
近江牛とは。400年の歴史を持つ日本最古のブランド牛
近江牛は、神戸牛・松阪牛と並んで日本三大和牛のひとつに数えられ、その歴史は最も長く、400年以上前にさかのぼれる日本最古のブランド牛です。滋賀県が育んだこの牛肉には、琵琶湖の恵みと、脈々と受け継がれてきた生産者の技が宿っています。まだよく知らないという方にも、近江牛の奥深い世界をひとつずつご案内します。
近江牛の呼び方と定義

近江牛は「おうみぎゅう」「おうみうし」どちらの読み方も認められています。「近江牛」生産・流通推進協議会では「おうみうし」と呼ばれています。
近江牛と名乗るためには「豊かな自然環境と水に恵まれた滋賀県内で最も長く飼育された黒毛和種」であることが必要です。産地が滋賀県全体に広がっているという点も、他のブランド牛とは異なる大きな特色のひとつです。
400年以上の歴史

戦国時代の記録から始まる
1590年(天正18年)、豊臣秀吉の小田原攻めの折に牛肉が武将たちに振る舞われたという史実が、近江牛の歴史を語るうえでの古い記録のひとつとして残っています。
「養生薬」として将軍家へ
1687年、彦根藩で牛肉の味噌漬けが「反本丸(へんぽんがん)」と称する養生薬として商品化され、彦根藩主井伊家より江戸の将軍家や諸侯に献上されました。仏教の影響で肉食がタブーとされた江戸時代、この「反本丸」が開発された背景には、彦根藩で武具や馬具に使用する牛皮の調達過程で発生する牛肉を何とかして食べられないかという工夫がありました。これが現在、滋賀県の郷土料理として知られる近江牛の味噌漬けの始まりです。
「近江牛」という名前が生まれた明治時代
明治22年(1889年)に東海道本線が開通し、近江八幡駅ができると翌年(1890年)から東京への陸路での直輸送が始まり、ようやく「近江牛」の名が使われるようになりました。
近江牛ならではの特徴
きめ細かな肉質と霜降りの美しさ
肉質がきめ細かく、筋肉が繊細で細く滑らかで、サシが全体的に美しく入っており、甘く深い味わいを生み出しています。
肉質は芳醇な香りと、口の中で脂が溶けやすいことが特徴です。こうした特性の背景には、他産地の黒毛和種と比べて近江牛がより豊富なオレイン酸を含むことが挙げられます。
琵琶湖の水と近江米の稲わらが育む風土
世界有数の古代湖である琵琶湖。そこを囲む山々から流れ出る多くの清流は、肥沃な土壌を形成し、穏やかな気候とあいまって、滋賀県では古くから水稲(近江米)の栽培が盛んです。近江牛は飼料として稲わらを与えるなど、こうした豊かな自然環境と風土の恵みを受けて育てられています。
国の地理的表示(GI)産品に登録
近江牛は歴史が古いことや品質が高いことなどが評価され、農林水産省により地理的表示(GI)産品に登録されています。歴史と伝統に加え、国としてのお墨付きも与えられた産品です。
認証近江牛という選りすぐりの存在
近江牛の中でも特に厳格な基準をクリアしたものは「認証近江牛」として認定されます。枝肉格付けがA4・B4等級以上のもの、「近江牛」生産・流通推進協議会の構成団体の会員が生産したもの、そして滋賀食肉センターまたは東京都立芝浦屠畜場で屠畜・枝肉格付けされたもの、という要件を満たした選りすぐりだけが「認証近江牛」として認定証を得ることができます。
おすすめの食べ方
特徴はなんといってもその霜降り度合いの高さ。芳醇な香りとやわらかさをもち、口に入れたとたんに広がるとろけるようなおいしさは、一度食べたら忘れられない味になります。すき焼きやしゃぶしゃぶで脂の甘みをじっくり味わうのはもちろん、ステーキでその肉本来の旨みをシンプルに堪能する食べ方も人気です。また、江戸時代から続く郷土の味「味噌漬け」は、近江牛の歴史を舌で感じられる一品としておすすめです。
約80の牧場が守る、滋賀の誇り
現在では滋賀県内の約80の牧場で近江牛が肥育されています。それぞれの牧場が独自の飼育哲学と技術を持ちながら、琵琶湖の恵み豊かな大地で牛と向き合っています。400年という長い歳月が今も静かに、一頭一頭の中に受け継がれています。

