ひっつみ、岩手の郷土汁に息づく温かい物語

ひっつみ、岩手の郷土汁に息づく温かい物語

家庭で育つ定番の汁物

ひっつみ、岩手の郷土汁に息づく温かい物語

ひっつみは、小麦粉を水でこね、耳たぶ程度の硬さになるまで練った生地を、手でちぎって鍋に入れる料理です。醤油やみそで味を整えただし汁に、大根やにんじん、ごぼう、しいたけなどの野菜と鶏肉を加えて煮込みます。決まったレシピがあるわけではなく、季節の食材や各家庭の味付けによって表情が変わるのも魅力のひとつです。

そもそもこの料理が根付いた背景には、岩手ならではの土地柄があります。岩手県の県央地域は北上川流域で平坦な土地が多く、古くから水田地帯が開けていましたが、寒さが厳しく冷害で米が取れない年もあったため、大麦や小麦、そばの生産も行われていました。そのため米粉や小麦粉、そば粉を活用する料理が多く生まれ、ひっつみはその代表的な一品として、米が不作な年に主食の代わりとしてよく食べられてきました。厳しい気候の中で工夫を重ねてきた暮らしの知恵が、今も一杯の汁物に息づいています。

とってなげと呼ぶ地域も

ひっつみ、岩手の郷土汁に息づく温かい物語

ひっつみという名前は、小麦粉を練って固めたものをひっつまんで平たく伸ばし、野菜や鶏肉などを煮た汁へ入れることに由来しています。同じ料理でも、地域によって呼び方が変わるのも面白いところで、地域によっては「とってなげ」と呼ぶところもあります。生地を鍋に投げ入れるようにして加える様子から生まれた呼び名なのでしょう。同じ一杯の汁でも、土地ごとの言葉のニュアンスに触れられるのは、郷土料理を巡る楽しみのひとつです。

大槌町が育てるご当地の顔

家庭料理として親しまれてきたひっつみですが、それを町の顔として育てようという動きもあります。大槌町では地元の飲食店や宿泊施設で独自メニューの開発を行うなど、家庭料理であるひっつみを町の名物に育てることを目指しています。旅先で立ち寄った先の一杯が、その土地ならではの工夫と出会える機会になるかもしれません。

12月3日、ひっつみの日

ひっつみには、記念日まで存在します。岩手県生めん協同組合は12月3日を「ひっつみの日」に制定し、ひっつみのPR活動を行っています。日付の由来は、12と3を「ひいふうみい」と読む語感がひっつみに似ていることから選ばれたと言われています。寒さが深まるこの時期に、ひっつみを思い出すきっかけとして覚えておくと、季節の楽しみがひとつ増えそうです。

給食にも並ぶ身近な一杯

ひっつみの魅力は、特別な場面だけでなく日常の中にもあります。地元の飲食店で提供されるほか、給食で食されるなど、ひろく県民に根づいています。子どもの頃から親しんできた味だからこそ、大人になっても懐かしさとともに楽しめる。そんな距離の近さも、この郷土汁が長く愛されてきた理由のように感じます。

お取り寄せで味わうひっつみ

自分で一から生地を仕込むのは少しハードルが高いという方にも、ひっつみは開かれています。ひっつみ用の粉や、茹でた生地とだし汁がセットになったものも販売されており、家庭でも日常的に作られています。旅先で出会った味を、帰ってからも食卓で再現できるのは、贈り物やお土産としても嬉しいポイントです。寒い季節の贈り物に、岩手の物語がつまった一杯を選んでみるのも素敵かもしれません。

岩手を訪れる機会があれば、宮沢賢治ゆかりの温泉地でもぜひ体をゆっくり休めてみてください。あわせてご覧いただくと、岩手の旅がより豊かになるはずです。

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