
赤間神宮|悲劇の幼帝安徳天皇を祀る神社の歴史と見どころ、参拝情報を完全ガイド
山口県下関市に佇む赤間神宮は、壇ノ浦の戦いで悲劇的な最期を遂げた安徳天皇を祀る神社として知られています。関門海峡を望む竜宮造りの美しい水天門と、平家物語ゆかりの歴史的な見どころが訪れる人々を魅了し続けています。
赤間神宮の概要・基本情報
赤間神宮は、壇ノ浦の合戦に敗れ、わずか8歳という幼さで入水された安徳天皇を祀る神社です。関門海峡に面した下関市の中心部に位置し、地元のパワースポットとして多くの参拝者が訪れています。
安産・家内安全・無病息災・開運招福・海上安全・商売繁盛など、幅広いご利益があります。特に海上安全のご利益は、安徳天皇が海で亡くなったことと関連が深く、漁業関係者や船舶関係者の信仰を集めています。
歴史と由来
赤間神宮の歴史は古く、859年(貞観元年)に阿弥陀寺として開闢されました。その後、1185年(文治元年)の壇ノ浦の戦いで入水した安徳天皇の遺体は現場付近では発見できませんでしたが、赤間関(下関)に1191年(建久2年)、勅命により御影堂が建立され、建礼門院ゆかりの尼を奉仕させました。
明治の神仏分離により阿弥陀寺は廃され、神社となって「天皇社」と改称しました。その後、1875年(明治8年)10月7日に赤間宮に改称し、官幣中社に列格。1940年(昭和15年)8月1日には官幣大社に昇格し、赤間神宮に改称されました。
現在の社殿は戦後に再建されたもので、第二次世界大戦により社殿を焼失した後、1965年(昭和40年)4月に新社殿が竣工しました。長い歴史を通じて、皇室をはじめ多くの人々の崇敬を受け続けています。
祭神とご利益
赤間神宮の主祭神は第八十一代安徳天皇です。安徳天皇は平家の当主平清盛の娘と高倉天皇との間にできた子供で、源氏と平家の最後の戦いである壇ノ浦の合戦で平家が敗れ、8歳の若さで壇ノ浦の流れに入水した悲劇の天皇です。
安徳天皇は幼くして帝位に就き、平家一門とともに都落ちを余儀なくされた後、最終的に関門海峡で生涯を終えました。その悲劇的な生涯から、特に子どもの健やかな成長や家族の安全を願う参拝者が多く訪れます。
また、海で亡くなった天皇を祀ることから海上安全のご利益が特に有名で、漁業や海運業に携わる人々の信仰を集めています。商売繁盛や開運招福のご利益もあり、地元の事業者からも厚い信仰を受けています。
赤間神宮の見どころ・特徴
赤間神宮には平家物語ゆかりの史跡や文化財が数多く残されており、歴史好きの方にとって見どころが豊富な神社です。特に竜宮造りの美しい水天門は、この神社の象徴的な建造物として多くの参拝者を魅了しています。
境内には安徳天皇の御陵をはじめ、平家一門の墓や小泉八雲の怪談で有名な耳なし芳一ゆかりの芳一堂など、歴史ロマンを感じさせるスポットが点在しています。これらの見どころを巡ることで、平家物語の世界を身近に感じることができるでしょう。
竜宮造りの水天門
赤間神宮の入り口にそびえる水天門は、赤と白の美しい建物です。竜宮造りの華やかな門で、太平洋戦争で焼失後、再建する際に竜宮城をイメージして造られました。2018年(平成30年)11月2日には、「赤間神宮水天門及び回廊」が国の登録有形文化財に登録されています。
この美しい門の背景には感動的な物語があります。安徳天皇が亡くなる際、一緒に入水した祖母が「今ぞしる みもすそ川の おんながれ 波の下にも 都ありとは」という歌を詠んだと伝わっています。この歌は「海の底にも都があります」という意味で、幼い安徳天皇を慰めるために詠まれた心温まる歌です。
