彌治郎こけしとは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説(Shutterstock / contributor: 228987915)

彌治郎こけしとは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説

宮城県白石市の山あいに、江戸時代から受け継がれてきた愛らしい木の人形があります。
頭にはカラフルなベレー帽のような模様をいただき、丸みを帯びたくびれのある胴——それが「彌治郎こけし」です。
全国に伝統こけしの産地は数あれど、彌治郎こけしのもつポップで自由な表情は他に類を見ません。
この記事では、彌治郎こけしの歴史と特徴、その魅力をじっくりご紹介します。

彌治郎こけしの歴史|農民の副業から生まれた手仕事

彌治郎こけしの産地は、宮城県白石市福岡八宮の弥治郎地区です。
その歴史は古く、江戸時代中期の宝暦年間に木地業が開かれたといわれており、享和3年(1803年)の記録にはすでに13人の木地師の名前が残っています。
弥治郎は半農半工の地域で、農閑期にこけしを作り、鎌先温泉の湯治客などに子どもの土産として売っていました。
農民が木地業を副業とし、妻女が鎌先温泉にみやげ品を売り歩く「鎌先商い」が盛んにおこなわれていたといいます。
温泉地の賑わいとともに育まれた、まさに暮らしに根ざした工芸品です。

鎌先温泉近くの弥治郎村では、もともと雑器や小物類が作られており、江戸末期には近くの遠刈田温泉の影響でこけしなどの木地玩具を作り始めていたと考えられています。

そして1981年(昭和56年)には、鳴子系、肘折系、作並系、遠刈田系、弥治郎系の5つの系統が「宮城伝統こけし」として国の伝統的工芸品に指定されました。

彌治郎こけしの特徴|ベレー帽模様と自由な彩色

彌治郎こけしを一目見て気づくのは、その華やかさと個性的なフォルムです。

頭が大きく、頭頂には豊かな色彩で二重三重のロクロ模様を描くことに特徴があります。
胴模様にも幅広いロクロ模様を入れたり、花とロクロ模様を組み合わせたものなどがあります。
「彌治郎こけし」の大きな特徴は、華やかな衣装です。
ろくろ線に着物の襟と裾を描いたものや、蝶や花など女性らしいモチーフの絵柄をまとった、くびれたウエストも女性らしい印象を与えます。
こけしの産地の中では珍しい温暖な環境にあるためか、開放的でカラフルな彩色が施され、どこか西洋の趣を感じさせます。
頭頂部にはろくろ線によるベレー帽のような模様が描かれますが、これが主流になったのは明治時代からといわれています。

温泉客のリクエストが生んだ多彩なバリエーション

弥治郎の職人たちが湯治客からのリクエストに応じていった結果、形状・描彩ともに多彩なバリエーションへといき着いたといわれています。
温泉客から好みの形状や描彩などを聞き、注文に応じて製造したことから、系統全体としては自由でのびやかな印象を与えてくれます。
構造はさし込み式とはめ込み式の二種類ありますが、「ペッケ」と呼ばれる小寸物は作りつけであり、胴の中ほどがくびれているものが多くあります。

彌治郎こけしの魅力|工人ごとに違う顔と表情

弥治郎こけしは他の系統のこけしに比べて表情がとてもファニーで、色や柄もモダンでポップです。
工人ごとにお顔の表情やデザインが違うのも魅力的で、繊細な絵付けが施されるこけしには一つとして同じものはありません。

自分だけの一体を見つける楽しみがあるのも、彌治郎こけしの大きな魅力です。

同じ弥治郎こけしでも工人さんによってこんなに違うのかという驚きがあり、好きな工人さんを見つける楽しみがあります。

帽子をかぶったこけしやきのこ型のこけしなど、工人の個性がそのまま形になっているのが見ていて飽きないところです。

彌治郎こけし村|産地で体験する手仕事の世界

こけしの里である弥治郎地区に立地し、平成6年に完成した弥治郎こけし村は、平成30年にリノベーションを終え、こけしの収蔵展示や普及啓発、技能伝承の拠点として新たな展開をしています。
白石駅から車で15分ほどの弥治郎地区にある弥治郎こけし村では、こけしにまつわる展示や絵付け体験が行われるメインの建物のほか、敷地内にはこけし工房もあり、村全体が弥治郎こけしの素晴らしさを伝える施設となっています。
館内では、弥治郎こけしの絵付け体験もできます。
絵付けは赤・黄・紫の4色と墨を使い、細い筆で行います。
絵付け体験は1体700円、電動ろくろを使う場合は1体1000円で、作業にかかる時間は1時間ほどです。

後継者育成への取り組み

近年では、後継者不足解消のためにこけし工人を目指す若者を一般公募し、地域人材育成事業として後継者の育成に取り組んでいます。

長い年月をかけて磨かれてきた技を次世代へつなごうとする、産地の静かな熱意が伝わってきます。

まとめ

東北固有の工芸品である伝統こけしは、江戸末期ごろ、東北地方の温泉地において子どもの土産品として生まれたものと伝えられています。

その中でも彌治郎こけしは、農民の暮らしと温泉文化が交わる場所で育まれた、カラフルで自由な表情が印象的な一系統です。
ベレー帽のようなろくろ模様、工人ごとに異なる個性豊かな顔——見れば見るほど愛着が湧いてくるこけしです。
白石を訪れた際には、ぜひ弥治郎地区に立ち寄り、手仕事の温もりを感じてみてください。

関連記事一覧