
奥会津・からむし織 福島の山里が紡ぐ、涼やかな一本の糸
福島県の奥会津、山に囲まれた昭和村には「からむし」という植物から糸を紡ぎ、布を織り続けてきた暮らしがあります。原料づくりから糸にするまでの手間を知ると、一枚の布がまったく違って見えてくる、そんな奥会津の織物をご紹介します。
からむし織とは

からむしは正式には苧麻と呼ばれる多年草で、茎の皮の内側にある繊維を取り出して糸にする植物です。昭和村はこの からむし の栽培が盛んで、村の人々は「からむしの里」とも呼ばれるこの土地で、畑仕事から糸づくり、機織りまでを一貫して担ってきました。夏に育てたからむしを刈り取り、皮をはいで繊維だけを取り出す「からむし引き」という作業は、今も手作業で行われています。
特徴と魅力

からむしの糸でできた布は、驚くほど軽くて涼やかなのが特徴です。繊維そのものに独特のハリと光沢があり、肌にまとわりつかず風を通すので、蒸し暑い日本の夏にぴったりの着物地や帯地として重宝されてきました。細くしなやかなのに丈夫で、使い込むほどに風合いが増していくのも魅力のひとつです。この強さとしなやかさは、繊維を一本一本手で裂き、よりをかけてつないでいく「糸績み」という気の長い作業があってこそ生まれるものです。
産地・作り手の話
昭和村で栽培されるからむしは、実は村の中だけでなく、他の産地の織物を支える原料としても長く用いられてきました。糸を績む工程は特に根気のいる手仕事で、冬の夜なべ仕事として受け継がれてきた歴史があります。織物の背景にはこうした原料づくりの土地の存在があり、糸や布をたどっていくと、思いがけない地域同士のつながりが見えてくることがあります。織物から生まれた食文化という切り口では、新潟のへぎそばの物語もあわせてご覧ください。
2026.06.23
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近年は村外から人を招き、からむしの栽培から糸づくり、織りまでを一年ほどかけてじっくり学んでもらう取り組みも続けられています。畑に出て苗を植えるところから始め、夏に刈り取り、冬に糸を績み、ようやく機にかけるという一年がかりの流れを体験することで、この織物がどれほど手間と時間の積み重ねでできているかを実感できるそうです。
暮らしや贈り物での楽しみ方
からむし織の布は、帯締めや小物、名刺入れなど、普段づかいできるかたちに仕立てられることも増えています。すっと涼しい肌ざわりは夏の贈り物にも向いていますし、丈夫で長く使えるという点では、大切な人への節目の贈り物にもふさわしい表情を持っています。織り目の細かさや糸の光沢を手に取って確かめてみると、工程の多さが自然と伝わってくるはずです。
まとめ
からむし織は、派手な華やかさよりも、一本の糸にかける時間と手間で魅力を語る織物です。栽培する人、糸を績む人、織る人がそれぞれの持ち場で関わり続けているからこそ、この涼やかな布は今日まで残ってきました。奥会津の山里に息づくこの手仕事を、ぜひ今のうちに知っていただけたらと思います。

