
金沢へ、はじめての一歩。加賀百万石が息づく城下町の魅力
日本海に面した石川県の中心都市、金沢。「加賀百万石」という言葉を耳にしたことがある方は多いと思いますが、実際に訪れてみると、その言葉がただの歴史の形容ではないことに気づきます。城下町の骨格がいまも街に残り、歩くほどに発見がある場所です。
城下町・金沢が育んだ文化の下地

金沢を代表する観光地のひとつ「ひがし茶屋街」は、美しい出格子と石畳が続く古い街並みが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。江戸時代から続く茶屋文化の舞台として、建物の形そのものに当時の美意識が刻まれています。
この街の土台を築いたのは、加賀藩の藩主・前田家です。1583年、前田利家が入城した直後から、本格的な石垣づくりが始まったといわれる金沢城は、以来300年近くにわたって城下町の中心であり続けました。武家文化と町人文化が交わるなかで、工芸・芸能・食が丁寧に磨かれてきた——そういう街です。
兼六園と金沢城公園
日本三名園のひとつに数えられ、国の特別名勝にも指定されている兼六園は、加賀藩歴代藩主が長い歳月をかけて築いた広大な回遊式大名庭園です。春の桜から夏の新緑、秋の紅葉、そして冬の雪景色と、どの季節に訪れても違う表情を見せてくれます。
なかでも冬の雪吊りは11月から3月中旬にかけて施され、雪の重みから木を守るために縄を張り巡らせる作業は、金沢の冬の風物詩として広く知られています。庭師が一本一本丁寧に縄を結ぶ姿には、自然と向き合う職人の仕事を感じます。
隣接する金沢城公園も見逃せません。多種多様な石垣が存在することから「石垣の博物館」とも呼ばれており、石の積み方を説明する展示もあります。菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓は古絵図や古文書をもとに当時の姿を忠実に再現したもので、2001年に復元されました。城跡というと天守閣を思い浮かべがちですが、金沢城の見どころは石垣と白い建物群の組み合わせにあります。
ひがし茶屋街を歩く
ひがし茶屋街は、伝統的な茶屋建築が軒を連ね、街並みを歩くだけでも金沢ならではの歴史と文化を肌で感じられる場所です。
江戸時代そのままの建物が残る国指定重要文化財「志摩」では昔ながらのお茶屋を見学でき、当時の三味線なども展示されています。庭を眺めながらお抹茶をいただくこともできます。建物の中に入ると、格子越しに光が差し込む独特の空間が広がります。外からの目線を遮りながら、内側から街を眺める——お茶屋ならではの設えです。
和菓子、伝統工芸品、雑貨などを扱うお店やカフェが充実しており、風情ある街並みのなかでショッピングや食事を楽しめます。金沢の工芸品は加賀友禅や金箔工芸をはじめ種類が豊富で、茶屋街はそれらを手に取って選べる場所でもあります。
暮らしと工芸、贈り物を選ぶ楽しさ
金沢には、加賀友禅・金箔・九谷焼など、全国的にも名の知られた伝統工芸が根づいています。背景には、加賀藩が長年にわたって工芸の担い手を保護・育成してきた歴史があります。工房を訪ねると、現代の職人たちが同じ技法を受け継ぎながら、今の暮らしに合うかたちを模索していることがわかります。
旅のお土産として、あるいは誰かへの贈り物として、こうした工芸品を選ぶ時間も金沢ならではの楽しみです。ショーケースの前で「これはどういう技法で作るのだろう」と立ち止まる瞬間が、知らなかった日本のものづくりへの入口になります。
金沢へ、ぜひ一度
このように、古き良き日本の情景がいまでも残る街・金沢。東京で最新のカルチャーや技術に触れることとはまた違う、歴史と文化を五感で感じる旅ができる場所です。
有名なスポットをひと通り回るだけでも充実していますが、少し路地に入ってみたり、工房に立ち寄ってみたりすると、また違う金沢が見えてきます。街そのものが、ゆっくり歩くことで発見できる層の厚さを持っています。
加賀友禅や金沢の金箔工芸については、産地ごとの記事でもご紹介しています。金沢を訪れる前後に、ぜひあわせてご覧ください。

