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小江戸・川越へようこそ。江戸の面影が今も息づく城下町の歩き方

小江戸・川越へようこそ。江戸の面影が今も息づく城下町の歩き方

東京から電車でおよそ1時間。埼玉県川越市には、黒壁の重厚な蔵がずらりと連なる通りがあります。江戸時代から「世に小京都は数あれど、小江戸は川越ばかりなり」と謳われてきた町。その言葉どおり、ここを初めて歩く人は、どこか懐かしいような、少し不思議な気持ちになるはずです。

川越が「小江戸」と呼ばれるわけ

小江戸・川越へようこそ。江戸の面影が今も息づく城下町の歩き方

川越と江戸の縁は、室町時代にまで遡ります。「江戸城」を築いたことでも知られる太田道灌が、川越城と江戸城のふたつを築き、川越街道で結びました。もとより武蔵国のなかで、川越と江戸は特別に深い関係にあったのです。

江戸時代になると、その絆はいっそう強まります。松平信綱をはじめ、江戸幕府の重臣や親藩が川越藩主を務め、幕府から厚く重視された城下町として発展しました。松平信綱は1639年(寛永16年)に藩主となると、城と城下町を本格的に整備。新河岸川の舟運を整えたことで、川越の物産は船で江戸へと運ばれ、逆に江戸の文化や学問が川越へと流れ込みました。川越は「江戸の台所」とも呼べる役割を担い、商業都市として大いに栄えたのです。

蔵造りの町並み、その意外な誕生秘話

川越を代表する風景といえば、重厚な「蔵造り」の建物が連なる通りです。黒漆喰や白漆喰で塗り固められた分厚い土壁、重ねた瓦屋根。歩いているだけで、江戸の商人町にタイムスリップしたような感覚を覚えます。

しかしこの景観、実は「大火」がきっかけで生まれました。明治26年(1893年)3月17日に起きた「川越大火」では、街の3分の1が焼失するという大惨事に見舞われます。そのとき、蔵造りの建物だけが炎に耐えて焼け残りました。防火性の高さに気づいた商店主たちは、以後こぞって蔵造りを採用。傷ついた町は、かつてよりも堂々とした蔵の街へと生まれ変わったのです。

その後、地域の人々と行政が力を合わせて景観を守り続け、平成11年(1999年)には旧市街地北部の7.8ヘクタールが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。今も明治・大正・昭和の看板建築が店舗として現役で使われており、時代の層が重なり合う通りをゆっくり歩くだけで、日本近代の商業史を肌で感じることができます。

川越を歩くとき、ぜひ出会ってほしいもの

時の鐘

蔵造りの町並みにひときわ高くそびえる木造の鐘楼が「時の鐘」です。江戸時代の初頭から城下の人々に時刻を告げ続け、現在建っているのは4代目。幾度かの火災を乗り越えながらも、今もなお決まった時刻に音を響かせます。その音色は平成8年(1996年)に環境省の「残したい日本の音風景100選」に選ばれており、町に溶け込んだ鐘の音を聞くだけで、日常の慌ただしさが少し遠のく気がします。

喜多院

慈眼大師・天海僧正ゆかりの名刹として知られる喜多院には、江戸城の建物の一部が移築されています。将軍ゆかりの書院などを間近に見ることができ、川越が江戸といかに深くつながっていたかを、建物そのものから実感できます。境内の五百羅漢も圧巻で、それぞれに異なる表情を持つ石像たちが静かに並んでいます。

菓子屋横丁

明治時代から続く菓子問屋街の名残を今に伝えるのが菓子屋横丁です。昔ながらの駄菓子や川越ならではの芋菓子が軒を連ね、子どものころの記憶を呼び起こすような空気が漂います。贈り物にもなる素朴なお菓子を選ぶ楽しさも、川越散策の醍醐味のひとつです。

暮らしや贈り物としての川越

川越に来たら、ぜひ手にとってほしいのが「川越いも」を使った菓子や、地元で醸された発酵食品の数々です。豊かな農産物と江戸由来の商業文化が育んだ食文化は、日常の食卓に取り込みやすいものが揃っています。また、蔵造りの建物を改装したギャラリーや工芸品の店も点在しており、器や布もの、紙もの好きな方への贈り物を探すにも向いています。

秋には「川越まつり」が催されます。江戸の天下祭の姿を最もよく伝えるといわれるこの祭りは、絢爛な山車と囃子が町を練り歩く光景が圧巻です。

今のうちに、ぜひ一度

川越の魅力は、観光地としての派手さではなく、「本物の時間が積み重なった場所」としての静かな存在感にあります。蔵の前に立つと、明治の商人も、江戸の職人も、同じようにこの通りを歩いていたのだなと、ふと思えてくる。そんな感覚は、なかなか得られるものではありません。

川越の町並みは、今も人々の暮らしと共にあります。移ろいながらも守られてきたこの風景を、ぜひ自分の目で確かめに行ってみてください。川越への一歩が、日本の歴史と文化への、やさしい入口になるはずです。

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