
秀衡塗 朱と黒と金が映える、平泉ゆかりの岩手の漆器
朱と黒の深い色合いの上に、金箔の雲がふわりと浮かぶ。秀衡塗は、そんな華やかさと落ち着きをあわせ持つ岩手の漆器です。平安時代の平泉に思いをはせながら手に取ると、毎日の食卓が少し特別な時間に変わります。
秀衡塗とは

秀衡塗(ひでひらぬり)は、岩手県で作られる漆器です。名前の由来は、平安時代の末期に平泉で栄えた奥州藤原氏の第3代当主、藤原秀衡です。秀衡が京から職人を招き、この地方の特産だった良質な漆と金をふんだんに使って器を作らせたのが始まりとされています。
名前の元になったのは、中尊寺とその周辺に昔から伝わる「秀衡椀(ひでひらわん)」です。その後も土地の職人たちによって作り継がれ、1985年(昭和60年)5月に国の伝統的工芸品に指定されました。
特徴と魅力

いちばんの見どころは、金箔で描かれる文様です。代表的なのは「源氏雲」と呼ばれる雲の形と、菱形をいくつも組み合わせた「有職菱文様(ゆうそくひしもんよう)」です。雲の間には、朱で草花や鶴などが描かれます。
絵柄には松、竹、梅、菊、椿、牡丹、鶴などがあります。長寿や子孫の繁栄を願う気持ちが込められていて、お祝いの席にも似合います。
丈夫さを支えているのは、「本堅地(ほんかたじ)」という下地です。作り方は次のとおりです。
- 木地を生漆で固めます。
- 弱い部分には布を着せて、さらに漆で固めます。
- 下塗り、中塗り、上塗りと重ねていきます。
- 雲形の文様を描き、乾く直前に金箔を置きます。
- 最後に雲の外側へ上絵を添えます。
手間のかかる工程を経て、光沢を抑えた落ち着いた艶の仕上がりになります。素材にはトチやケヤキなどの木が使われます。
産地と作り手の話
秀衡塗は、平泉町や盛岡市より南の市町を中心に作られています。伝統的工芸品としての秀衡塗と浄法寺塗を管理運営しているのが、一関市大東町に事務所を置く岩手県漆器協同組合です。
岩手の漆器には、秀衡塗のほかに、無地で艶を抑えた浄法寺塗もあります。同じ漆でも、黒と朱と金で華やかに仕上げる秀衡塗とは、表情がまったく違います。
現在は、汁椀やお盆のほか、菓子器やグラスなども作られています。昔ながらの技を守りながら、今の暮らしに合う器づくりにも挑戦が続いています。
暮らしや贈り物での楽しみ方
漆器は扱いが難しそうに思えますが、毎日使うことでなじんでいく器です。ふっくらとした形は手に収まりやすく、お味噌汁を入れるだけで食卓が引き締まります。
贈り物には、夫婦で揃えるお椀や、お祝いの席の重箱がよく合います。長寿を願う絵柄が、言葉に出さない気持ちを伝えてくれます。
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まとめ
900年ほど前の平泉の黄金文化を、いまも手のひらで感じられる器が秀衡塗です。職人が一つずつ手で仕上げる漆器は、使うほどに艶が深まっていきます。
平泉を訪ねる前にその背景を知っておくと、旅の景色が違って見えるはずです。まずは一客のお椀から、秀衡塗のある暮らしを始めてみませんか。

