
万博記念公園日本庭園|美しい日本庭園の魅力と見どころ、拝観案内を徹底紹介
大阪府吹田市にある万博記念公園日本庭園は、1970年の日本万国博覧会開催時に政府出展施設として造られた、日本の造園技術の粋を集めた名園です。面積26ヘクタールの広大な庭園では、上代から現代まで4つの時代の造園様式を一度に楽しむことができ、季節ごとに移ろう美しい景観が訪れる人々を魅了し続けています。2024年には国登録記念物として文化財登録され、その価値が改めて認められた貴重な文化遺産です。
万博記念公園日本庭園の概要・基本情報
万博記念公園日本庭園は、日本万国博覧会において林立する近代建築パビリオンの未来空間と対比して、自然と緑の憩いの場を提供する役割を担った庭園として誕生しました。東西1,300メートル、南北200メートルの細長い地形に水の流れを造り、西から東に向かって流れるせせらぎに沿って、時代の変遷とともに発展した日本庭園の歴史を体感できる構成となっています。
歴史と由来
万博記念公園日本庭園は、昭和45年(1970)の日本万国博覧会で日本政府が造園した庭園として造られました。庭園の設計・施工指導を担当したのは造園家の田治六郎氏で、総理府技官を経験後、大阪市の土木局公園部長を担当していた時代にこの日本庭園に携わりました。また、足立美術館の庭園を作庭したことでも知られる中根金作氏も携わったとされています。
博覧会開催から50年以上が経過した現在も、当時の設計思想は受け継がれており、本庭園は、国の文化審議会において「造園文化の発展に寄与した意義深い事例」として評価され、2024年(令和6年)10月11日に国登録記念物(名勝地関係)として文化財登録されました。この登録により、日本の造園文化における価値が正式に認められ、今後も大切に保護されていくことになります。
作庭の背景と様式
万博記念公園日本庭園の設計では、庭園の設計は、水の流れに人類の進歩と時の流れを象徴させ、全体として調和のとれた一つの作品を作ることも意図しています。西から東へと流れる水の流れに沿って、上代、中世、近世、現代の4つの造園様式を取り入れることで、日本庭園の歴史的変遷を空間的に表現した独特な構成となっています。
この設計思想により、来園者は一つの庭園を歩きながら、平安時代の寝殿造り庭園から現代庭園まで、時代を超えた庭園文化の流れを体験することができます。各時代の庭園様式は単に並置されているのではなく、水の流れによって有機的に結び付けられ、全体として一つの大きな物語を紡いでいるのが特徴です。
万博記念公園日本庭園の見どころ・特徴
万博記念公園日本庭園は、庭園の面積26ヘクタール、東西1,300メートル、南北200メートルの細長い地形に水の流れを造り、西から東に向かって流れるせせらぎに沿って、上代から中世、近世、現代へと4つの造園様式を取り入れ、わび・さびの世界に時を忘れる贅沢な散歩道へといざないます。各地区では、それぞれの時代の庭園文化を代表する景観や建造物を見ることができ、日本庭園の奥深い魅力を存分に味わうことができます。
建造物・構造の魅力
園内には各時代を代表する建造物や庭園構造が配置されています。上代地区の深山の泉では、迎賓館を寝殿造りの建物と見立て、この様式をモデルとして作られており、迎賓館のまわりのモミやイヌマキなどは、奥深い山を思わせる景観を形成しています。
中世地区には茶室「千里庵」があり、茶室「千里庵」は、禅院の方丈(ほうじょう:居室)を象(かたど)って造られています。ここでは室町時代に発達した枯山水庭園を体験でき、水を使わずに石や砂、草木などで自然風景を表現した禅の美学を味わうことができます。
近世地区の中心となる心字池は、草書体の「心」という文字の形をした雄大な池で、中央休憩所からは、芝山(築山)を背景に、心字池、石組み、多くの名木、雪見灯篭など、日本庭園の成熟期にあたる華麗な「池泉回遊式庭園」の景観を鑑賞することができます。
