山中温泉山中節が息づく湯の町を巡る旅

山中温泉山中節が息づく湯の町を巡る旅

石川県加賀市の山あいに湯けむりを立てる山中温泉は、渓谷の景色と三味線の音色がともに旅人を迎えてくれる温泉地です。松尾芭蕉も歩いたと伝わるこの町には、湯だけでなく歌や器、橋のたもとの散策道まで、ゆっくり味わいたい魅力がいくつも重なっています。ここでは山中温泉らしい時間の過ごし方を、いくつかの視点からご紹介します。

山中節が響く湯の町の情緒

山中温泉山中節が息づく湯の町を巡る旅

山中温泉を語るうえで欠かせないのが「山中節」です。旅人と土地の人との別れや情愛を唄うこの民謡は、湯宿の座敷や祭りの場で長く受け継がれてきました。三味線の音とともに聞く山中節は、単なる観光の演目というより、この土地の暮らしの中で育まれてきた声そのものです。町を歩きながら耳を澄ませると、どこかから唄の練習の音が聞こえてくることもあり、湯の町の空気をより深く感じさせてくれます。

鶴仙渓を歩く渓谷散策

山中温泉山中節が息づく湯の町を巡る旅

温泉街のすぐそばを流れる大聖寺川がつくる鶴仙渓は、四季それぞれの表情を見せる景勝地です。渓流沿いに整えられた遊歩道を歩けば、新緑や紅葉、川のせせらぎを間近に感じながら、湯上がりの散歩を楽しめます。急ぐ旅ではなく、川音を聞きながらのんびり歩くことこそが、この土地らしい過ごし方といえるでしょう。

こおろぎ橋のたもとで芭蕉に思いを寄せる

鶴仙渓に架かる木造の橋、こおろぎ橋は山中温泉を象徴する風景のひとつです。この地を訪れた松尾芭蕉が、山中の湯を称えた句を残したことは知られており、橋のたもとに立つと、旅の途中でこの景色に足を止めた昔の旅人の姿がふと思い浮かびます。写真に収めるだけでなく、しばらく橋の上で川面を眺めてみるのもおすすめです。

総湯 菊の湯でひとっぷろ

山中温泉の湯めぐりの中心にあるのが、共同浴場の菊の湯です。男湯と女湯が向かい合うように建てられており、地元の人と旅人が同じ湯につかる、開かれた温泉地らしい光景が今も残っています。宿の内湯とはまた違う、町の湯として親しまれてきた空気を味わってみてください。

山中漆器の器に出会う

山中温泉は、ろくろを使った木工の技から生まれる山中漆器の産地としても知られています。木目を活かした挽物の美しさは、実際に手に取ってみるとその軽さと質感の心地よさに気づかされます。湯上がりに立ち寄れる工房や店で、普段の暮らしに寄り添う器を探してみるのも、この町ならではの楽しみ方です。

選ぶ楽しさを持って訪れる湯の町

山中温泉には、唄と渓谷、湯と器という異なる魅力が無理なく共存しています。すべてを一度に味わう必要はなく、気になったところから少しずつ立ち寄っていく。そんな自由な旅の組み立てができるのも、この湯の町の懐の深さかもしれません。

全国の名湯を訪ねてみたい方には、下呂温泉の記事もあわせてご覧ください。

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