
二風谷アットゥシとは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説
北海道の大地に息づくアイヌ文化をご存知でしょうか。その中でも「二風谷アットゥシ」は、樹皮から糸を紡ぎ、反物に織り上げるという独特の製法を持つ織物で、アイヌ民族の手仕事の粋が凝縮された一品です。近年はマンガ『ゴールデンカムイ』などの影響もあってアイヌ文化への関心が高まっており、この伝統工芸品を初めて知る方も増えています。今回は、二風谷アットゥシの歴史や特徴、その奥深い魅力についてご紹介します。
二風谷アットゥシとは
二風谷アットゥシ(にぶたにあっとぅし)は、北海道沙流郡平取町の二風谷地域で継承されている伝統的な樹皮織物です。
「二風谷」という地名は、アイヌ語で「ニプタイ(木の生い茂るところ)」から名付けられたといわれています。
その名のとおり、自然豊かな土地で育まれた工芸品です。
アットゥシはオヒョウの木やシナノキなどの木の樹皮から作られるため「樹皮衣」と称されます。樹の皮を布のように使うのではなく、実際には「樹皮から取り出した繊維で糸をより、その糸で織った布」であり、時間と手間と熟練の技術を要する工芸品です。
2013年3月8日、「二風谷イタ」(盆)とともに、北海道で初めて経済産業省の「伝統的工芸品」に指定されました。
さらに近年、「二風谷アットゥシ」は2024年9月・11月に特許庁の地域団体商標にも登録され、そのブランド価値がより一層高まっています。
二風谷アットゥシの歴史
江戸時代には、アイヌの人々の日用品・衣料として珍重され、本州との交易品としても流通した記録があります。
頑丈な割に水に浮くほど軽量で耐水性に優れ、粗い織り目が通気性の向上につながることから、日本の漁師や商用船(特に北前船)従事者の間で珍重されました。
アイヌ文化の枠を超えて、広く人々の暮らしに根付いていたことがわかります。
1969年には二風谷で任意団体である「アツシ織物生産組合」が設立されました。
1980年代以降は、失われつつあったアットゥシの技術を復元・継承する運動が進められ、現在は高度な技術と意匠性を兼ね備えた織物として再評価されています。
現在では二風谷民芸組合を中心に、アットゥシの技術を受け継いでいくための後継者育成や製作物の販売などがおこなわれています。
二風谷アットゥシの特徴|素材と製法
オヒョウの樹皮から始まる糸作り
アットゥシの原材料は主にオヒョウやハルニレなどニレ科の樹木、シナノキなどシナノキ科の樹木の樹皮です。これらの木々の表皮の一枚内側にある靱皮(じんぴ)をはぎとります。木の皮の採取時期は、樹木に水分の多い5月末から6月頃と決まっています。
素材となるオヒョウの樹皮は、木を伐る時期や樹齢によって繊維の質が異なるため、採取には熟練の判断が求められます。剥がした内皮を何度も水に浸して叩き、繊維として使える状態にするには数日を要します。この素材加工の手間が、アットゥシ特有のしなやかさと温かみを生むのです。
樹皮を柔らかくするため一週間程度沼の水や温泉に漬ける、あるいは灰汁などを加えて釜で数時間煮るという工程を経て、柔らかくなった皮を細かく裂いて繊維を取り出し、より合わせて糸を作ります。
天然素材ならではの優れた機能性
二風谷アットゥシは水に強く、通気性に優れ、天然繊維としては類希な強靱さと独特な風合いを持ちます。着物、半纏、帯、小物等に使用されています。
また、特に糸に撚りをかけることが特徴のひとつとされており、この工程がアットゥシ独特の風合いを生み出しています。
二風谷アットゥシの魅力|現代の暮らしへ
現在でも、丈夫で素朴で自然の風合いを感じさせるアットゥシは、衣類だけでなく、財布や小物入れなど、さまざまなものに加工されて北海道のお土産として愛されている一方、アイヌ文化という枠を超えて、ナチュラルで「粋」を感じさせる個性的な素材として、和服の「帯」などにもよく用いられています。
現代では、アットゥシの反物をそのまま着物や帯、バッグ、コースター、小物として活かすなど、伝統の技を日常生活に取り入れる動きが広がっています。
大ヒット作品『ゴールデンカムイ』の影響などで、アイヌ文化への関心が高まっている
こともあり、二風谷アットゥシに初めて触れる若い世代も増えてきました。古来の手仕事が、現代のファッションやライフスタイルと新たな形で出会いつつあります。
職人の技術は、母から娘へ、またコミュニティ内で受け継がれ、地域の文化遺産として大切に守られています。
自然から素材を得て、手間と時間をかけて一枚の布を仕上げるその過程には、アイヌの人々の自然観と美意識が丁寧に宿っています。
まとめ
二風谷アットゥシは、北海道・平取町の沙流川流域で受け継がれてきたアイヌ民族の樹皮織物です。オヒョウなどの樹皮から糸を紡ぎ、機で丁寧に織り上げるその工程は、まさに自然と人の対話といえるものです。2013年に北海道初の伝統的工芸品に指定され、2024年には地域団体商標も取得するなど、その価値は今なお高まり続けています。手仕事の温もりと天然素材ならではの機能美を兼ね備えた二風谷アットゥシ。日々の暮らしにアイヌの知恵と美を取り入れてみてはいかがでしょうか。

