
静岡おでんとは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説
「おでん」といえば、透き通った出汁に大根や卵が泳ぐ、あの優しい風景を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
ところが静岡市に足を踏み入れると、見慣れないおでんに出合います。
すべての具材が竹串に刺さり、鍋のなかは真っ黒なだし汁。
仕上げに青のりと「だし粉」をたっぷりとふりかける――これが、静岡県のソウルフード「静岡おでん(しぞーかおでん)」です。
見た目の驚きとは裏腹に、一口食べると思いのほかマイルドで、すっかり虜になる人が続出しています。
この記事では、静岡おでんの由来・歴史から独自の特徴、食べ方まで詳しくご紹介します。
静岡おでんの由来と歴史
おでんのルーツをたどると
そもそも「おでん」のルーツは室町時代にさかのぼります。
拍子木型に切った豆腐を串に刺し、味噌を塗って焼いた「味噌田楽」が起源とされており、五穀豊穣を祈る田植えの儀式における「田楽舞」の舞い手が一本足の竹馬に乗って舞う姿が、串に刺した豆腐に似ていることから「田楽」の名が生まれました。
その後、こんにゃくや里芋が田楽に使われるようになり、これを煮込んだ「煮込み田楽」が江戸時代末期に登場。
関西に伝わると、従来の田楽と区別するために「関東煮(かんとうだき)」と呼ばれるようになりました。
静岡おでん誕生|大正時代から戦後へ
静岡おでんのはじまりは大正時代ですが、第二次大戦後には、廃棄処分されていた牛すじや豚モツをおでんの具材としたところ、人気が高まったといいます。
食糧難の時代に「捨てるものを美味しくいただく」知恵が、静岡おでん独自の旨みを生み出したのです。
焼津で黒はんぺんが商業的に生産されるようになったのが大正8年の「カネ久商店」とされており、練り物の産業化と静岡おでんの発展は深い関係にあるとみられています。
戦後、市役所前の青葉公園には約200台ものおでん屋台が軒を連ね、仕事帰りにおでん屋台で一杯を楽しむ姿が見られました。
その後、都市開発などによりおでん屋台は姿を消し、一部のお店は青葉おでん街などに移転し、今も市民に親しまれています。
2007年には「静岡おでんの会」という団体が「B-1グランプリ」に静岡おでんを出展し、3位を獲得。
全国的な知名度を高めるきっかけのひとつとなりました。
静岡おでんの4つの特徴
1|すべての具材が串刺し
静岡おでんに串を刺すようになった理由は、子どもたちのおやつとして駄菓子屋で売られていたことに由来するとされています。
駄菓子屋のおばちゃんが、お勘定をわかりやすくするためにおでんに串を刺したのが始まりとされており、価格の高いものは柄の部分に赤インクを付けて区別していました。
2|真っ黒なだし汁
静岡市のおでんは、牛すじ、あるいは鶏ガラや豚もつなど肉系の出汁に濃口醤油を使った黒い煮汁が特徴です。
おでん店などでは長年継ぎ足し、底が全く見えないほど真っ黒な汁のところも多いといいます。
見た目のインパクトは強いものの、醤油ベースの真っ黒なだし汁は、見た目ほど濃くなく、駄菓子屋でおやつ代わりとして食べられていたほどマイルドな味わいです。
3|黒はんぺんが主役
静岡人にダントツの一番人気のおでん種は「はんぺん」。
しかし一般的な白いはんぺんではなく、「黒はんぺん」が登場します。
黒はんぺんはサバとイワシを使った練り物で、つみれに近いもの。
骨も皮も取り除かずに使うため色が黒く、カルシウムが豊富です。
当時から駿河湾で水揚げされる魚介類を利用できたため、黒はんぺんなど魚のすり身を使った練り製品がおでんの具に使われるようになりました。
日持ちしないため、その消費の9割が静岡県内にとどまっています。
4|だし粉+青のりをかけて食べる
静岡おでんには、青のりやだし粉をかけて食べる習慣があります。
だし粉とは、サバやイワシなどの削り節のこと。
お好みで味噌やからしを添えてもよく、シンプルながらも重なる旨みが楽しめるのが静岡おでんの食べ方の魅力です。
駄菓子屋系と居酒屋系|二つの顔
静岡おでんを大きく分けると「居酒屋系」と「駄菓子屋系」に分かれ、大人から子どもまで市民に広く親しまれています。
子どもの頃は学校の帰りに近くの駄菓子屋さんに寄っておでんを頬張った思い出を持つ方も多いのではないでしょうか。
静岡市葵区にはおでん店が軒を連ねる「青葉おでん街」と「青葉横丁」という二つの飲食店街があり、各店舗で味や具材を工夫しています。
また、「静岡おでん」は季節を問わず食されており、夏場のプールなどでも販売され、店によっては冬場より売り上げが多いところもあるといいます。
寒い季節だけのものではなく、一年中愛されているのも、生活に深く根ざした郷土料理ならではの姿といえるでしょう。
まとめ
静岡おでんは、大正時代に生まれ、戦後の食の知恵と駿河湾の豊かな海の幸を取り込みながら独自の進化を遂げた、静岡市のソウルフードです。
真っ黒なだし汁・全串刺し・黒はんぺん・だし粉と青のり――この四つの特徴が揃って、はじめて「しぞーかおでん」になります。
県外の方は見た目に驚くかもしれませんが、口にした瞬間のマイルドなコクに思わず笑顔になるはずです。
静岡を訪れた際には、ぜひ青葉おでん街の暖簾をくぐって、地元の人が長年愛してきた味を体験してみてください。

