駿河竹千筋細工とは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説(<a href="//commons.wikimedia.org/wiki/User:%, CC BY-SA 4.0)

駿河竹千筋細工とは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説

静岡県の伝統工芸「駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)」をご存知でしょうか。
細く丸く削った竹ひごを一本一本丁寧に組み上げ、千筋もの線が織りなす繊細な曲線美が、見る人の心をやさしく捉えます。
実用的な日用品でありながら、洗練されたインテリアとしても愛されるこの工芸品は、静岡の風土と職人の技が生み出した日本の宝です。
今回は、その歴史・製法・魅力をたっぷりとご紹介します。

駿河竹千筋細工の歴史|弥生の時代から受け継がれた竹の文化

駿河竹千筋細工は、静岡県駿河地方で伝統的に行われてきた竹細工の一種です。
静岡・府中を流れる安倍川、その支流藁科川の流域は、昔から良質な若竹・淡竹を産してきました。
弥生時代の登呂遺跡からはザルやカゴが出土されており、この地では古くから竹製品が生活用具として定着していたことが伺われます。
江戸初期に徳川家康公が将軍職を退いたのちに駿府を居城としたことで学者・商人が移り住み、駿河の町はどんどん賑わっていきました。
駿河の竹細工が世に知れ渡ったのは、家康公が愛した鷹狩りのために鷹匠同心が餌かごを作ったことや、江戸城での花見に使われた籠枕が、参勤交代の武士たちに人気を得ていたことも伝えられています。
今日のような繊細優美な姿になったのは、天保11年(1840年)、岡崎藩士である菅沼一我が静岡に立ち寄った際、細く割った竹を丸く削いで作る「丸ひご」の技法を伝えたのが始まりです。
一我は歌道・華道・茶道・機織などの諸芸に秀でており、竹細工の技術も、非常に芸術的で精巧なものでした。
一我が伝えた、幾千の筋が織りなす細工技術は、後に国内外で高評価を受け、「駿河竹千筋細工」と呼ばれるようになります。
明治6年(1873年)には「ウィーン国際博覧会」にて日本の特産品として出品され、好評を博しました。
それ以来、日本を代表する輸出品として、海外からの脚光を浴び、今日まで発展を続けています。
菅沼一我から現在に至るまで、駿河竹千筋細工の伝統技術は連綿と継承され、昭和51年(1976年)に、通産大臣(現経済産業大臣)から「伝統的工芸品」の認定を受けました。
平成30年(2018年)には、駿河竹千筋細工協同組合(当時:静岡竹工芸協同組合)が特許庁による「地域団体商標」を取得し、地域ブランドとなりました。

駿河竹千筋細工の特徴|丸ひごが生む「線の美しさ」

駿河竹千筋細工の最大の特徴は、「丸ひご」にあります。

他産地では平たく太い「平ひご」を用いるのに対して、静岡では丸く細い「丸ひご」を使います。
その名の由来は、畳の横幅3尺(約90cm)に並べると千本のひごが並ぶといわれる細かい筋の丸ひごにあります。
また、丸く削った竹ひごを用いるのは、籠に納める鳥や虫の羽を傷つけないようにという心遣いから生まれたものとも言われています。
駿河竹千筋細工の最大の特徴はなんといっても竹ひごの曲線美です。
他産地の竹細工は平ひごを編むことにより模様を生成していきますが、駿河竹千筋細工は1本1本ひごを組んで曲線を作っていきます。
面を作るというより、線で見せるという表現のほうが合っているかもしれません。
また、輪の部分をつなぐ「継手」という技法はこの駿河竹千筋細工でしか用いない技法で、この技法によりつなぎ目が一見わからなくなります。

使われる素材と下準備

駿河竹千筋細工には主に真竹(マダケ)・淡竹(ハチク)・孟宗竹(モウソウチク)など、発育して3〜4年経った竹を使用します。
年に一度、竹に水分が最も少なくなる冬場に伐採し、切り出した竹は一定の長さに切り揃えて節を削り取り、煮沸の準備をします。
生竹には水分・油が含まれており、切ったままでは腐ってしまうため1週間以内に油抜きを行います。
苛性ソーダの入った湯釜に竹を入れて沸騰させ、表面の汚れやヤニをきれいに落とした後、風通しのよい場所で約1か月ほど天日干しをします。

職人の手仕事|ひごを通し、組み上げる

駿河竹千筋細工の特徴は細く丸い竹ひご作りにあります。
ものさしで寸法をはかりながら鋸で竹を切り、「せん台」という道具で厚みを決め、細かい切り込みを入れる「小割り」のあと手で裂いていきます。
裂いた竹をさらに鉄板の穴に通し、荒引き・中引き・仕上げ引きというように段々と細い穴に通すことで、きれいな丸ひごに仕上げていきます。
曲げた枠の継ぎ手がわからないようにするのも腕の見せ所で、穴を開けた枠に竹ひごを通して組み立てていきます。
完成した品を手にすると、丸ひごの持つあたたかく柔らかい肌ざわりを感じることができます。

駿河竹千筋細工の魅力|暮らしに溶け込む繊細な美

花器・菓子器・手提げ・虫篭・灯り・屏風・しおりなどといった生活に根ざした品から、風鈴などの季節を楽しむ品まで豊富に揃い、そのどれもが高いインテリア性を持つため、現代的な住居にあってもよく馴染みます。
渋すぎず、華美すぎないシンプルながら部屋のアクセントとなるようなデザインが多く、駿河竹千筋細工ならではの線の美しいラインが、灯りをつけるとシルエットのように浮き出します。

そして、長く使うほどに味が増すのも竹ならではの魅力です。

使うほどに侘び・寂びのただよう、竹特有の風格ある経年変化も一つの楽しみといえます。

また、国際舞台でも高く評価されてきた歴史があります。

竹のしなる美しい曲線を十二分に活かした駿河竹千筋細工は海外の人にも人気で、天皇とともに静岡を訪れたスペイン国王夫妻にも駿河竹千筋細工が献上されたそうです。

まとめ

駿河竹千筋細工は、弥生時代から続く竹文化を土台に、江戸時代の職人の知恵と技が結晶した静岡の誇る伝統工芸です。

一人の職人がその技を駆使して竹ひごを一本一本組み、千筋にして仕上げる作品は、しっとりとした滑らかで繊細な曲線が、和風・洋風を問わず、日常生活の身近な道具やインテリアとして、落ち着いたやわらかな時間をかもし出してくれます。

手仕事ならではのぬくもりと、現代の暮らしにもなじむ洗練されたデザインを兼ね備えた駿河竹千筋細工。
ぜひ一度、その細やかな美しさをじっくりと手に取って味わってみてください。

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