地方創生において地方自治体の多くが抱える問題点を考える
人が都市部に集中することで、地方の衰退が生まれている現状があります。
その現状を打開するため政府は地方創生を掲げ、地方の活性化を推進しています。
地方創生が必要なのは、地方で暮らす人々が必要とするサービスが受けられなかったり、地域経済が衰退してしまったりなど、様々な問題点があるためです。
そのため、政府は2014年から地方創生を掲げて、様々な施策を推進してきました。
今回は、地方自治体が掲げる問題点や、政府が掲げる目標、また、地方創生に必要な地域住民の理解について紹介します。
地方自治体が抱えている問題点
なぜ、地方創生が必要なのでしょうか?
それは、日本全体での人口が減っていることで、国力が衰えてしまうのを避けるためです。
現在の日本では、東京などの都市部に人口が集中しており、どんどんと地方の人口が減っています。
人口減少によって起こる地方自治体の問題点は、主に3つ考えられます。
・生活に必要なサービスが受けられない
・地域経済が衰退する
・消滅可能性都市が増える
地方の人口が減り、活力が失われることで起こることは、その地域だけではなく、ゆくゆくは国全体の活力も減ることになるのです。
生活に必要なサービスが受けられない
人口が減ってしまうと、食や移動、サービスが受けられないなどの問題が出てきます。
人が少ないと、その地域にあるスーパーなどの商業施設の採算が合わなくなり、撤退してしまう恐れがあります。
そうなると、生活に必要な食料品などが手に入りづらくなってしまいます。
移動に必要なバスや電車などの交通機関も同じで、利用者数が減ってしまうと、減便や廃線などの対応がされてしまいます。
実際に2000年以降、廃止された鉄道路線は45路線で、距離で換算すると1157.9㎞が使われなくなっています。
また、地域の税収も減ってしまうので、無料で受けられていた行政サービスが受けられなかったり、有料になってしまったりする可能性もあります。
地域経済が衰退する
人口減少によって地域経済が衰退してしまうと、特に若者は地方で就職などの仕事探しをすることが困難になります。
そして仕事を探すために都市部に移住することが考えられ、余計に人口が都市部に集中する悪循環を作り出してしまうのです。
また、その地方に根付いていた産業や伝統などの継承者もいなくなり、廃業に追い込まれる事業者が増え、地域の活力がどんどんと失われてしまうのです。
地域経済が衰退してしまうと、治安が悪化したり、災害予防の活動ができなくなったりしてその地域がどんどんと住みづらい街になってしまいます。
消滅可能性都市が増える
消滅可能性都市とは、子どもを産むことを想定とした20歳~39歳の若い女性の人口が、2010年~2040年の間に5割以下になる自治体のことを言います。
若年層が居なくなり高齢者ばかりになってしまった自治体は、その自治体を存続することが難しくなってしまうため、消滅可能性都市と呼ばれるようになりました。
消滅可能性都市は、現在でも900近くの自治体が当てはまると言われていて、全国にある自治体の約半数が消滅可能性都市と言われています。
国が掲げる地方創生の施策
地方の人口が減ることで、国力が衰退することが考えられ、政府もどうにかして都市一極集中を緩和するため、地方創生について2014年から対策を立ててきました。
地方創生は、現在も続けられています。
地方創生が叫ばれ続けた当初から、国では4つの基本目標と2つの横断目標、そして3つの視点を取り入れた施策を次々と推進しています。
地方創生の4つの基本目標
人口減少に歯止めをかけ、都市一極に偏っている人口分布を緩和するため、政府は当初より以下の4つの基本目標を掲げました。
①稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする
②地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる
③結婚・出産・子育ての希望をかなえる
④ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる
①稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする
人口が都市一極集中している問題点としては、地方では産業が衰退してしまい稼げないという問題が発生しがちです。
特に若い世代が正規社員として働けないことが問題視されてきました。
そこで、地方創生の一環として、観光産業や農林水産業の成長を促進しています。
地方でも若い世代が地元で安心して稼げるように、若年層の正規雇用の創出を目標に掲げられたためです。
また、女性の就業率を上げることも目標に据えています。