水天門の鮮やかな朱色と白色の対比は、関門海峡の青い海によく映え、多くの観光客が写真撮影を楽しんでいます。夜間にはライトアップも行われ、幻想的な美しさを演出します。
安徳天皇阿弥陀寺陵
水天門をくぐると境内には、安徳天皇阿弥陀寺御陵があります。歴代天皇陵の治定の終了後、安徳天皇陵は多くの伝承地の中からこの安徳天皇社の境内が1889年(明治22年)7月25日、「擬陵」として公式に治定されました。
御陵は円墳の形をしており、玉垣と土塀で二重に囲まれた厳粛な雰囲気を醸し出しています。ここに立つと、わずか8歳で激動の時代を生き抜かねばならなかった幼帝への哀悼の念が自然と湧き上がります。
毎年5月には先帝祭が開催され、安徳天皇の御霊を慰める神事が執り行われます。この時期には全国から平家の末裔や歴史愛好家が集まり、静かに手を合わせる姿が見られます。
平家一門の墓(七盛塚)
壇ノ浦の戦いで敗れた平家一門の合祀墓(供養塔)である七盛塚があります。14名の供養塔が並び、名前に「盛」字の付く者が多いことから「七盛塚」とも称されています。
壇ノ浦の合戦後、関門海峡で海難事故が頻発するようになりました。これを平家の怨霊の仕業と考え建てられた供養碑がこの七盛塚です。平清盛をはじめとする平家の武将たちの魂が、ここで静かに眠っています。
1928年に俳人・高浜虚子が下関を訪れた際詠んだ「七盛の墓包み降る椎の露」という句を刻んだ句碑が、七盛塚の前に建っています。歴史の重みを感じさせる静寂な空間で、多くの参拝者が手を合わせています。
芳一堂と耳なし芳一の伝説
赤間神宮の前身である阿弥陀寺は、小泉八雲の怪談で有名な「耳なし芳一」の舞台になったお寺です。芳一堂には琵琶を弾く芳一の像が立ち、隣には平家一門の墓が並びます。
この物語は、盲目の琵琶法師芳一が平家の亡霊に呼ばれて毎夜琵琶を弾かされるという怪談です。住職が芳一の体に経文を書いて魔除けとしましたが、耳だけ書き忘れたため、亡霊が耳だけを持ち去ったという恐ろしくも悲しい話として語り継がれています。
今でも芳一は平家の亡霊に琵琶を弾き語っているのかもしれません。芳一堂は神秘的な雰囲気に包まれており、平家物語の世界に浸ることができる貴重なスポットです。
宝物殿の貴重な展示品
境内には源平合戦の様子が記された貴重な資料など、重要文化財が展示されている宝物殿があります。小さいですが見ごたえのある展示で、平家物語や源平合戦についてより深く理解することができます。
宝物殿では安徳天皇ゆかりの品々をはじめ、平家一門に関する歴史的な資料や美術品が展示されています。特に平家物語の世界を視覚的に理解できる絵巻物や古文書は必見です。拝観料は100円と手頃な価格で、歴史好きの方には特におすすめのスポットです。
参拝案内
赤間神宮は一般的な神社と同様の参拝作法で参拝できますが、安徳天皇という特別な御祭神を祀る神社として、より深い敬意を持って参拝することをおすすめします。境内は静寂に包まれており、心を落ち着けて参拝するのに適した環境が整っています。
参拝作法とマナー
赤間神宮での参拝は、一般的な神社参拝の作法に従います。まず水天門をくぐる前に一礼し、手水舎で手と口を清めます。参道は中央を避けて歩き、拝殿前では二拝二拍手一拝の作法で参拝します。
安徳天皇の悲劇的な生涯を偲び、静かで敬虔な気持ちで参拝することが大切です。境内では大きな声での会話は控え、写真撮影の際も他の参拝者への配慮を忘れないようにしましょう。
御陵への参拝も可能ですが、より厳粛な場所であることを理解し、特に静かに参拝することが求められます。平家一門の墓である七盛塚でも、歴史の重みを感じながら手を合わせることができます。
先帝祭と年中行事