自然・景観の美しさ
万博記念公園日本庭園では、各地区で異なる自然美を楽しむことができます。中世地区の木漏れ日の滝は、高さ3.5mの二段落ちの滝を中心に、その左に一つ、右に二つの形の違った小滝で構成されています。主瀑に使われている石は、庭園で最も大きく、その重量は1個で17tもある巨石が用いられています。
竹林の小径では、日本庭園を造成する前の千里丘陵には大規模な竹林が広がっていました。「竹林の小径」は、郷土の風景を再現するためにつくられた場所で、タケの下にはセンリョウ、マンリョウ、ナンテンなどが植えられ、”もののあわれ”を感じさせる静かな流れも配置されています。
現代地区の旋律の鯉池では、自然石を使わず、直線に切り取られた切石が、オブジェのように並んでいるモダンな庭であり、切石を山々がつながる様子と見立て、そこから湧き出た水が川を経て海に流れる自然の風景を描いています。
季節の見どころ
万博記念公園日本庭園は四季を通じて異なる美しさを見せてくれます。春には、ボタン桜(関山)が咲き誇り、洲浜を見越して観る桜は格別な趣があります。初夏には春の海、筑波根、美吉野など、約90品種・約12,000株のハナショウブが咲き誇ります。見頃は6月上旬から6月中旬となります。
同じく初夏には、6,250平方メートルの池に26品種の花ハスと7品種のスイレンが初夏の訪れとともに、池一面に咲き誇ります。開花に合わせて毎年早朝観蓮会が実施されています。
つつじヶ丘では、クルメツツジの園芸品種のほか、ヒラドツツジ、サツキなど多種類のツツジを群植し、「ツツジの名所」となるように作庭された場所で、赤・ピンク・白など多彩なツツジが咲き乱れる花のじゅうたんを楽しむことができます。
秋には木漏れ日の滝周辺で、両岸にはモミジが多植され、新緑の薄葉を通す光や樹冠の隙間を通る木漏れ日、秋に真っ赤に染まった葉など、訪れるたびに違った表情を楽しめる紅葉渓の景色を呈しています。
拝観案内
万博記念公園日本庭園を最大限に楽しむためには、季節や時間帯を考慮した計画的な拝観がおすすめです。広大な庭園内では4つの時代の造園様式を順を追って楽しむことができ、各エリアでは異なる趣の美しさと文化的な価値を感じることができます。
拝観のポイントと楽しみ方
万博記念公園日本庭園の拝観では、中央休憩所から始めることをおすすめします。ここには庭園のビデオ放映室があり、庭園全体の構成や見どころについて事前に学ぶことができます。その後、西から東へと水の流れに沿って歩くことで、時代の変遷を体感しながら拝観できます。
上代地区では深山の泉から始まり、平安時代の寝殿造り庭園の雅な美しさを味わえます。中世地区の竹林の小径では、手入れされた竹林の静けさの中で、「ししおどし」や「せせらぎ」の音がどこからともなく聞こえ、いっそうの静寂を感じることができます。また、千里庵では枯山水庭園の禅の美学に触れることができます。
近世地区の心字池周辺は、園路を周遊しながら変化する景観を満喫して日本庭園の集大成を楽しむことができる、当園で最も規模の大きい場所です。現代地区では、伝統的な庭園とは一線を画すモダンな表現を楽しめます。
茶室「汎庵・万里庵」では、春と秋のイベント開催時には一般の方へ茶庭を特別公開しています。はす庵では木々に囲まれた空間で観魚を楽しみながらひと時の憩いをお楽しみいただけますが、当面の間休業となっています。
年中行事・季節のイベント
万博記念公園日本庭園では季節ごとに特別なイベントが開催されています。最も人気が高いのは、早朝から開花が始まり、午後には閉じてしまうことが多い花ハスを鑑賞する早朝観蓮会です。26品種約1,200株の花ハスと、7品種約1,000株のスイレンの、神秘的で優美な姿をぜひご観賞いただけます。
