新潟・白根仏壇とは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説(<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/user:663highland" class="extiw" title="ja, CC BY 2.5)

新潟・白根仏壇とは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説

「仏壇」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。厳かで重厚なたたずまい、漆の黒と金箔の輝き——そんな仏壇のなかでも、新潟を代表する工芸品として300年以上の歴史を誇るのが「新潟・白根仏壇(にいがた・しろねぶつだん)」です。荘厳でありながら絢爛な美しさをもつこの仏壇は、1980年に伝統的工芸品として国に認定された、新潟の誇る手仕事のひとつ。今回はその歴史や特徴、職人の技について詳しくご紹介します。

新潟・白根仏壇の歴史|京都から伝わった技が花開くまで

新潟県は浄土真宗の始祖・親鸞(しんらん)や、日蓮宗の始祖・日蓮(にちれん)が流された地で、古くから仏教信仰が盛んな場所でした。また、度重なる信濃川の氾濫により多くの被害を受けた民衆には、仏教を心のより所とした信仰心が育まれていました。
とくに白根の主産地は、信濃川と中ノ口川に挟まれた肥沃な扇状地で、古くから農業とともに木工技術が発達してきた地域です。
こうした土地の歴史が、仏壇文化の土台を育てていきました。

1688年〜1704年(江戸時代中期)に、京都の伽藍師(がらんし)という寺院を建てる専門の宮大工・長井林右エ門が、新潟に仏壇の製造技術を伝えました。その後、京都の仏壇にさらに彫刻や装飾を施した仏壇が考案され、独特の「白根仏壇」が生み出されました。
江戸時代天明年間(1781年〜1789年)には、白根仏壇製作が木地・彫刻・金・塗箔・蒔絵の5つの工程に分業化され、量産体制が整いました。1856年以降、北海道や東北方面への販路拡大が進み、1897年には「白根仏壇同業者組合」が発足しました。
昭和50年に「白根仏壇協同組合」が設立され、同55年には「伝統的工芸品」として通商産業大臣の指定を受け、300年の輝かしい伝統は今に生き続いています。

白根仏壇の特徴|蒔絵と本金が生む荘厳な美しさ

つややかな漆黒と、きらびやかな金箔、花鳥や人物といった緻密な彫刻に蒔絵——荘厳ながらも絢爛な姿が、白根仏壇の最大の特徴です。
新潟・白根仏壇の特徴は、京仏壇の伝統的な技術や製法に独自の技術を取り入れ、蒔絵(まきえ)装飾を用いることにより優雅な作りが生み出されている点です。

蒔絵の技法

塗の上に細い筆で花や鳥などの絵模様を、漆を使って描いていき、その上に青貝やあわびの薄片や金粉・銀粉を蒔いて華麗に仕上げます。蒔く頃合いは漆の乾き具合などを職人の経験や勘で見極めています。伝統的な蒔絵の技法としては「磨き蒔絵」「高蒔絵」「平蒔絵」などがありますが、漆を何度も塗って盛り上げて立体的にする「高蒔絵」は荘厳な雰囲気が醸し出されます。

「平枡型」という独自の組み手

宮殿作りの主な部分は「平枡型(ひらますぐみ)」と呼ばれ、組み立てや解体がしやすい独特の技法で行われます。修復をする時でも組み立てや解体がしやすく、細かい部分まで容易に補修が行えるため、100年や200年経っても良好な状態を保つことができます。
解体が容易な組み立て方式になっているため、古くなれば仏壇を”洗濯”し、再度組み直すことが可能で、洗濯を依頼される仏壇のなかには、140〜150年前のものもあるそうです。
仏壇を先祖代々大切に受け継いでいく文化が、この地に深く根づいているのです。

本漆と本金箔の輝き

塗料に本漆と、本金箔・本金粉を使用しているという点も大きな特徴です。これらは永久的に変色することがないため、長年使い続けても色褪せることがないとされています。

五職の匠|分業が生む精緻な仕事

産地独特の技術・技法が生み出され、「五職」と呼ばれる各部門ごとの分業化による生産の体制が完成しています。木地師・彫刻師・金具師・塗師・蒔絵師の5人の匠が各専門工程を分業し製造するスタイルは、県内仏壇3産地の大きな特徴です。
一基の新潟・白根仏壇が完成するまでに、数ヶ月〜半年以上の期間と、数十人の職人の手が加えられることも珍しくありません。
それぞれの職人が長年かけて磨き上げた技を持ち寄り、ひとつの仏壇として結実する——そのものづくりの深さが、白根仏壇の格調を生み出しています。

使われる木材

新潟・白根仏壇に使われる木地(仏壇に使われる木材)には、桧(ひのき)、欅(けやき)、桜、姫小松(ひめこまつ)、杉などが使用されます。
いずれも厳選された良質な材料で、仏壇の長い寿命を支える土台となっています。

現代への継承|伝統技法の新たな活用

昨今、従業者の高齢化に伴う技能の継承問題が叫ばれる中、組合加盟の事業所の20〜30歳代の若手技術者を対象に、伝統工芸士らによる技能継承事業が積極的に進められています。
現在は白根仏壇作りで培われてきた仏壇技法を活かして、現代の生活に馴染みやすい製品も次々に作られています。例えば、蒔絵の技法で作られたイヤリングやブローチ、ライターなど。華やかさと上品さを兼ね備えたこれらの製品は、プレゼントにしても喜ばれるものばかりです。
2002年以降は、新潟市仏壇業協同組合と地元大学が協力し、伝統技法を用いた新たな製品開発にも取り組んでいます。
伝統を守りながら、新しい世代や生活様式に寄り添う姿勢が、白根仏壇の未来を広げています。

まとめ

新潟・白根仏壇は、300年以上にわたって受け継がれてきた、信仰と手仕事の結晶です。水害と闘いながらも仏教に心の拠りどころを見出してきた人々の歴史、そして五職の職人たちが分業で生み出す精緻な美しさ——その一基には、単なる調度品を超えた深みがあります。本漆と本金箔が変わらぬ輝きを放ち続けるように、白根仏壇の伝統もまた、これからの時代へと静かに受け継がれていくことでしょう。

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