②地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる
昨今の新型コロナウイルスの影響で、東京から地方への転出数は増えましたが、今までは東京への転入数の方が上回り、地方の人口はどんどんと減っていっています。
そこで、地方移住の推進や地方大学を活性化させるなどの施策が行われています。
③結婚・出産・子育ての希望をかなえる
特に若い世代の結婚や子育ては、不安が多くあるのも事実です。
地方では収入が安定しないなどの問題も発生しうるでしょう。
そこで、若い世代の就業率を上げるとともに、子育て支援や男性の育休取得なども施策として取り上げられています。
④ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる
地方でも住みたいと思えるまちづくりはとても大切なことです。
魅力的な地域があれば、ひとは自然と集まってくるでしょう。
そこで、政府としては空き店舗活用などの新たなまちづくりなどを推進しています。
地方創生の2つの横断目標
地方創生の4つの基本目標をさらに推し進めるために、政府は追加で2つの横断目標を掲げました。
それが以下です。
①多様な人材の活躍を推進する
②新しい時代の流れを力にする
①多様な人材の活躍を推進する
地方創生を推し進めるために、地方にいる人に活躍してもらわなければ、地域活性化が期待できません。
そこで、特定の人だけでなく、誰もが活躍できる地域社会にできるようにこの目標が掲げられました。
例えば、地方創生のための人材育成や地方創生カレッジ事業への支援です。
②新しい時代の流れを力にする
地方の活性化には、これからの時代の流れに即した施策も必要です。
SDGsと絡めて持続可能な社会を実現するために、地方でもSDGs未来都市などへの取り組みも必要だと考えられました。
新たな3つの視点
2014年から続けられている地方創生への取り組みですが、2021年に目標とは別に3つの視点を新たに加えられ、さらにバージョンアップしてきました。
その3つの視点とは、ヒューマン・デジタル・グリーンです。
昨今の社会情勢の変化からこの3つの視点が追加になったのです。
新たな視点①ヒューマン
地方創生の新たな視点のヒューマンとは、地方への人流を作り出し、かつ人材の育成にも力を入れることです。
昨今の新型コロナウイルスの問題でテレワークが進み、都心にいなくても仕事ができる環境が整い始めました。
そのことから、転職しなくても地方へ移住することが可能になったのです。
また、企業の本社機能を東京などの都市ではなく、地方へ移転することで税制優遇を受けられるなどメリットを作り、地方への人流を生み出しています。
新たな視点②デジタル
デジタルの発展は、私たちの暮らしを豊かにしてくれています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)などの活用で、データ活用の整備が整えば、地方や都市でも同じサービスが受けやすくなります。
そこで、デジタル人材の育成やデータ活用の支援なども視野に入れ、地方でも暮らしやすくしようという試みが始まっています。
新たな視点③グリーン
グリーンの視点はSDGsに絡めて、脱炭素社会の実現を地方でも進めていこうというものです。
地域にある資源を有効活用して、カーボンニュートラルなどの取り組みを行ったり、エネルギー地産地消を目指したりなどのグリーンな施策も視野にすすめられています。
地方創生を現実にするためには地域住民の理解が必要
地方創生は、地方の活性化などとても重要な政策の1つです。
実現するためには、国だけでなく、その地域に暮らしている住民にも理解してもらう必要があります。
例えば、公共施設を統廃合するなどの場合、利用者の住宅から施設までが遠くなってしまうなどのデメリットが発生する場合があります。
強引に計画を進めようとすれば、地域住民から反発の声が上がる可能性もあるでしょう。
そのため、地域創生のあるプロジェクトを進める時に、地域住民には100回以上の説明会を開いた団体もいるほどです。
地方創生は、その地域に住む人々に直結する問題なので、みんな自分ごととしてとらえる必要があるでしょう。
地方社会の問題点を解消するために地方創生は必要
現在日本の人口は都市に集中していて、地方では活気が失われつつあります。
それでも地方に住む人には生活がありますが、人口が少ないために生活に必要なサービスが受けられないなど、生活しづらくなっているという問題点があります。
そこで政府は地方創生を掲げて、2014年から様々な施策が続けています。
都市に集中する人口を地方に分散させるため、魅力ある地域づくりを促進し、地方に人が集まるように工夫しているのです。
私たちも、地方の魅力に目を向けるべきかもしれません。