早朝観蓮会の期間中は、中央口と日本庭園前ゲートのみ6:15から開門し、ゲートにて入園手続きののち、日本庭園正門を経由してはす池へ進むことができます。購入いただいた入園券は9:30以降の当日中園内利用可能です。6:15から9:30は、上記ゲートから日本庭園はす池へのルートのみ通行可能となります。
春には桜の開花に合わせたイベント、秋には紅葉の美しさを楽しむイベントなど、季節の魅力を最大限に引き出すプログラムが用意されています。関連イベントについては、開催が決まり次第公式サイトでお知らせされます。
フォトスポット情報
万博記念公園日本庭園には数多くの絶景フォトスポットがあります。洲浜を見越して観るボタン桜(関山)は格別な趣があり、春の代表的な撮影スポットとなります。心字池を中央休憩所から望む景観は、芝山(築山)を背景に、石組み、多くの名木、雪見灯篭など、日本庭園の成熟期にあたる華麗な「池泉回遊式庭園」の景観を鑑賞することができ、最も人気の高い撮影ポイントです。
竹林の小径では、縦に伸びる竹の美しいラインが印象的な写真を撮ることができます。千里庵の枯山水庭園では、太陽の移ろいによる砂紋の陰影、植物の多様な緑、生垣越しに広がる空の青も含めて、時間とともに変化する美しい色彩を撮影できます。
木漏れ日の滝では、高さ3.5メートルの二段落ちの滝を中心とした躍動感ある景観を撮影でき、特に新緑や紅葉の季節には格別な美しさを記録できます。はす池では、早朝の蓮の花が開く瞬間や、池一面に広がる蓮とスイレンの壮大な景観を撮影することができます。
アクセス・利用情報
万博記念公園日本庭園は、大阪府吹田市の万博記念公園内にあり、公共交通機関と自動車の両方でアクセス可能です。日本庭園は自然文化園内にあるため、まず万博記念公園への入園が必要となります。
交通アクセス
電車でお越しの場合、大阪モノレール「公園東口駅」下車徒歩15分、または「万博記念公園駅」下車徒歩20分が最もアクセスしやすいルートです。大阪モノレールには複数の路線から接続でき、阪急線は南茨木駅、山田駅、蛍池駅、地下鉄御堂筋線(北大阪急行線)は千里中央駅、地下鉄谷町線は大日駅、京阪本線は門真市駅からそれぞれアクセス可能です。
新幹線でお越しの場合は、JR「新大阪駅」下車後、地下鉄御堂筋線(北大阪急行線)「新大阪駅」から「千里中央駅」、大阪モノレール「千里中央駅」から「万博記念公園駅」下車となります。
車でお越しの方は、万博記念公園「日本庭園前駐車場」から徒歩5分が最も便利です。その他、「東駐車場」から徒歩15分、「中央駐車場」から徒歩20分となります。中国自動車道「中国吹田IC」より中央駐車場まで約5分、日本庭園前駐車場まで約10分です。
拝観時間・料金・駐車場情報
万博記念公園日本庭園の利用期間は1月2日から12月27日まで(事情により変更になる場合があります)、利用時間は9時30分から17時まで(入園は16時30分まで)となっています。定休日は毎週水曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始ですが、4月1日から5月2日まで・10月・11月は無休です。
利用料金は自然文化園・日本庭園共通で、一般の大人260円、小中学生80円、未就学児無料です。団体割引(20人以上)や学校団体割引もあり、回数券(11枚つづり)は大人2,600円、小中学生720円で1年間有効です。
駐車場料金は平日と土日祝で異なり、平日は普通車2時間まで410円、土日祝は2時間まで620円となっています。24時間までの上限は平日1,100円、土日祝1,600円です。身体障害者手帳等をお持ちの方は、事前申請または当日の提示により減免を受けることができます。
<住所> 〒565-0826 大阪府吹田市千里万博公園
参照サイト
・万博記念公園 公式サイト:https://www.expo70-park.jp/facility/japanese-garden/