝をしつらえ、屈曲した汀線を持った池に仕上げています。左手の築山に組まれた「鼓の滝」から流れ出た水が池に注いでいる様子は、自然の美しさと人工の技巧が見事に調和した景観を生み出しています。

庭園の中央部には2つの鶴亀島を置き、楠の化石の石橋が対岸の出島に架けられています。曲水で造り上げた池泉には石組みの亀島、鶴島を浮かべ、中央付近には見事な自然石の石橋が架かり、随所に豪快な石組を配する全国屈指の武家の庭園として高く評価されています。

庭石は、朽木一族を始め佐々木一族・京極高秀や浅井亮政、朝倉孝景等の協力で、管領細川高国が将軍を慰めるために贈ったといわれています。このように多くの戦国大名が協力して作庭された背景からも、当時の政治的重要性がうかがえます。

特に注目すべきは、樹齢500年の藪椿で、これらの古木が庭園に深い歴史の重みを添えています。面積234坪の庭園という限られた空間の中に、豊かな表情を持つ景観が凝縮されています。

興聖寺本堂と文化財

閑静な境内には本殿のほか、庫裏(くり)や鐘楼などが立ち並びます。本堂は江戸時代末期の火災後に再建されたもので、曹洞宗の典型的な建築様式を示しています。

最も重要な文化財は、本堂内に安置されている国の重要文化財の本尊釈迦如来像坐像です。伝教大師の遺作と称される平安時代の名作であり、檜の寄木造りで、その優美さと尊厳さをそなえた仏像として、美術史的にも高い価値を持っています。

興聖寺は関西花の寺二十五霊場の第14番にも指定されており、季節ごとに美しい花々を楽しむことができます。特に椿の名所として知られ、春には境内が華やかに彩られます。

四季の美しさと自然景観

庭園は安曇川が形成した段丘の縁にあり、安曇川の清流、そしてその背後に横たわる蛇谷ヶ峰、比良山系を借景としています。この借景の美しさは四季を通じて変化し、特に新緑の季節と紅葉の時期には格別の美しさを見せます。

春には樹齢500年を超える古い藪椿が花を咲かせ、庭園全体に歴史の深さを感じさせる趣を添えます。夏は緑陰が涼やかで、鼓の滝の水音が心地よい涼感を演出します。秋には周囲の山々が紅葉に染まり、池面に映る色彩が美しい風景画のような景観を作り出します。冬は雪化粧した庭園が静寂の美を表現し、禅寺らしい厳かな雰囲気に包まれます。

安曇川の清流は庭園の借景として重要な役割を果たしており、水の流れる音が境内の静寂さをより一層際立たせています。比良山系の山並みは季節や時間によって表情を変え、庭園の景観に奥行きと変化を与えています。

拝観案内

旧秀隣寺庭園(興聖寺)|歴史と自然が織りなす名所の魅力を完全ガイド

旧秀隣寺庭園(興聖寺)は、歴史ある庭園と寺院の両方を拝観できる貴重な場所です。静かな山里にあるため、都市部の喧騒を離れてゆっくりと時間を過ごすことができます。

拝観のポイントと楽しみ方

庭園は池泉鑑賞式として設計されているため、まずは本堂前から全体を見渡すことをお勧めします。庭園は自由に出入りできる空間にありますが、社務所で拝観料を納めてから庭園を散策します。

鶴島と亀島の石組みは特に見応えがあり、中世武家庭園の特徴的な要素を良好な状態で保存しています。石橋から池を見下ろす角度や、築山からの眺望など、様々な視点から庭園美を楽しむことができます。

本堂内では重要文化財の釈迦如来坐像を拝観することができ、平安時代の仏像彫刻の優美さを間近で感じることができます。住職による丁寧な解説を受けることも可能で、寺院の歴史や庭園の成り立ちについて詳しく学ぶことができます。

庭園散策の際は、借景として取り込まれた安曇川と比良山系の美しさも合わせて楽しみましょう。特に晴れた日には山並みが美しく映え、庭園の景観をより豊かなものにしています。

