大谷石とは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説(<a href="//commons.wikimedia.org/w/index.php?title=User:_%8, CC BY-SA 3.0)

大谷石とは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説

栃木県宇都宮市に、1500万年の時を経て生まれた石材があります。
その名は「大谷石(おおやいし)」。
やわらかな緑がかった色合いと、無数の小さな穴が開いた独特の風合いが特徴で、古くから日本人の暮らしを支えてきた石材です。
近年は日本遺産にも認定され、インテリア素材としても注目を集めています。
今回は、大谷石の歴史や特徴、その魅力について詳しくご紹介します。

大谷石とは|1500万年の地層が育んだ石材

大谷石は、今から約1500万年前に火山が噴火して噴出した火山灰や軽石などが海中に堆積して固まってできた岩石です。
地質岩石学上の名称は「流紋岩質溶結凝灰岩」という凝灰岩の一種で、栃木県宇都宮市の中心から西北約8kmの大谷町(旧城山村荒針)を中心に、東西約4km、南北に約6kmにわたって分布しています。
軽くて軟らかいため加工しやすく、さらに耐火性・防湿性に優れています。

このため住宅の外壁や蔵、門柱から大型建築物まで、幅広い建材として活用されてきました。

緑泥石など緑色の鉱物を含み、全体的に緑がかった緑色凝灰岩(グリーンタフ)として知られています。
無数の小さな穴が空いている構造をしていることから、調湿作用があり、壁材として使用すると室内の湿度を快適に保ってくれる効果があります。

また、天然ゼオライトを含有し、吸着性・粘着性・固結性があることから、水処理や脱臭処理剤としての利用も可能とされています。

大谷石の歴史|縄文時代から現代へ

大谷石が使用されたもっとも古い記録は、栃木県内の壬生町車塚古墳と間々田町千駄塚付近百塚で、約1500年前の大谷石の石棺が発掘されています。
江戸時代(1603〜1867年)には、採掘から流通までを一手に担う業者が登場し、大谷石は神社の石垣から民家の塀などに使われるようになりました。
享保6年(1721年)には鬼怒川の水利を利用した筏で江戸へも搬出され、当時江戸の隅田川沿いには大谷石を扱った問屋が6軒を数えていたとされています。
明治以降は採石産業が確立し、人車軌道や鉄道などの輸送手段の発達や採掘の機械化により、出荷量は飛躍的に増加しました。宇都宮以外にも東京や横浜に大量に出荷され、近代化する日本の都市づくりの礎を担ってきたのです。

フランク・ロイド・ライトと帝国ホテル

大谷石を世界的に有名にした出来事のひとつが、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトによる旧帝国ホテルへの採用です。

1923年に東京・日比谷に竣工した旧帝国ホテル本館(ライト館)は、鉄筋コンクリート造りに大谷石を組み合わせた独特な建築でした。ライトは、花崗岩や大理石を選ばず、軟質で加工が容易な日本産の大谷石を装飾に巧みに取り入れたとされています。

開館式が行われた当日に関東大震災が発生しましたが、建物は大きな被害を受けなかったことで大谷石の耐震性・耐火性が一躍広く知られることとなりました。

ライト館の中央玄関部分はその後、愛知県犬山市の博物館明治村に移設され、柔らかい色調で温かみのある大谷石の素材感を生かした幾何学模様の彫刻がそのまま保存されています。

大谷石の採掘|世界にも類を見ない地下空間

大谷は、古くから大規模に採掘が続けられている、世界的にもあまり例がない希少な場所です。その埋蔵量は約6億トンと推定され、採掘箇所は約200箇所(廃坑含む)にのぼります。
現在では、大谷石採掘も手堀りから機械堀りへと大きく変わってきています。
昭和40年代の最盛期には採掘事業場は約120ヶ所、年間出荷量も約89万トンまで増加しましたが、その後は年々減少しています。

採掘の跡地は、現在も多くの人を惹きつける観光スポットとなっています。

地下30mの「大谷石地下採掘場跡」は、野球場がひとつ入ってしまうほどの巨大な地下空間で、古代ローマ遺跡を思わせる壮観かつ幻想的な雰囲気となっています。この巨大地下空間では、コンサートや美術展なども開かれ、イベントスペースとしても注目を集めています。

日本遺産|大谷石文化が息づくまち宇都宮

この宇都宮に息づく「大谷石文化」は平成30年(2018年)5月に日本遺産に認定されました。さらに、大谷地域は令和6年度には国の重要文化的景観にも選定されています。
大谷寺の本尊千手観音(大谷観音)は、810年に真言宗の開祖である空海により作られたと伝えられる高さ4メートルの像です。堂内の岩壁に直接彫刻された磨崖仏が10体あり、千手観音を含め全てが国の特別史跡かつ重要文化財となっています。
2016年には日本地質学会により、栃木県の石にも選ばれています。

現代の大谷石|暮らしに息づく素材として

最近は、パネル状に薄く加工した大谷石が内装材として人気です。調湿作用を持つ大谷石は、壁材として使用すると室内の湿度を快適に保つ効果があるとされています。
耐火性・蓄熱性の高さからパンやピザを焼く窯や石釜の構造材としても用いられるなど、その用途は多岐にわたります。
大谷石細工は栃木県の伝統工芸品に指定されており、大谷石のランプや花器なども制作されています。
現在も宇都宮市では古い石蔵を再生し、魅力ある飲食・販売・サービスを行う店舗が増え、商業建築やランドマークとなる建造物でも大谷石が積極的に使われるようになっています。

まとめ

1500万年という悠久の時を経て生まれた大谷石は、縄文時代から現代まで、日本人の暮らしに寄り添い続けてきた石材です。
耐火性・調湿性・加工のしやすさといった機能的な魅力に加え、緑がかった独特の風合いは、建材としてもインテリアとしても唯一無二の存在感を放ちます。
日本遺産に認定された大谷石文化は、宇都宮という土地そのものを物語る大切な記憶。
機会があれば、ぜひ宇都宮・大谷の地を訪れて、その壮大な地下空間と石の息吹を肌で感じてみてください。

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