赤間神宮の最も重要な祭事は、毎年5月2日から4日にかけて開催される先帝祭です。これは安徳天皇の命日に行われる盛大な祭りで、全国から多くの参拝者が訪れます。
5月2日は平家落人の子孫らで組織される全国平家会の参列のもと御陵前での神事を始め、平家一門追悼祭などが行われます。5月3日には豪華絢爛な「上臈参拝」が見どころで、平安時代の宮中装束に身を包んだ女性たちが優雅に参拝する様子は圧巻です。
この期間中は下関市内でも外八文字道中、唐戸から壇ノ浦付近の海上での「源平船合戦」など、様々な関連行事が開催されます。歴史絵巻を目の当たりにできる貴重な機会として、多くの観光客が訪れる時期でもあります。
その他の年中行事として、元旦祭、節分祭、秋季例大祭なども執り行われており、それぞれの季節に応じた神事を体験することができます。
御朱印・お守り情報
赤間神宮では美しい御朱印をいただくことができます。安徳天皇を祀る神社として特別な意味を持つ御朱印は、多くの参拝者に人気です。御朱印帳も用意されており、赤間神宮オリジナルのデザインが施されています。
お守りについては、海上安全、家内安全、学業成就、安産祈願など、様々な種類が用意されています。特に海上安全のお守りは、安徳天皇が海で亡くなったことから特別な意味を持つとされ、漁業関係者や船舶関係者に人気があります。
子どもの健やかな成長を願うお守りも多く、安徳天皇の幼い御魂を慰めるという神社の性格から、特に効果があるとして信仰されています。詳細な授与品については、社務所にてお尋ねください。
アクセス・利用情報
赤間神宮は下関市の中心部に位置し、公共交通機関でも自家用車でもアクセスしやすい立地にあります。関門海峡に面した景勝地にあるため、参拝と併せて周辺の観光も楽しむことができます。
交通アクセス
電車とバスを利用する場合、JR下関駅からバスで9分「赤間神宮前」下車すぐとなります。JR新下関駅からはバスで約20分「赤間神宮前」下車すぐです。下関駅からは徒歩でも約15分程度で到着できるため、下関の街並みを楽しみながら歩いて向かうのもおすすめです。
自家用車を利用する場合は、中国自動車道下関市ICから車で15分程度です。関門橋や関門トンネルを利用して九州方面からのアクセスも良好で、福岡県からは1時間程度で到着できます。
飛行機を利用する場合、山口宇部空港からバスに乗車すると75分でJR下関駅に到着します。福岡空港からは電車と新幹線を使えばJR下関駅まで約50分、北九州空港からはバスと電車を使ってJR下関駅まで約50分で到着します。
住所:〒750-0003 山口県下関市阿弥陀寺町4-1
拝観時間・料金・駐車場情報
赤間神宮の境内への参拝は基本的に自由で、拝観料は不要です。ただし、宝物殿の見学には100円の料金が必要で、開館時間は9時00分から16時30分までとなっています。
駐車場は普通車50台分が用意されており、参拝者は無料で利用できます。ただし、先帝祭などの大きな行事の際には混雑が予想されるため、公共交通機関の利用をおすすめします。周辺駐車場の混雑状況については、下関市の観光サイト「まちナビ」で確認することができます。
境内には多機能トイレも設置されており、バリアフリーにも配慮されています。車椅子での参拝も可能ですが、一部段差がある箇所もあるため、事前に確認することをおすすめします。
営業時間は特に定められておらず、年中無休で参拝できますが、社務所の受付時間や宝物殿の開館時間には制限があります。詳細については事前に神社にお問い合わせください。
参照サイト
・赤間神宮公式サイト:https://akama-jingu.com/