年中行事と季節のイベント

興聖寺は関西花の寺二十五霊場第14番札所として、春の椿の季節には多くの参拝者が訪れます。境内の椿は樹齢500年を超える古木もあり、開花時期には格別の美しさを見せます。

禅宗寺院として、定期的な座禅会や法話会も開催されており、事前に問い合わせることで参加することができます。これらの行事は地域の方々との交流の機会でもあり、朽木地域の文化に触れる貴重な体験となります。

秋には紅葉の季節に合わせた特別拝観期間が設けられることもあり、夜間のライトアップなどが行われる場合があります。詳細な開催時期や内容については、事前に寺院にお問い合わせください。

年末年始には除夜の鐘や初詣の行事があり、地域の人々と共に新年を迎える厳かな雰囲気を体験することができます。

アクセス・利用情報

旧秀隣寺庭園(興聖寺)|歴史と自然が織りなす名所の魅力を完全ガイド

旧秀隣寺庭園(興聖寺)は山間部に位置するため、公共交通機関と自家用車のどちらでもアクセス可能ですが、それぞれに特徴があります。鯖街道の宿場町として栄えた朽木地域への道のりも、旅の楽しみの一つです。

交通アクセス

電車とバスをご利用の場合、JR湖西線 安曇川駅下車、江若バスで岩瀬または朽木学校前下車約30分が最も便利です。「岩瀬」バス停下車 徒歩約3分、「朽木学校前」バス停下車 徒歩10分となっており、岩瀬バス停の方が寺院により近い位置にあります。

京都方面からは京阪電気鉄道鴨東線・叡山電鉄叡山本線 出町柳駅から京都バスで岩瀬または朽木学校前下車約1時間30分のルートも利用できます。ただし、土休日のみ1日1便のみ京都・出町柳駅から「岩橋」バス停までの路線バスがありますので、事前の時刻表確認が重要です。

自動車でのアクセスは、京都から国道367号経由で約1時間15分(京都大原から約35分)、京都から国道161号、堅田経由国道367号で約1時間25分(琵琶湖大橋から約35分)となっています。琵琶湖大橋経由のルートは湖西道路を利用でき、景色を楽しみながらのドライブコースとしても人気があります。

カーナビ設定の際は「滋賀県高島市朽木岩瀬374」で検索してください。道の駅くつき新本陣を目印にすると分かりやすく、そこから約5分の距離にあります。

<住所> 〒520-1421 滋賀県高島市朽木岩瀬374

拝観時間・料金・駐車場情報

拝観時間は午前9時から午後5時までとなっており、年中無休で拝観することができます。ただし、法要や行事により拝観できない場合もありますので、事前にお問い合わせいただくことをお勧めします。

拝観料は300円で、庭園と本堂の両方を拝観することができます。この料金には住職による寺院の歴史や庭園の解説も含まれており、一人の参拝者に対しても丁寧に案内していただけます。

駐車場は寺院前に無料駐車場が完備されており、普通乗用車約10台分のスペースがあります。大型バスでの参拝の場合は、事前に連絡をして駐車場所の確認をお願いします。

バリアフリー設備については、障がい者用駐車場、車椅子対応トイレ、盲導犬の受け入れ、オムツ交換台が整備されており、様々な方に配慮した環境が整っています。

団体での拝観を希望される場合は、事前に電話(0740-38-2103)でご連絡ください。団体料金の設定や、より詳しい解説プログラムなどの相談も可能です。

周辺には道の駅くつき新本陣があり、朽木地域の特産品購入や食事、休憩施設として利用できます。レンタサイクルの貸し出しも行っているため、朽木地域の史跡巡りを楽しむ拠点としても便利です。

参照サイト

・高島市文化財課 興聖寺(旧秀隣寺庭園):https://www.city.takashima.lg.jp/soshiki/kyoikusomubu/bunkazaika/1/1/710.html
・びわ湖高島観光ガイド 興聖寺:https://takashima-kanko.jp/spot/2018/06/post_80.html
・滋賀県観光情報 興聖寺(足利庭園):https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/685/
・関西花の寺二十五霊場 第14番 興聖寺:http://hana25.jp/temple/336/

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