
有松絞・鳴海絞 愛知が育てた藍と白の染め物
名古屋の南、かつて東海道の宿場町として栄えた有松と鳴海の町では、江戸時代から藍色と白の美しい文様を布に描き出す絞り染めが受け継がれてきました。旅人の土産物として生まれたこの染め物は、今も一つひとつ手でくくられ、手で染められています。糸のひと結びに込められた手仕事の積み重ねを、少しずつひもといていきます。
有松絞・鳴海絞とは

有松絞・鳴海絞は、愛知県名古屋市緑区の有松・鳴海地区で作られてきた絞り染めの総称です。布を糸でくくったり縫ったりして防染し、藍などで染め上げることで、独特のにじみやぼかしを持つ文様を生み出します。東海道の宿場であった有松は、旅人たちに手ぬぐいや浴衣地を売る土産物として絞り染めを発展させてきた町で、通りには今も往時の面影を残す商家の町並みが続いています。
特徴と魅力

有松絞・鳴海絞の魅力は、同じ図案でも糸のくくり方ひとつで表情がまったく違ってくるところにあります。くくった部分は染料が入らず白く残り、ゆるめにくくれば染料がにじんでやわらかな濃淡が生まれます。鹿の子絞りのような細やかな粒状の文様から、布を板で挟んで染める技法まで、技法によって布の表情がまるで違うのも見応えのあるところです。絞りの文様は立体的に布に凹凸を残すため、浴衣や手ぬぐいになったときにも独特の風合いと涼やかさを感じさせてくれます。
産地・作り手の話
絞り染めは一枚の布が完成するまでに、図案を描く人、糸でくくる人、染める人というように、多くの手を経て仕上げられていきます。くくりの工程は特に細かく根気のいる作業で、地域の人々の内職として長く支えられてきた歴史があります。染めの工程を担う職人は、くくられた布の状態や藍の調子を見ながら、何度も浸けて色を重ねていきます。一反の浴衣地に施される絞りの数は数えきれないほどで、見えない部分にまで職人の手間がかけられていることが、この染め物の奥行きを支えています。
有松の町を歩くと、絞り問屋の看板を掲げた古い町家が今も軒を連ね、染め物の町として歩んできた歴史を肌で感じることができます。
2026.07.22
有松 絞り染めが息づく町並みを歩く旅
スラッグ: arimatsu-shibori-townscape-guide タイプ: クラスター タグ: 愛知県, 名古屋市, 有松, 鳴海, 絞り染め 名古屋の中心部から少し足を延ばすと、絞り染めの技とともに時を重ねてきた町並みに出会えます。愛知県名古屋市緑区の有松は、旧東海...
暮らしや贈り物での楽しみ方
絞り染めの浴衣や手ぬぐいは、着るたびに独特のやわらかな風合いを楽しめるのが魅力です。手ぬぐいなら日々の暮らしの中で気軽に取り入れやすく、贈り物としても喜ばれます。一枚ごとに絞りの表情が少しずつ異なるため、同じ柄でも世界に一つだけの表情を持つ布に出会えるのも、手仕事ならではの楽しみです。涼を感じさせる文様は夏の装いやしつらいに取り入れると、季節の移ろいを布の上に映すことができます。
まとめ
有松・鳴海の町で糸をくくり、藍で染め上げるという手仕事は、宿場町の賑わいとともに育まれ、今も静かに受け継がれています。一反の布に込められた無数のくくりの跡をたどることは、作り手の時間に触れることでもあります。だからこそ今のうちに、この藍と白の染め物が持つ手仕事の物語に、少しだけ近づいてみてほしいと思います。

